石が叫ぶ


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                                                  黙れば石が叫び出す (中)
                                                  ルカ19章37-40節


                              (2)
  「すると、ファリサイ派のある人々が、群衆の中からイエスに向かって、『先生、お弟子たちを叱ってください』と言った」のです。

  彼らは私服警官のように群衆に紛れこんで監視していたのでしょうか。弟子たちがほめたたえている言葉は、本来神に対する賛歌です。弟子たちは神への賛歌を人間イエスに向ってしている。これは冒涜だと見たのです。「主の名によって来るのは、神しかいない。」これは律法違反だ。神への冒涜だ。死刑だ。「お弟子たちを叱って下さい」と訴えたのです。

  因みに、現代でもイスラムでは、神や預言者と言われるマホメットに対する冒涜は、群衆の前での石打ちの処刑です。他宗教に改宗するのも死刑です。ユダヤ教も2千年前は冒涜は厳罰でした。日本では、キリシタン禁制時代はキリシタンは十字架刑か火あぶりの刑です。何年か前に教会に通う婦人がありました。その方が信仰を持ち始めた時、ばったり来られなくなりました。家族の反対にあったからです。キリスト教主義大学出身の知的な方でしたが、家から解放されていなかったようです。今の日本では信仰ゆえの死刑はないでしょうが、家庭では信仰の自由が保障されていないことがまだあるようです。古い封建的体質が残る家では、親子では勘当同様、親戚から絶縁されることも起こります。残念なことに、まだ古い家の体質をどこかに隠し持っています。

  驚いたのは、ある時、マスコミで働く女性の相談を受けましたが、話の中で、「結婚は家と家とがするものですから…」と言うのです。マスコミですよ。テレビにも映る人のようですが、時代遅れも甚だしい。日本のマスコミのレベルに驚きました。

  さて、ファリサイ派の人たちの言葉をお聞きになったイエスは、「言っておくが、もしこの人たちが黙れば、石が叫びだす」とお答えになったのです。大変勇気ある発言です。普通なら到底言えないでしょう。

  イエスはかつてペトロに、メシアであることを誰にも語ってはならないと話して、メシア秘密を命じられました。しかし今や、大きな節目を迎えて秘密を守る時は終わったのです。今や、人々にメシア告白をやめさせるなら、石が叫び出す。誰かが黙らそうとすれば、何万年、何千万年も固く沈黙を守って来た石が叫び出す。誰も彼らを黙らすことはできないと語られたのです。

  世界中で今年はあの第2次世界大戦を覚える色々な催しが開かれています。80代の方は、敗戦の日、何を思われたでしょうか。ナチス軍がオランダを占領しましたが、あるオランダの老婦人は、連合軍の飛行機が来た時のことをつぶさに語っていました。「初めて連合軍の飛行機が私たちの家の上空を飛んだ時、思わず外に飛び出て、パイロットに両手を振りました。パイロットと目が合って喜び躍りました。連合軍が上陸すれば、最初に会う兵士にこのキャンデーを上げようと思いました。」ドイツ軍に占領されて以来、自由は奪われて服従を強いられ、弾圧される中で黙々と沈黙を守って来たのです。しかし今や、沈黙を破って喜びの叫びを上げることが出来る日が来たのです。彼らが沈黙すれば、石が叫んだでしょう。

  日本では終戦の日に、こういう喜びを抱いた人はいたでしょうか。いました。強制連行されて来た中国や朝鮮の人たちです。万歳、万歳と言って躍りあがって喜びました。

  王なるキリストを迎える喜びの叫び。最初の殉教者ステパノは、キリストに対し、そのような喜びに生きた人です。使徒言行録には、彼がキリストを大胆に証しし、そのためにユダヤ人たちに襲われ、大きな岩石を頭や身体に打ち落とされて石打ちの刑を受け、骨も肉も砕かれて肉体を潰されます。だが彼は最後に、渾身の力を振り絞って起き上り、その場に跪き、石を投げつけられる中で、「主よ、この罪を彼らに負わせないで下さい」と彼らの赦しを祈り、「私の霊をお受け下さい」と言って息を引き取りました。

  キリストの福音はまさにそういう力を持っています。砕かれても、砕かれても、息を吹き返す、尽きぬ泉のような力を持っています。真理は決して死なないのです。真理は真理自らの力で、真理であることを証しするのです。時間がかかるかも知れないが歴史の中でそれが起こるのです。

       (つづく)

                                             2015年5月10日




                                             板橋大山教会 上垣 勝



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