小鳥たちの遺言


                           隣り村のAmeugnyで(2)           右端クリックで拡大
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                                                      柔和な人たち (下)
                                                      マタイ5章1-12節



                               (3)
  ミッドウェイ諸島というと70数年前、日米の海戦、大戦闘が繰り広げられた海域です。膨大な戦死者が出ました。外国の知人が、その一つの無人島の短いビデオを数ヶ月前にメールで送ってくれました。

  ビデオを見ると、そこは野鳥の楽園でした。きれいな草花が咲き乱れる地面に、数千羽の小鳥たちが雛をかえしている手づかずの素晴らしい自然でした。上空を無数の小鳥たちが飛び交う姿は、この世のものとは思えない程の素晴らしい眺めでした。

  ビデオは暫く島の素晴らしい光景を映していて、知人は、絶海の孤島の素晴らしい自然を撮影したものを送ってくれたのだと思いました。

  ところが、やがて地面の何かを映しました。始めは何か気づきませんでしたが、やがて同様のものを2つ、3つと次々映されて、初めて何であるかを知りました。野鳥の死骸でした。だが普通の死骸でなく、風化した死骸の肉は朽ちて、体を覆っていたフサフサした羽や嘴やあばら骨や背骨などが見えました。やがて分かったのは、カメラマンが映しているのは、野鳥たちがお腹に飲み込んだペットボトルの蓋や容器のかけら、プラスチックのライターのカケラ、ビニールの紐、発泡スチロールのカケラ、その他プラスチックの様々なものでした。

  彼らはプラスチックを飲み込み、排泄できず、お腹に沢山溜め込んで死んだ鳥たちでした。中に、今息たえだえになってもがいている親鳥もいますし、プラスチックを飲み込んでのたうちまわっているヒナもいました。羽も骨もすっかり朽ちて、プラスチックだけがかたまって残っている所もありました。鳥の骨はすっかり朽ち果て、お腹にあったプラスチックだけがかたまって残っている訳です。まるで小鳥たちの遺言のように。

  4分程のビデオでしたが強いショックでした。人間が住む大陸から遠く離れた絶海の孤島です。そこは小鳥の楽園がある筈なのに、楽園でなく、人類が作った地獄の姿でした。

  イエス様は2千年前に、「空の鳥を見なさい」とおっしゃいましたが、天真爛漫な空の鳥たちは今、人の文明に汚染されて犠牲になっているのです。

  私はビデオを見ながら恐ろしくなると共に、彼らを死に至らしめた力は、やがて回り回って人類を襲い、逆襲するだろうと思いました。この短いビデオは、人類の何十年後、何百年後かを予言しているように思いました。

  新約聖書のローマの信徒への手紙8章には、信仰の中心的な問題が記されていますが、その信仰の中心的な箇所の所で、被造物の苦しみの問題が取り上げられ、「被造物は、神の子たちの現れるのを切に待ち望んでいます」と書いて、「被造物がすべて今日まで、共にうめき、共に産みの苦しみを味わっていることを、わたしたちは知っています」と述べています。 パウロは私たちの時代の被造物のうめき苦しみを知っていたかのような書きぶりです。

  何人かにビデオを送りましたら、ある友はこう書いて来ました。「ポルトガルのお友達からのビデオを見ました。何とも痛ましく、悲しく、人間がしている事に申し訳ない気持ちで一杯です…。ペットボトルのキャップやライターなどのプラスチックでお腹をパンパンに膨らませて、喘ぎながら死んで行く姿が。…お腹じゅう、プラスチックだらけの死骸に涙が流れます。地球は人間の為だけにあるのではないのに…! 罪を重ねている私たちを思います。」

  イエス様は2千年後の人類が、もし柔和さを失うなら、地球という青い惑星の自然環境に対して何をしでかすかを知っておられたのでしょうか。

  イエスは9節で、「平和を実現する人たちは幸いだ」と言われました。平和は人類だけの平和でなく、小鳥や動物たち生き物全体の平和を意味しておられたと思います。

  私たち人類は、地球環境を神様から授かったように永久に保持するライフ・スタイルを作っていかなければなりません。この意味では私たちは保守主義者であるべきです。皆さんの中にも、犬や猫や小鳥やその他の動物を飼っている方々もあるでしょう。ぜひ、犬や猫だけでなく、あらゆる生き物、神が貸し与えてくださったこの地球と自然環境をも大事にするという考えへと広げて行ってくだされば幸いです。

  地球の歴史全体からすれば、年俸何億円の野球選手やサッカー選手、もてはやされるフィギャー・スケートやテニス選手も実に小さいものです。その年俸が何だと言えるでしょう。スポーツ界の1番が何だというのでしょう。

  サラリーマンも主婦も、また何かの専門分野で働く科学者、芸術家、教育者、ジャーナリスト、政治家、どんな人も地球の明日に対して柔和な人、優しい人とはどういうものかを考える社会が来て欲しいと思います。

  「被造物は、神の子たちの現れるのを切に待ち望んでい」るのです。神を心から信じ、真摯に被造物のことや地球の将来を考え、彼らを守っていく神の子たち、信仰者が出現することを真面目に待っているのです。キリスト者には何と光栄ある働きが期待されていることでしょう。地球の将来に影響を与えるこの素晴らしい期待に、どう答えていけばいいのでしょう。

  「柔和な人々は、幸いである。その人たちは地を受け継ぐ。」限りない将来にわたって、この美しい地球を受け継いでいくには、どうすればいいのでしょうか。


       (完)


                                             2015年1月11日


                                             板橋大山教会 上垣 勝



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