温かいイエスの眼差し


                          Ameugny村の教会の屋根瓦        (クリックで写真拡大)
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                                                   ラクダ、針穴を通る (上)
                                                   ルカ18章24-30節


                              (1)
  今日は資産家議員とイエスの話の後半です。前回の所では、彼は資産も名誉も持ち、尊敬も受けている人ですが、更に永遠の命も獲得したいと願ってイエス様のところに来ました。イエス十戒をもって語られましたが、彼は、そんなことは皆、少年時代から守っていますと自信満々、胸を張って語ったのです。

  するとイエスは、あなたに欠けているものがまだ一つあると言われ、「持っているものをすべて売り払い、貧しい人々に分けてやりなさい。そうすれば、天に宝を積むことになる。それから、私に従いなさい」と語られました。すると彼は、「非常に悲しんだ。大変な金持ちだったからである」とあって、前回はそこで終わりました。

  今日はその続きです。前回私は、彼がこれを聞いて悲しみながら「立ち去った」と申しましたが、思い違いでした。24節にあるように、イエス様は、「議員が非常に悲しむのを見て、言われた」となっています。実はマタイとマルコは、「悲しみながら立ち去った」と書かれていたので、その記憶でそう言いましたが、ルカは立ち去ったとは書いていません。その後もそこにいたのです。

  そこでイエス様は、彼が非常に悲しむのを見て、「財産のある者が神の国に入るのは、なんと難しいことか。 金持ちが神の国に入るよりも、らくだが針の穴を通る方がまだ易しい」と言われたのです。

  イエス様は、彼が悲しむのを見ておっしゃったし、彼にもおっしゃったのです。なぜでしょう。イエス様が彼を悲しませられたのは、彼がもっと深く生きて欲しかったからです。イエスは意図的に悲しませられたのです。獲得するだけの生活とは何か。反対に、神のために捨て、隣人のために失う生活とは何かを考えさせるためです。

  悲しむ彼を、単にもう一度鞭打つためではありません。鞭が目的ではありません。彼に、悲しみつつも新しい別の道を歩むように、道を切り拓いて行かれたと言ってよいでしょう。それが今日の箇所で記されていることです。「議員が非常に悲しむのを見て」とありますが、イエスの目は厳しい警察官の目でなく、慈愛に満ちた温かい眼差しであったと思います。冷たい目でなく温かい目です。

  イエスが捕えられた後、大祭司の庭までついて行ったペトロが、3度イエスを知らないと言います。その時鶏が鳴くわけですが、イエスは「振り向いてペトロを見つめられた。ペトロは、『今日、鶏が鳴く前に、あなたは三度わたしを知らないと言うだろう』と言われた主の言葉を思い出した。そして外に出て、激しく泣いた」とルカ22章にあります。この時のイエスの目も、ペトロを裁く目でなく、彼の弱さを悲しみ、慈しむ目。恐れのあまりイエスを知らないと言ってしまったペトロを愛(いと)おしみ、深く憐れむ目です。ペトロを裁く目ではありません。冷たい目でなく温かい目です。今日のイエスの目も慈愛の目です。

  ルカ福音書は医者ルカによって書かれたと言われています。医者は当時も富と無関係に生きていません。今日ほど医者が富んでいた訳でありませんが、一般より裕福であった訳で、彼自身も含め、富を所有する者のあり方を考えさせられながら記したに違いありません。

  すなわち、富は悪なのか、罪なのか。富と信仰の関係を考えて、それがマタイ、マルコとはやや違った書き方になったのだと思います。すなわち、彼が見た、信仰的に狭い門から入る生き方とはどういうことかを書いたのではないかということです。医者であり、穏健な常識家として生きる信仰者であった彼は、信仰に生きるとはどういうことかを今日のところで記したのです。

        (つづく)

                                             2015年2月1日




                                             板橋大山教会 上垣 勝



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