ラクダが針穴を通る
Ameugny村の家々(１) （クリックで写真拡大）
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ラクダ、針穴を通る （中）
ルカ１８章２４－３０節
（２）
さて、口を開かれたイエスの最初の言葉は前回よりも厳しいものでした。「財産のある者が神の国に入るのは、なんと難しいことか。 金持ちが神の国に入るよりも、らくだが針の穴を通る方がまだ易しい。」 彼は更に顔をこわばらせ、緊張し、襟を正したでしょう。失意の余り深い溜息が漏れたでしょう。
それはとても困難だ。不可能だ。苦虫を噛み潰すような顔つきで、万事休すと思ったでしょう。
ただイエスがこの議員を意図的に悲しませ、金持ちが神の国に入れられるのは極めて難しい、不可能だと思わせられたのは、今申しましたが、彼が砕かれて、低くされ、救われるようになるためです。
イエスの目には、この金持ちの議員も神の民の一員です。神に愛された人間であります。そうであれば、どうして滅びていいでしょう。イエスは洗礼の時に、「あなたは私の愛する子。私の心に適う者である」という声をお聞きになりました。神の声です。これはイエスご自身、生涯にわたって聞き続け、ご自身の存在の拠り所とされた神の言葉ですが、同時に「あなたは私の愛する子」と、ご自分を支える神の愛の言葉を人々に語り、実際に神の愛する子として人々を愛して行かれました。
イエスは、この大金持ちの議員も救いから漏れないように、先ず彼を強く打ち砕き、救おうとされたのです。しかも真に魂の底まで徹底的に砕かれたのです。それが、「金持ちが神の国に入るよりも、らくだが針の穴を通る方がまだ易しい」 という言葉です。
皆さんは動物園でラクダをご覧になったことがおありでしょう。しかし、大抵の方はラクダに乗ったことはないでしょう。オリを隔ててラクダを見るのと、ラクダのすぐ横に立って、ラクダに乗ろうとしてラクダの大きさを体験するのとでは、全く違います。私はエジプトのピラミッドのそばでラクダに乗ろうとして横に立ちましたら、馬より遥かに背が高くその巨大さに圧倒されました。はしごをかけて背中に乗るのかと思いましたら、ラクダが膝を折ってしゃがんでくれたので乗れました。
そんな巨大な動物ですが、そのラクダが極めて細い針の穴を通る方が、金持ちが神の国に入るよりもまだ易しいと言われたのです。「ラクダ、針穴を通る。」絶対不可能だということです。金持ちは絶望に晒されたのです。彼は前回の箇所で非常に悲しみましたが、今回の箇所でさらに徹底的に、立ち上がれないほど強く打ち砕かれたのです。
（３）
すると、これを聞いていた人々が、「それでは、だれが救われるのだろうか」と呟（つぶや）いたのです。打ちのめされ、千尋の谷底に絶望的に突き落とされた彼は、人々のこの反応に驚いたでしょう。救いの道の厳しさを噛み締めていたのは、自分だけではなかったのです。他の人達もその厳しさに、タジタジになっていたのです。
するとイエスは続いて、「人間にはできないことも、神にはできる」と明言されました。「人間にはできることではないが、神にはできる。神は何でもできるからだ。」マルコ福音書はそうなっています。マタイもほぼ同じです。
救いの道の厳しさ、険しさ。人間の力では、絶対達することが不可能である永遠の命への道。大変な金持ちだった彼はその前で身がすくみ、たじろぎました。だが、次に発せられた「人間にはできないことも、神にはできる」という言葉。これを耳にして、全身にサッーと明るい光が射し来るのを覚えたでしょう。
金持ちも、そうでない者も、人には自分を救うことは不可能だ。絶対不可能だ。だが神はそれをして下さる。神には可能である。「人にできないことも、神にはできる。」「ラクダ、針穴を通る」ことが可能なのです。彼は天から射し来たった光に、強く心打たれたでしょう。
ではどのように可能なのか……
（つづく）
２０１５年２月１日
板橋大山教会 上垣 勝
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