キリスト教の喜びはイースターの喜び
凱旋門からシャンゼリゼ大通りを臨む
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悲しみが喜びに変わる （２）
ヨハネ１６章１９－２２節
（１）
しかもイエスは、宣教の初め頃から、「花婿が取り去られる時が来る」と、謎めいた言葉を語って、その時には祝いの時が終わると予告しておられました。花婿とはイエスご自身ですが、イエスはご自身の死を予告されました。そして、亡くなる直前には、「暫らくすれば、あなた方はもはや私を見ることはなくなる」と十字架の死を語られました。それが今日の個所です。イエスまた、ご自分の死が弟子たちにどんなに辛い時になるかを熟知しておられました。だからイエスは、「まことに、まことに、汝らに告ぐ。あなた方は泣き、悲嘆にくれる」と語られたのです。
新共同訳聖書では、「はっきり言っておく」と薄っぺらな言葉に訳されていますが、元は、アメーン、アメーン、レゴー、フュミン、「まことに、まことに、汝らに告ぐ」と重く荘重な語り口で、重要な事柄を語る時にだけ使われる言葉で語られたのです。
２０節の「あなた方は泣き、悲嘆に暮れる。」これは十字架の死を指していますが、その悲しみの後に、これを遥かに超える大きな歓喜が来ます。悲しみは喜びに変わるのです。「少しすれば、あなた方は私を見なくなる。だがまた少しすれば、あなた方は私を見る。」イエスは磔にされ、去って行かれます。だが彼は死に打ち勝ち、復活し、戻って来られる。そして弟子たちは復活のキリストに出会うのです。最初にマグダラのマリア、次にペトロ、次にヨハネ、そして多くの弟子たちが…出会います。
キリスト教の喜びはイースターの喜びです。この喜びは、苦難や死によっても滅ぼされません。行き詰まっても倒されない。神の不在、不在に見えることがあっても無くならない。「あなた方は悲しむが、その悲しみは喜びに変わる」のです。
キリスト者の喜びはイースターの復活の喜びです。それは悲しみとは正反対です。キリスト者の喜びは私たちの痛みや試練や悲しみの只中にも現実に存在するのです。この喜びは私たちを内側から変え、誰も決して取り去ることはできません。
「あなた方の悲しみは喜びに変わる」と言われました。痛みも悲しみも喜びと無縁です。だが、それらはキリストの御手の中で、喜びに変えられるのです。カナの結婚式のブドウ酒のように、イエスの御手の中で上等なものに変えられるのです。時間と共に自然に変わるわけでなく、キリストの復活の喜びが私たちに自覚的に受け留められる時、それが信仰、信じるということですが、自覚的に受け留められる時、キリストの喜びが心の中に希望の火となって点火されるのです。希望が生まれるのです。この喜びは、決して後戻りしない喜びなのです。
むろん、私たちの現実は、悲しみと喜びが同時に交錯しています。イエス様を信じたら、その後は喜びだけというわけではありません。それは言い過ぎです。喜びだけだと言い張れば嘘です。だが、悲しみだけでもありません。
比喩的に言いますと、イエスを信じることは、言わば、朝靄（もや）のかかる高原の朝に似ています。高原では、薄い朝靄が辺りに立ち込めて神秘な明るさを醸し出します。まだ太陽は見えませんし辺りの木立や人の姿も靄に包まれて良く見えませんが、既に朝日が靄の向こうで空高くキラキラ射しているのです。
やがて気温が上がり朝靄がいっきに消滅すると、一面の青空と明るい爽快な陽の光が高原を満たすでしょう。その爽快な光は、さあ、今日も元気に取り組もうと私たちを励まし力つけるのです。
イエス様を信じ、イースターの復活の喜びが私たちに届く時には、痛みや悲しみや苦難の只中でも、心の平和と喜びが訪れるのです。
聖書には「喜ぶ者と共に喜び、泣く者と共に泣きなさい」とありますが、社会には泣く者を更に悲します人や、泣く者に無関心な人、泣く人を尻目に勝ち誇る人もいます。しかしイースターの喜びは、私たちの悲しみを大きく包み、慰めて下さる偉大な大きさを持っています。キリストの御腕は世界を、全人類を包みます。それは、絶望の顔に笑みを回復させる愛の御腕です。
（つづく）
２０１５年９月２０日
板橋大山教会 上垣 勝
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