シッポをつかんで叩きつけろ


                        日本で一番古い隅田川の花火      (右端クリックで拡大
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                                                 私はいったい誰? (上)
                                                 ルカ20章20-26節


                              (序)
  私たちはいったい誰なのでしょう。むろん私は私ですし、私は紛れもない私自身のものです。しかし私は他の多くの人たちの中で生き、私自身のものとしている考えでさえ多くの人から影響を受け、その人たちの考えという遺伝子を引き継いでいます。誰もが時代の子であると言われる通りです。

  時代の子なら、私はこの時代に従わなければならないのでしょうか。時代の産物としてこの時代から自由であることはできないのでしょうか。私たちは皆、自由に思想、信条に生きることが保障されています。私たちは誰からも自由です。

  では誰からも自由な者として、この時代の中で私はどう生きるのでしょう。自由に生きればいいと言っても、その自由がそもそも時代に影響されていますし、本当には自由でないのですから、時代から自由である為には、結局我がままに生きればいいという事になるのでしょうか。我がままであること。自由奔放に欲するまま生きる。それが私らしく生きることでしょうか。

                              (1)
  今日の個所は20章19節との関係の中であった出来事です。律法学者や祭司長たちはイエスに手を下そうとしたが、「民衆を恐れた。」「そこで、機会をねらっていた彼らは、正しい人を装う回し者を遣わし、イエスの言葉じりをとらえ、総督の支配と権力にイエスを渡そうとした」のです。

  恐ろしい世界です。「回し者」とは、原語では賄賂を掴ませて買収した者、更には罠を仕掛けて待ち伏せする者という意味で、一種のスパイです。

  それで今日の個所には実に姑息(こそく)な手段を使うケチくさい人間たちが登場します。闇の世界の住人であり、余りに暗い現実社会なので気が重くなります。こんな世界は触れたくないのですが、確かに私たちもそういう面が全くないとは言い切れず、少なくとも、「以前は肉の欲望の赴くままに生活し、肉や心の欲するままに行動し、生まれながら神の怒りを受くべきものでした」とパウロが語った通りです。そして、イエスはそういう闇に世界の住人たちから攻撃されたので触れざるを得ません。

  それにしても闇の世界ですから、普段私たちはあまり接しない世界です。しかし今、こういう目に遭遇している方や、かつてこういう経験をお持ちの方は、イエスが同じようなことを経験されながら、その闇の力に打ち破って行かれた事を知って、希望が湧き、力づけられるに違いありません。

  男の世界、政治の世界、権力の世界はいつの時代もしばしばこういう手が使われ、足を引っ張り蹴落としていく権力の現実があります。

  今、佐渡で市会議員として活躍しているまだ若い婦人牧師がいます。現役で牧師をしながら出大変だと思います。この方は汚職の問題など、おかしいと思うことに徹底的にこだわり論戦を戦わせているそうで、引きずり降ろそうと姑息な手が使われるようですが、地の塩、世の光として生き、教会と無関係の人たちが声援を送り始めているそうです。

今日の聖書の方ですが、彼らは、今か今かとチャンスを窺っていたのです。そして彼らに買収され、イエスを罠にかける回し者が近づいて来たのです。

  「言葉尻をとらえ」とあります。多くの言葉でなく、イエスのひと言を捕えようとしたことが原文から分かります。人間は凄いことをしますネ。相手の言葉の尻を、口実となる言葉のしっぽを捕えると、しっぽを握りしめて、胴体を振り回し何度も地上に叩きつけやっつけるのです。

  群衆がイエスに味方すれば手を出せない。だから、ローマの権力の前にイエスを持ち出し、彼らに引き渡し、殺させようとしたのです。そんな悪知恵の働く者が実社会にはいます。

  いずれにせよ計算し尽くした結論でしょう。人間の罪の酷さ、汚さがここに深く刻まれています。

  現代社会に目を転じると、近頃、新聞のニュースで明るみに出たのは、原発がある県や道などで、県議会議員たちを金で買収して原発を再稼働させようとしている内幕でした。深刻な原発事故のことを忘れさせ、どうにかして再稼働させたい政府の意向を受けて、裏金が動いている。これは、回し者に金を握らせ何とかイエスの息の根を止めんと、律法学者や祭司長などがした事と相通じます。都合の悪いイエスを消したいのです。

       (つづく)

                                             2015年7月26日



                                             板橋大山教会 上垣 勝



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