この最後の者にも


                 思わず、うまいって思いました。第1小学校の作品展から。
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                                               ぶどう園の労働者の譬え (上)
                                               マタイ20章1-16節
                                                於 王子教会


                               (序)
  最近、労働環境が悪くなっている方や、そういう家族をお持ちの方がここにもおられるかも知れません。非正規で働く人が4割に達し、今の社会と政治に不信感がたまって来ています。

  昔は人足を集める寄せ場隅田川の大川端にあり、今は山谷と思っていたら、山谷は寄せ場も少し残りますが生活苦にあえぐ老人福祉の町になり、派遣会社が携帯電話で方々から人足を集めています。しかし少し前までは、朝4時半頃から6時頃まで手配師が日雇い労務者を集めて、遅く行くと仕事がないのでその日はアブレです。必要な人数が集まると土木や荷揚げ作業現場に自動車で連れて行かれました。手配師は若く頑丈で元気な人間を雇おうとしますが、働く方はなるべくきつくない日当の良い仕事を選ぼうとします。手配師は倍以上のお金をピンはねしたわけで、不条理を味合わされるのが寄せ場でした。ところで、今の派遣会社はどれほどピン撥ねするのでしょうか。

                              (1)
  今日の聖書も早朝から人夫を雇う話です。「ある家の主人が、ぶどう園で働く労働者を雇うために、夜明けに広場に出かけて行った。」

  広場は寄せ場ではありません。街の中心にあるアゴラと呼ばれる路上市場で、人がたむろする所です。ヨーロッパに行かれた方は、町にマーケット・プレイスというのがあって露天商が毎日店を出しているのをご存知でしょう。アゴラには人が集まる。そこに労務者を見つけに行ったわけです。

  先ず夜明け頃、朝6時頃に、1日1デナリオン(約1万円~1万5千円)の約束をして農園に送った。その後、9時、12時、3時。仕事は夕方6時にひけますが5時頃にも、「あなたたちもぶどう園に行きなさい」と農園に送ったのです。日当を払う段になり、最後に来た人たちから始め、1時間しか働かなかった人たちに1デナリオンを支払った。そこで、夜明けから12時間働いた者たちは自分たちはもっと沢山もらえると期待した。だが彼らにも1デナリオンしか支払われなかったので強く不平を言ったというのです。「最後に来たこの連中は1時間しか働いていません。丸1日、猛暑の中を辛抱して働いた私たちと連中が同じとは、酷いじゃあありませんか。不平等にも程があります。」かなりの剣幕です。

  ところが主人は落ち着いて、その1人に「友よ」と呼び掛け、私は不当なことをしていない。君たちと1デナリオンの約束だ。私はこの最後の者にも同じように支払ってやりたいだけだと言ったのです。

  皆さんは、この主人のやり方をどう思われますか。身勝手に思うでしょうか。早朝から12時間働いた者も、1時間しか働かなかった者も、同一賃金は酷いですか。一種のブラック企業でしょうか。公平でない。こんな職場があれば労働者は騒ぎますか。

  私は20才頃に初めてこれを読んだ時、酷い人だ、「自分のものを自分のしたいようにしては、いけないのか」なんて、身勝手だ、こすい、独裁者だと思いました。主人の気ままが許せなかったと思います。それと共に、社会で中々仕事に就けず、後回しにされてばかりで採用されない障碍を持つ人々を知っていましたから、最後の人々も一人前に扱われたこの話は、胸にジーンと迫って来るものがありました。

    (つづく)

                                             15年11月15日

 
                                             板橋大山教会 上垣 勝



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