眼下にエルサレムを見る


              ルサレム入場ですがザアカイが木の上にいます。祭壇の囲いのレリーフ。     (拡大)
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                                                  黙れば石が叫び出す (上)
                                                  ルカ19章37-40節


                              (1)
  いよいよ今日の個所はエルサレム入場です。「イエスがオリーブ山の下り坂にさしかかられた時、弟子の群れはこぞって、自分の見たあらゆる奇跡のことで喜び、声高らかに神を賛美し始めた」とありました。

  ロバの子に乗ったイエス様は今、オリーブ山の西側の下り坂に来られたのです。ここからは、眼下にエルサレム神殿と市内、そして遠く地中海方面まで、一望のもとに見渡すことができる素晴らしい眺めです。朝日が照ると東に向うエルサレムの美しい黄金門がまさに金色に輝き、夕日を浴びると町の建物が茜色に見事に輝きます。かつてエルサレム神殿があった境内に、今は2つのモスクが建っていてイスラムが独占していますが、イエス時代にはエルサレム神殿がひと際目立って威容を誇っていたでしょう。

  「弟子の群れ」とあるのは12弟子だけでなく、10章にある72人の弟子たちで、この時には更に弟子の数が増えていたでしょう。100人あるいはそれを超える「弟子の群れがこぞって、自分の見たあらゆる奇跡のことで喜び、声高らかに神を賛美し始めた」のです。

  彼らは数年間、イエスの数々の偉大な業に接して来ました。奇跡と訳されている言葉は、元は偉大な業という語です。彼らはイエスの偉大さにじかに触れて弟子になり、驚きと感謝を持って従って来た人たちでした。今、眼下にエルサレムが見えて、思わず胸に熱いものが込み上げたに違いありません。ガリラヤからずっと心に温めてきたイエスの偉大な奇跡の数々を思い出して、喜びに溢れ、手を打ち鳴らし、声高らかに神を賛美し感謝したのです。私たちがもしこの場にいたら、その喜びに圧倒されたに違いありません。

  彼らはじかにイエスの偉大な業や奇跡に触れたのです。目で確かめ、本当にそう思ったのですから賛美は紛れもないものだったでしょう。

  イエスの公生涯は、ここに大きな節目を迎えたのです。弟子たちの心に、何年間も貯められたイエスの言葉や業が一つに集まり、エルサレム入場と共に、言わば細い支流が集められ急に大河となって滔々と海に注ぐように、喜びと賛美と感謝の勢いとなって、「主の名によって来られる方、王に、祝福があるように。天には平和、いと高きところには栄光」と大声で喜び叫んだのです。

  ここに賛美した言葉は詩編118篇からの引用で、元は神に対する賛歌です。彼らは神に捧げる賛歌を持ってイエスエルサレム入場をほめたたえたのです。

  「主の名によって来る」とは、神の名前を根拠として来るということ、神に基づき、神が遣わされたお方として来るという意味です。弟子たちの群れは、子ロバに乗るイエスの入場を、神の名に基づく偉大な王の入場。王なる神の来臨として喜びました。今、王なる神がエルサレムに入場されるという感謝であり、頌栄です。この王なる方のために、「天には平和、いと高きところには栄光」と神をほめたたえたのです。

  イエスは今、坂道を注意しながら小股で降りて行く子ロバに乗って谷底に向って行かれ、次に坂を上って市内に入って行かれます。軍馬や名馬に颯爽と跨るのでなく、のろまで、愚かさの象徴であるロバの子に跨って行かれるのですが、そのイエスに王なる方、万歳と言って大歓声を挙げたのです。他の福音書では、棕櫚の枝を手にして「ホサナ、ホサナ」と言って迎えたと書かれていますが、ホサナとは万歳という意味です。

  人類始まって以来、こんなことが、いつ、どこで、あったでしょうか。いかなる王も刀を腰に帯び、周りや後ろに槍や剣を持った従者たちを従えて入場します。現代なら、オープンカーに乗っての入場でしょう。この場合は、一切の警備も準備もなく、自然発生的に起こった喜びの歓声と賛美の歌でした。自発的に起こった万歳の声です。その中を、イエスは高ぶらず、心の低き方として、民衆と共にある者として入場されたのです。

          (つづく)

                                             2015年5月10日




                                             板橋大山教会 上垣 勝



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