愛は危険を厭いません


                 御用の方は鳴らしてくださいね。ブルゴーニュの田舎村。
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                                                   受難予告と私たち (上)
                                                   ルカ18章31-34節


                               (1)
  イエスは12弟子を呼び寄せ、「今、わたしたちはエルサレムへ上って行く。人の子について預言者が書いたことはみな実現する」と、3度目の受難予告をされたとありました。

  1度目は9章22節以下です。その時は、「長老、祭司長、律法学者たちから排斥されて殺され」という言葉が入っていました。2度目の9章44節以下では、弟子たちは怖くてその意味を尋ねられなかったとあります。

  そして今日の箇所です。3度とありますが実際にはもっと何回も話されたでしょう。受難と復活がいかに重要な事柄であり、イエスが世に来られた目的はここにあったからです。

  以前の教会は、これを受難予告と呼びましたが、今は受難と復活の予告と言い直すようになりました。イエスの来られた目的は単なる受難でなく、死人の中からの喜ばしい復活であり、イエスの死は勝利に終わるからです。十字架より復活が中心であり、信仰は勝利の喜びに向かい、救いへと向かうからです。

  イエスは、「預言者が書いたことはみな実現する」と言われました。イエスの受難と復活は、旧約の預言者たちが予め告げたものであって、偶然に起こることでも、イエス自身の思いつきでもないと言う意味です。

  しかし「みな実現する」とありますが、イエスには復活することが予めみな分かっていて、安心して苦難を受けられるのではありません。復活という結果が分かっているなら受難の意味は半減します。そのような受難は筋書きの見え見えの猿芝居と言っていいでしょう。

  ゲッセマネでは血の滴るような汗を流し、危険を冒して十字架に付かれました。もしかすると甦りが起こらず、弟子たちもイエスの死の意味を理解しないかも知れない。だが、たとえそうであっても父なる神の御心に添い、神の宥めの献げものとしてすべての人の罪をかぶって十字架に付いていこうとされたのです。イエスの十字架は、危険な賭け以外の何ものでもありませんでした。真の愛はその人のためにどんな危険をも厭いません。もし命を賭けるほどの危険を犯されたのでなかったら、イエスの死は少しも愛ではなかったでしょう。

  それほどの命を賭けたものであったからこそ、十字架は限りなく尊く、慕わしいのではないでしょうか。

                              (2)
  しかし弟子たちは、「これらのことが何も分からなかった。彼らにはこの言葉の意味が隠されていて、イエスの言われたことが理解できなかったのである」と34節にありました。イエスが来られた一番大事なことなのに、彼らは何も理解できなかったと、何度も言葉を重ねて語られています。

  なぜ分からなかったか。それは当時のメシア思想からすれば、当然で、メシア即ちキリストは栄光の座について、民族に幸福をもたらす者、政治的に勝利する王者として来ると考えていたからで、メシアが苦難を受けたり、殺されることは決してあってはならないし、ある筈がないからでした。受難のメシアという考えは決してあり得なかったのです。ましてや、それが神のご計画とは到底認めることはできなかったのです。

  9章22節でイエスは、「人の子は必ず多くの苦しみを受け、長老、祭司長、律法学者たちから排斥され」と、「必ず」と言われました。「必ず」とはデイというギリシャ語で、神の必然性を指す言葉で、これが神のご計画だという意味です。だが弟子たちはそのことが理解できなかったのです。それはやがてペンテコステになって、聖霊が弟子たち一人ひとりに下って初めて彼らに明らかになることです。

           (つづく)


                                             2015年2月15日



                                             板橋大山教会 上垣 勝



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