人生の一回性はまたとない宝です

　　　　　白昼堂々、クリニャンクールの賭博師＋サクラの女性。商売道具は３枚の板と段ボールだけ。
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　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　真実な美しい献げもの　（下）
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ルカ２１章１－４節


　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　（３）
　　このやもめは貧しい人ですが、非常に高いもの、お金を越えるものを見上げています。お金を越えるものがあると言う事が大事なのです。お金をどう越えるか、どれだけ越えるかを上手に説明できなくても、お金が最高でないということを、本当によく分かっていることが大事なのです。最高のものはもっと別のものだと言う事を知っている時、実際の生き方が違ってくるからです。それが私たちの人生を神へと切り拓くのです。自分の枠が打ち破られて行くのです。

　　このフィールドワークは弟子たちの今後の在り方、生き方をも指し示すものになったでしょう。

　　彼女は貧しいですが、非常に高いものを見上げています。その志の高さ、清さが大事です。目に見えないこの価値観は、必ずこの貧しい家族を向上させて行くでしょう。子どもも大人も、金持ちになること、金、金、金の生き方でなく、金以上に大事なものがあるのを知る時、広々した視野の広い地点へと導かれます。

　　キリストはご自分の存在を神に献げられました。彼が持っておられる無尽蔵の富を人々に分かつためです。恵みを惜しみなく与えるためです。

　　やもめは、その存在全てを献げるというイエスの献身を指し示しています。彼女はキリストではありません。私たち人間は肉を持つ限り、完全に献げ切ることは不可能です。しかしその限界の中で、彼女の真実を持って、力一杯神に捧げることによって、神の栄光を指し示したのです。

　　実際の献金について触れますと、献金は神への感謝のしるしであり、神を賛美するしるしです。先程申しましたように、献金は真実を持ってすべきで、痛みなしの献金はもしかしたら神を侮る、献金になりかねません。

　　私の知人は、前日からお札を用意して礼拝に出られます。金曜日には銭湯に行って身を清めて礼拝に出席する準備をされます。確かに神の前に出るとはそういう折り目正しいことです。それは神へのまごころ、真実さから出ることであって、沢山の財産を持つが普通の人が献げるものを慎ましく献げていればいいというのとは異なります。誰もが彼なりの痛みを持ってお捧げする。その真実さ、神を神とする、心の美しさを主はご覧になるのです。

　　聖書は金持ちになることを禁じません。堅実な働きをすれば高所得を得ることもあるでしょう。ただそのお金をどう使うのか、金の使い道は大事です。できれば隣人が喜び、貧しい低い人たちが喜ぶような使い方が健全です。

　　反対に、人が羨やむ使い方、更には人に憎まれる金の使い方をすべきではありません。例えば社長が豪勢な生活をし、従業員は冷や飯を食っているというような生き方は不純です。貧しい人が、自分たちのことが分かられていると思うような生活こそ、まっとうな生活であり、長続きする生活でしょう。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　（４）
　　最後に、人間は皆、ただ一回の人生を生きています。この金持ちたちも貧しいやもめも皆、人生の一回性という限界の中で生きています。人生の一回性は後に戻れない一回性です。皆、誰もが老いに向かって不可逆的に進行して行きます。青年は決して青年に留まれず、必ずお爺ちゃん、お婆ちゃんになり、死は必然です。また、私は他の人と取り換えできません。即ち、人生は一回性であり、誕生と死の限られた中で生き、誰とも代替（だいたい）できず、自分に貸し与えられた時間内しか生き得ません。

　　だからこそ、人生の一回性を喜びを持って生き、責任を持って生き、感謝を持って生き、神への応答、神の召命に自覚的に応答が出来るまたとないチャンスとして、隣人と共に、隣人を励まし、肩を組んで、真摯に希望を持って生きるなら何と素晴らしいことでしょう。人生の一回性こそまたとない宝です。

　　このやもめは1日の食事を抜き、その痛みを味わいながら自分は神の被造物性を味わいつつ生きようとしたのかも知れません。それはまた非常に尊いことだと思います。

　　少し前に、畑に隠されていた宝を見つけた人のことを学びました。私たちが立っている足元にも莫大な宝が隠されています。その宝はただ一回限りで、誰も交代できない人生の畑、その土の中に隠されているのです。それが分かると、大喜びで持ち物を全て売り払ってでもそれを買うでしょう。

　　このやもめは貧しいながら、非常に高いものを見上げています。その志の高さ、清さ、美しさが大事です。イエスは彼女のこの美しい真実な献げものをよしとされたのです。



　　　　　　　　　（完）

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　２０１５年１０月４日


　
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　板橋大山教会　上垣　勝



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