愛は強く、恐れません
２０１５年、石神井川の桜
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救いがこの家に来た （中）
ルカ１９章１－１０節
（３）
イエスはその所に来ると、上を見上げて、「ザアカイ、急いで降りて来なさい。今日は、ぜひあなたの家に泊まりたい」とおっしゃったのです。
これにはザアカイもたまげたに違いありません。ザアカイは先回りし、高みの見物と思っていたのに、イエスこそ彼の先回りをしてこの町で彼に出会おうと待っておられたのです。先回りの先回りをしておられた。神様はしばしば私たちの先回りをして待っておられます。そして思い掛けない仕方で、驚くべき場所で出会って下さることがあるのです。それは、私たちに人生の新しい出発をさせるため、救いのためです。
知人に、人の問題点に目が行くのが自分の問題だと悩む人がいます。前は私もそんな所があったと思います。自分ができないためか、苛立って、人の問題点が目につくとか、自分自身のその点が嫌だから人にある同じようなことが嫌いになるといった悩みです。だがそんな自分が嫌になって、信仰に導かれる場合もあります。何れにしても思い掛けない仕方で、神は私たちに出会って下さるのです。
モーセは、イスラエルの民の破れ口に立って主を宥（なだ）めたとあります。破れ口です。イスラエルの歴史には数々の破れ口がありました。個人としてもだが、民族として破れがあった。だが彼は民族の破れ口に留まって執り成し、神との出会いを深められたのです。この場合も、破れ口というマイナスの事が神様との関係でプラスに転じるきっかけになったのです。
ザアカイは、「今日は、ぜひあなたの家に泊まりたい」という言葉を聞くや、「急いで降りて来て、喜んでイエスを迎えた」と書かれています。思い掛けない言葉に惹きつけられ、心を躍らせて降りて来たのです。これまで誰も友達がなかったのでしょう。誰からも愛されず、心からは信頼されず、カラカラに心が渇いていた。それを跳ね返すために、皆が嫌悪する職業に就き、ローマの権力を盾にして強引に生きて来た。だからイエスの温かいお言葉が一層嬉しかったのです。彼は「急いで降りて来て」とあるように、素早く下りて来たことが書き留められていますが、それ程、彼は自分を先入観なしで迎えてくれたイエスに感激したのでしょう。
ところが、イエスの「ぜひあなたの家に泊まりたい」という言葉を聞き、喜んで急いで降りて来たザアカイを見たエリコの人々は、「あの人は罪深い男のところに行って宿をとった」と呟いたのです。イエスは素晴らしい男だと思っていたが、何だ、罪人の一人じゃあないか。卑しい人間だと、手の平を返すようにイエスを見下したのです。
イエスには人々の反応は予め分かっていたでしょう。だが、たとえ人々がそんな反応を示そうと、罪人の一人にされることをためらわず、ザアカイの家に行って宿を取ると言われたのです。愛は恐れない。愛は恐れを取り除くと聖書にありますが、誤解を恐れずザアカイを愛して行かれた。人々から反発されたが、反発されても一人の男を救うために愛して行かれたのです。
イエスがエリコに来られたのは、この男一人を救うためであったかも知れません。一人です。それでいい。イエスはただ一人、あなたを、私を救うためにこの世に来られたのです。あなたただ一人の、私ただ一人の救いのため十字架に着いて下さった。信仰はそういうイエスと出会うのです。
このイエスの敢然とした真実な愛に触れ、彼は、「主よ、わたしは財産の半分を貧しい人々に施します。また、だれかから何かだまし取っていたら、それを四倍にして返します」と述べたのです。彼の喜びは、イエスが罪人との隔ての壁を超えて自分の所に来て下さり、友なき者の友となって下さった事に根差すものでした。
彼は神の愛を知ったのです。「私たちが神を愛したのでなく、神が私たちを愛して、私たちの罪を償うために、御子をお遣わしになった。ここに愛がある」とヨハネの第１の手紙にある、神の愛に彼は出会ったのです。
（つづく）
２０１５年４月１２日
板橋大山教会 上垣 勝
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