苦難の中でも口を開かなかった


                           アシモくんの登場          (右端クリックで拡大)
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                                                  主の僕 (上)-3
                                                  イザヤ53章1-12


                              (2)
  次の5節半ばは、「彼の受けた懲らしめによって、わたしたちに平和が与えられ、彼の受けた傷によって、わたしたちはいやされた」と語ります。

  神の天罰は私たちでなく、彼の上に下されました。彼が刑罰をお受け下さったから、私たちに平和が授けられたのです。彼が刺し貫かれ、血を流して、代わりに私たちは癒されたのです。そのことを、私たちは全く気付かず生きていたのです。

  私たちが神から慰められたのは、彼が私たちに代わって、神に折檻(せっかん)され懲らしめられたからです。私たちの傷が癒されたのは、彼が私たちをかばって傷を受けられたからです。だが、それを私たちは知らなかった。むしろこの平和は、私たちの功績、努力、功徳の当然の結果だと思っていたのです。

  6節はこう語ります。「わたしたちは羊の群れ、道を誤り、それぞれの方角に向かって行った。そのわたしたちの罪をすべて、主は彼に負わせられた。」

  羊の集団は、先頭の何頭かがトコトコ走り出すと、その流れに乗って後ろのものも引きずられて大群になって走り出します。深く考えず、乗り遅れずにと思って前のものについて行きます。人も似ています。後から気付いて、あれは先頭のものが間違ったからだ、彼らの責任だと責任を他になすりつける事さえ人はします。羊はそんな事をしないが、人間はそんな事もしてしまいます。

  あるいは又、羊はトコトコと一人でどこかに行ってしまう習性がありますが、私たちも神から離れて、好きな道を、好き勝手に進んで行ってしまうことがあります。

  いずれにせよ、神に背を向け、神から離れ、神を無視して、責任を環境のせいにしたり、他になすりつけたり、責任転嫁する。また過ちを告白しない。

  だが、私たちの罪や過ちを、神はすっかりイエス・キリストに負わせ、彼が懲らしめられたのです。それが十字架であり、キリストの死です。

  彼は、全人類の罪を背負って、余りの罪の重さにヨタヨタとかがみ込み、また立ち上がり、だが口を開かなかった。口をグッとつぐみ、責任転嫁せず、いや、人間の責任をすべてご自分に引き受けて下さった。

  7節は、「苦役を課せられて、かがみ込み、彼は口を開かなかった。屠(ほふ)り場に引かれる小羊のように、毛を刈る者の前に物を言わない羊のように、彼は口を開かなかった。 捕らえられ、裁きを受けて、彼は命を取られた」と語ります。

  イエスは苦しみを受け、虐待されたが、口を開かなかったのです。屠殺場に引かれて行く小羊のように、毛を刈る者の前に黙って任せている羊のように、決して口を開かなかった。私たちの罪を訴えようとされなかった。私たちに向き直って責任追及し、なじることをされなかったのです。ただ深く沈黙し、私たちの罪も過ちも咎も、そっくりそのまま我が事のように身に受けられたのです。受難節の最後の週である受難週とは、その十字架の道行きを想う週です。

  まるで、旧約聖書に出て来るアザゼルのヤギのようです。ヤギは、民の罪をすべてその身に背負って、荒れ野に放たれます。それはアザゼルに差し出された生贄(いけにえ)です。イエスも私たちの罪をすべて背負って、罪を贖うために生贄に捧げられたのです。

  受難節レントは、このイエス・キリストを黙想する期間です。私の救いはキリストの贖いの上になっている。私の背後には、キリストの十字架がいつも立っています。彼が神に裁かれたから、私の罪が完全に贖われたのです。

  私たちの罪の赦しの福音、イエスの喜びの福音の蔭には、常に裁かれたキリストがおられます。だが、それを重苦しく思う必要はありません。イエスは、まことの愛をもって、私たちを罪から解放し、ただ私たちがそれから解放されることを単純に喜びとされたからです。私たちに恩を売ったり、負担をかけるためではありません。

  欧米の人たちはイースターには、喜びの笑顔を満面に輝かして、「ハッピー・イースター」と語って迎えます。イースター、おめでとう。混じり気のない喜び、心の底から純粋な、ハッピー・イースターと言える復活祭を4月に迎えたいと思います。

          (完)

                                             2015年3月22日



                                             板橋大山教会 上垣 勝



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