万物にキリストが宿っています

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　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ひかりの証人　（上）
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ヨハネ１章１－９節


　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　（序）
　　「人類の歴史の中で最も偉大な日は、人類が初めて月面に立った日ではなく、神の御子が世に生まれた日である。」アメリカの月面探査のアポロ計画で１２人の宇宙飛行士たちが月面に立ちましたが、その１人、ジェームズ・アーウインさんはこの言葉を残しました。宇宙飛行士から後に牧師になった人が何人かいますが、アーウインさんも牧師になりました。

　　その最も偉大な日、御子の誕生を迎えるアドベント第１週が始まり、今年も大山教会オリジナルのアドベントのランプが１つ灯りました。今日から４週間、１つずつ増えますが、私たちにとって御子の誕生はどういう意味をもつかを考えて過したいと思います。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　（１）
　　先ず、「初めに言（ことば）があった。言は神と共にあった。言は神であった。この言は、初めに神と共にあった」とありました。

　　ここには「言（ことば）」という語が何度も出て来ます。元のギリシャ語はロゴスですが、ロゴスは言の他、命、まこと、真理、更に理性や論理、宇宙の理法を意味する言葉です。

　　世界は神でなく、偶然や何か偶発的なことによって生まれたのでないかという考えが現代人を覆っています。しかし、「どっち道、自分も偶然に造られた」という考えは、無責任や無気力、時には刹那主義が人々の心を蝕（むしば）むことになります。また、偶然生まれたのだから、「自分は居ても居なくてもよかった存在だ」といった虚無感を生んだり、更には腹立たしさが生まれる温床にもなります。そこからは弱肉強食の経済観や享楽また権力主義は生まれても、本当の喜びや感謝、また温かい愛の生き方は生まれ難（にく）いでしょう。

　　しかしヨハネ福音書は冒頭で、「初めに言があった」と、天地の初めに理性が、まことが、真理が、ロゴスがあったと宣言するのです。

　　初めとは、創世記の最初に「初めに神は天地を創造された」と言われる初めです。天地創造の初めであり世界の根底です。万物の根底に神がおられ、神が世界を造られたというのです。

　　そして、「言は神と共にあった。言は神であった。この言は、初めに神と共にあった」と、ロゴスは命のない単なる理性や世界の理法でなく、愛豊かな神ご自身であり、ロゴスは神と共にあったと、２度に渡って繰り返し語るのです。即ち、世界は偶然によって生まれたのでなく、神の愛の意志の下で生まれたと語ります。この１章１８節までを読めば、このロゴスは御子キリストを指しています。

　　そして更に、「万物は言によって成った。成ったもので、言によらずに成ったものは何一つなかった」と語って、ロゴスであるキリストは、世界が創造される以前から神と共に存在しただけでなく、ロゴス・キリストによって万物は創造され、被造物の内で何一つロゴス・キリストによって造られなかったものはないと語るのです。

　　一体何を言いたいのでしょう。それは、宇宙に存在するものは、キリストの恵みなしに存在していないという事です。万物の中にキリストの命が宿り、キリストの愛が宿っているという事です。という事は、人は決して命を軽んじてはならない。他人の命も自分の命も決して軽んじてはならないという事です。万物の中にキリストの意義が秘められており、キリストが印（しる）し付けられているという事でもあります。本人は自覚していなくても、このお方によって存在しているのです。ロゴスを神の愛と訳せば、万物は神の愛を受けて造られ、神の愛は万物に届けられているという事です。繰り返しますが、私たちは万物をおろそかにしてはならず、自分を愛するように、自分の隣人を愛さなければならないという事です。

　　ヨハネ１章１節から１８節までは、この福音書の序文です。序文ですが手紙文のような挨拶やルカ福音書のような献呈の辞はありません。これは２１章からなるヨハネ福音書全体の序曲と言っていいでしょう。序曲を聞けば全体の核心が、この福音書が語らんとする最も深い真理、奥義が比喩的な言葉で歌われているのです。

　　それにしても１章はよく分からないと思う方は、この言・ロゴスを、キリストと読み替えて朗読してみて下さい。すると少し分かった気がするかも知れません。こういう風にです。「初めにキリストがあった。キリストは神と共にあった。キリストは神であった。このキリストは、初めに神と共にあった。万物はキリストによって成った。成ったもので、キリストによらずに成ったものは何一つなかった。」

　　いかがでしょう、 幾分分かる気がしますか。


　　　　　　　　　　　（つづく）

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　２０１５年１１月２９日



　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　板橋大山教会　上垣　勝



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