物惜しみせず喜んで与える人たち


              9月16日国会前に集った人たち約2万人。若い人たちが多くいました。
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                                               何に望みを置いていますか (中)
                                               1ペトロ6章17-21節


                              (2)
  今日の聖書は、そういうものに望みを置くのでなく、「わたしたちにすべてのものを豊かに与えて楽しませてくださる神に望みを置くように」と語り、更に、「 善を行い、良い行いに富み、物惜しみをせず、喜んで分け与えるように。 真の命を得るために、未来に備えて自分のために堅固な基礎を築くようにと」と勧めています。

  「すべてのものを豊かに与えて楽しませてくださる神」とありますが、神は楽しみも豊かにお与えくださる方です。禁欲主義は当時、ストア哲学の人たちを中心に一般にも広まっていましたが、ここで述べているのは、イエスの教えは禁欲主義とは違うということです。

  禁酒禁煙、厳格であって決して羽目を外さない。厳しい修行僧のように、陰鬱で苦虫を噛み潰したような謹厳な顔をして生きる。まさか今日、誤解はないでしょうが、これがキリスト教徒であったり、これがプロテスタントピューリタンではありません。

  神こそ、「すべてのものを豊かに与えて楽しませてくださる神」である。即ち、神は必要なものを気前よく豊かに与え、明るい喜びを授けて下さるお方である。このお方に望みを置きなさいと語るのです。

  このお方に望みを置く時、高慢にならず慎み深くなります。落ち着きと共に快活さを与えられるのです。自分の限界を知りつつ活動的であり、行動的でもあります。このお方は世のしがらみから人を解放し、自由にして下さるからです。このお方に望みを置くので、謙虚でありつつ勇敢さが生まれます。

  神に望みを置くとは、「主の祈り」で祈るように、「御名をあがめさせたまえ、み国を来たらせたまえ」という生き方だと言っていいでしょう。神の御心が地上を支配しますようにという生き方です。それは先程の落ち着きと快活さを生み、活動を生み、謙虚であって勇敢であることを生んでいくのです。

  それだけでなく喜んで与える生き方。所有欲でなく、物惜しみしない在り方。「喜んで分け与える」とありましたが、気前いい在り方へと向かいます。

  父なる神が、その一人子さえ惜しまずお与え下さる気前いい方であるからです。その気前良さに与って、あなた方も気前良くありなさいと説いています。

  今日の所でも「良い行い」とありました。ここでも高貴な行ない、気品ある、立派な行いが勧められています。どこかにキリストの香りがするものです。無理に香りを作るのでなく、神に望みを置けば自然と香りが現われています。

  今の時代、あちこちに欲深さがあります。欲を掻き立てる宣伝や欲を増幅する装置が溢れています。また不安から、対立を煽る人たちも多くいます。そういう中で、人々に希望を与える行動はどうすれば生まれるのかと思います。

  ドイツに入ったシリアの難民は、歓迎を持って迎えられました。列車の到着を待って、人々が自発的に食べ物を用意したり、難民の擦り切れた靴の代わりに自分や家族の靴を提供して、ミュンヘン駅の玄関の5、6段ある長い階段にずらっと並べています。またのぼり旗を立てて歓迎したりしています。日本で報道されないそんな場面を、外国の友人がフェイス・ブックに掲載したりしています。駅に着いて、やっと難民に笑顔がこぼれ、安堵感が見られます。日本でもテレビで、「物惜しみをせず、喜んで分け与える」人々の姿を見たのではないでしょうか。

  ドイツはEU諸国の中で最も豊かです。ただそれだけでなく、例えば首相のメルケルさんは牧師の娘さんです。東ドイツ時代、共産圏にあって相当苦労した牧師の家庭です。しかしまた戦時中はユダヤ人を殺戮し、沢山の諸外国の難民をドイツが作ったことを痛切に反省する人です。また今の大統領は、日本では言われませんが元牧師です。

  彼らには、聖書の「寄留の他国人や孤児を虐げてはならない。もてなしなさい」という精神がほとばしっているのです。

  「物惜しみをせず、喜んで分け与えるように。」これが今日の国際化の時代においても、いかに大事であるかと思わされます。

  「未来に備えて自分のために堅固な基礎を築くように」とありましたが、評論家の中には、ドイツが若い難民を受け入れるのは、彼らを労働力にして更に発展を遂げたいからだという人もあります。人間は経済的動物ですから、確かにそういう面もあるでしょう。だが、もっと真直ぐ、素直に受け取る方がいいのではないでしょうか。

  ここには世界に希望を与える、立派な、品位ある行動が含まれていると思います。即ち、ドイツだけでなく人類の未来のために、「堅固な基礎を築く」行動です。だから今、世界各国が自分の国にも難民を受け入れようとする機運が生まれたのです。

  注)最近、難民の中に何%かのイスラム国ISのテロリストが紛れ込んでいるとヨルダン政府が断言しました。EU諸国は更に難しい問題を抱えることになりましたが、何とか解決してもらいたいと願っています。ただ今のような大量の難民はEU諸国だけでなく、日本も含め本当は世界が力を合わせなければ解決できないことでしょう。


      (つづく)

                                             2015年9月13日



                                             板橋大山教会 上垣 勝



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