110万人が死んだ町


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                                                    神殿崩壊の予告 (中)
                                                    ルカ21章5-6節



                              (2)
  さて、感嘆の声を上げていると、イエス様は言われたのです。「あなたがたはこれらの物に見とれているが、一つの石も崩されずに他の石の上に残ることのない日が来る。」

  少し分かりづらい訳ですが、要するに、ここに積み上げられている石が、一つも崩されず元のまま残ることはないだろう、すべてが破壊し尽されるというのです。

  これを聞いて7節で弟子たちは、「先生、では、そのことはいつ起こるのですか。また、そのことが起こるときには、どんな徴があるのですか」 と聞き返したのです。彼らは、本当だろうか、まさかそんな事がある筈がないと思ったのでしょう。

  50年の昔ですが、初めて丸の内のビル群を見た時、その壮観に圧倒されました。川崎の鉄鋼会社に入社し、巨大な設備と生産ラインに圧倒されていました。最近はあちこちにオシャレさが加わりましたが、丸の内ではまた違った意味で圧倒されたのです。そこには日本経済の中枢、エリートたちと富の集中があると思いました。そのビル群の威容さを見て聞かれた場合、誰がそのビル群が崩壊すると答えたでしょう。決してそれはないと言ったでしょう。

  しかし、ローマ帝国が崩壊するとは誰も思いませんでした。唐の国が滅びるとは誰が思ったでしょう。アメリカの経済的地盤沈下が言われますが、それが崩壊するとは誰も実際には思っていないでしょう。私の歯はいたって丈夫で、まさか歯が抜けこれほど歯科医の世話になるとは思いませんでした。私は、やがて自分が死ぬとは今も思っていません。

  イエスが神殿崩壊を予告された時、弟子たちも、まさかと思ったのです。神殿の立派さ奉納物の豪華さに目を丸くしていた訳で、イエスの言葉に、「まさかそんな事がある筈がない」という思いが、ではいつ?どんな前兆で?と口を突いて出たのです。

  では、神殿崩壊の予告は真っ赤なウソだったのでしょうか。実際は、イエスの死後約40年、西暦70年に起こった第1次ユダヤ戦争で、後に皇帝になるティトスの率いるローマ軍によって徹底的に破壊されてしまいました。

  エルサレムで110万人が死んだのです。徹底抗戦したために餓死者が町を埋め尽くし、最後はマサダの要塞に立てこもり玉砕します。

  私の考えは少しヘンかも知れませんが、原爆が投下されなければ、あのとき1億玉砕は実際に起こったと思っています。原爆投下がなくても日本は降伏していたという説がありますが、それは甘い。それは「天皇陛下を現人神と頂く」当時を値引きした解釈です。私はそうは思いません。当時の国家による思想統制下では、通常爆弾を食らうぐらいでは1億総玉砕の道しかなかった筈です。米ソ対立が主たる原因でなく、日本の軍国主義こそ広島、長崎への原爆投下に道を開いたのです。

  ユダヤ軍はローマ軍の前で玉砕しますが、その60年後には再びバル・コクバの乱がおこります。そして2度と修復不可能なほど徹底的、絶望的に壊滅させられました。現在残っている嘆きの壁は、この徹底的な壊滅の僅かな名残で、永遠に絶望的な廃墟になっています。

  ところで、ルカ福音書は西暦70年代に書かれましたから、著者は神殿の徹底的な破壊、即ちイエスの予告の実現を目の辺りにして書いています。イエスの予告は荒唐無稽な、ありもしない宗教的夢想家の妄想ではないことを確信して記したのです。

  7節以下を読み、20節には、「エルサレムが軍隊に囲まれるのを見たら、その滅亡が近づいたことを悟りなさい…」と、刻々と迫る滅亡の様子がリアルに記されています。これはイエスの予告もさることながら、著者が目にした滅亡の有様でしょう。

  要するにイエスの予告はまさに的中し、神殿も都も滅亡したのです。イエスはそこまで、時代の行く末を見抜いておられたのです。


        (つづく)

                                             2015年10月11日



 
                                             板橋大山教会 上垣 勝



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