浄化力を宿す人


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                                               恐れず、尊敬して生きる (中)
                                               Ⅰテモテ6章1-2節


                              (2)
  「トムじいやの小屋」にしても、このテモテ書にしても、暴力的な奴隷解放を煽っていません。それでは問題の根は解決しないからです。人の魂に届く形で、心の中から変化することを願って書いています。奴隷の方もイエス様に支えられ、励まされて、地の塩、世の光として生きることが大事だという事でもあります。

  このテモテの手紙で言えば、2章にあるような、「願いと祈りと執り成しと感謝とを全ての人々のために献げなさい。…常に信心と品位を保ち、平穏で落ち着いた生活を送るためです。…神は、全ての人々が救われて真理を知るようになることを望んでおられます。神は唯一であり、神と人との間の仲介者も、人であるキリスト・イエスただお一人なのです。この方は全ての人の贖いとしてご自身を献げられました。…」とあるような健全で、正々堂々とした、しかも謙虚なあり方です。「全ての人々」とありますが、ここにキリストをまだ知らない主人も含めているのでしょう。

  「自分の主人を十分尊敬すべきものと考えなければなりません。」2節は信仰を持つ主人ですが、この主人は未信者の主人です。その主人から、「神の御名とわたしたちの教えが冒涜されないようにするため」というのが、1節の勧めです。

  当時、奴隷が誠心誠意仕えてくれるのを見て、信仰に入る主人もありました。奴隷がキリスト教徒に改宗し、自分に仕える姿勢が変化したことに心を打たれてキリスト者になったのです。奴隷の生き方が主人に感化を及ぼしたのです。

  今日でもある家庭に一人のクリスチャンが生まれ、その人を通して家族に感化が及ぶ場合があります。それと似た現象が、一人の奴隷からその家の主人に影響を与える場合もありました。

  詩編51篇に、「神よ、わたしを憐れんでください。御慈しみをもって。深い御憐れみをもって、背きの罪をぬぐってください。わたしの咎をことごとく洗い、罪から清めてください。あなたに背いたことをわたしは知っています。わたしの罪は常にわたしの前に置かれています」とありますが、誰しも自分を見つめれば1つや2つの背きの罪や咎があります。その事に誠実に悩む人たちがこの世にいます。「 神よ、わたしの内に清い心を創造し、新しく確かな霊を授けてください。御前からわたしを退けず、あなたの聖なる霊を取り上げないでください。 御救いの喜びを再びわたしに味わわせ、自由の霊によって支えてください」という隠れた叫びを内面に持つ人たちです。

  信仰を持った奴隷の姿を見て、主人も「御救いの喜び」を求め、「自由の霊を」お与えくださいと願うようになることが起こったのです。主人を徒(いたずら)に恐れるのでなく、キリストが自分に愛を持って接して下さったように主人に尊敬を持って 生きる。軽んじるのでなく、「十分尊敬すべきものと考える」それが主人に感化を与えたのです。

  信仰を持ったから偉いというのではない。信仰を持たない者は、神の恵みに気づかない愚かな人間だと見下げるのではないのです。信者と未信者を分断するあり方でなく、未だ信仰を持たない人の上にもキリストの恵みの光が届いていることを、愛を持って示して生きたのでしょう。

  また、主人もその家族もそして奴隷もキリスト者になり、その一家がキリスト教徒として祝福されると、その祝福の姿が周囲にも良い感化を与えるものになったでしょう。

  繰り返しますが、「神の御名とわたしたちの教えが冒涜されないようにするためです」とありますが、この時代、彼らは、神と教会の教えを根拠にして自分の課題を担っていったのです。神の名が汚されないように、そして積極的に言えば、み名が崇められるためです。

  先日の新聞に、歴史家で、「武士の家計簿」というのを書いている磯田という人のこういう言葉が載っていました。「本当に大きな人間というのは、世間的に偉くならなくとも金を儲けずとも、濁ったものを清らかな方に変える浄化の力を宿らせた人。」濁ったものを清らかな方に変える「浄化力を宿す人」です。まるで地の塩、世の光を指すような言葉ですが、この個所で勧められているのはそれに似ています。


       (つづく)

                                             2015年6月7日


                                             板橋大山教会 上垣 勝



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