イエスのフィールドワーク


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                                                  真実な美しい献げもの (上)
                                                  ルカ21章1-4節


                               (1)
  イエス様は弟子たちとエルサレム神殿の境内にいて、次々仕掛けられる論争に答えておられました。そして一息ついた時でしょう。「イエスは目を上げて、金持ちたちが賽銭箱に献金を入れるのを見ておられた」のです。

  当時、境内には13か所に大きな賽銭箱があったそうです。金持ちたちが入れるのを見て、言わば人間ウオッチングをしておられたのでしょうか。だがそれは、単なる人間ウオッチングでなく、12弟子たちに現場での具体的な教育をするためで、今風に言えば2千年前のフィールドワークとも言えます。イエス様は抽象的な言葉で何かを教えるよりも、それもされましたが、具体的なものの前であるいは具体的なものを譬えにして教育することが多かった方です。

  イエスは彼らの献金をご覧になって、どういう態度で献金するのか、献金額でなく、心の中を見られたのでしょう。

  すると、恰幅(かっぷく)のいい金持ちたちが立派な服装で次々と現われて、今の日本なら野口英世でなく福沢諭吉の新札を何枚も入れて、分かりますよね、うやうやしく日本なら柏手を打ち、一礼して去って行くのをご覧になったのです。

  見ていると、そこに貧しいやもめが、仕事帰りでしょうか、くたびれた身体でやって来て、レプトン銅貨2枚を献げるのがイエスの目に留まったのです。ある英訳聖書は、「貧しさで打ちのめされているやもめ」と訳しています。彼女はそんな婦人でしたが、銅貨2枚を入れると、何か唇を動かしながら祈って一礼して去って行ったのです。

  そこで弟子たちに、「確かに言っておくが、この貧しいやもめは、だれよりもたくさん入れた。あの金持ちたちは皆、有り余る中から献金したが、この人は、乏しい中から持っている生活費を全部入れたからである」と言われたのです。

  彼女はレプトン貨幣2枚を入れました。1レプトンは128分の1デナリオンと言います。今の日本円に換算すれば100円程です。2枚だと200円です。それをイエスは、「乏しい中から持っている生活費を全部入れた」と言われたのです。彼女は金入れを逆さにして、中身をはたいて全部入れたから分かったのでしょう。

  生活費全部とあるのは、この日の稼ぎ全部のことだと思います。200円程の金額を一日の生活費全部というのは怪しいと思う方があるでしょうか。聖書は誇張し過ぎていないかという事です。

  日本人の感覚だとそうでしょうが、2013年現在、世界に1日120円以下で生活する人が12億人。250円以下で生活する人は30億人もいるのです。これが世界の実情であり、その素顔です。ですから、200円程度の献金が生活費全部だというのはおかしい、聖書は誇張し過ぎだという見方こそ、むしろ世の現実に合わない見方かも知れません。

  そこから考えると、日本人はもの凄く富を持っていると言えます。1日千円以上のものを食っているのですから。一食2千円以上のものを食べる時もある。恥ずかしいことに、2万円のクリスマス・ディナーを食べたと吹聴する人たちさえあります。実感からすれば、これでも豊かとは言えませんが、欲望は切りがなく吊り上って行きます。いずれにせよ、私の狭い知識では、パリやロンドンに比べても東京は富で溢れています。これは、世界の中の日本人がよく考えなければならない事実です。

         (つづく)
                                             2015年10月4日


 
                                             板橋大山教会 上垣 勝



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