まっとうな生活


                          窓から見える村の風景
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                                                   一人のみどり子 (上)
                                                   イザヤ9章1-6節



                              (序)
  アドベント第1週を迎えました。今日から、明かりが1つずつ増えて、1週毎にクリスマスに近づいて行きます。今年のイヴ礼拝は、会堂が希望の光で満ち溢れる場になればと思っています。

                              (1)
  今日はイザヤ書9章の言葉を聞きましたが、ここは旧約聖書の中でイエス・キリストの胎動が聞こえる箇所です。胎動と言ってもまだ蕾は固く、蕾とも言えません。イエスはこれからまだ700年は待たねばなりません。だがその兆しがここに僅かに差しています。それは、「闇の中を歩む民は、大いなる光を見、死の陰の地に住む者の上に、光が輝いた」と述べられるからです。この9章1節はマタイ福音書4章で引用されています。

  もしかすると皆さんの中に、イラスト付きの聖書をお持ちの方があるかも知れません。Today’s English version と呼ばれている英訳聖書に施されたイラストです。その9章1、2節のページには、無数の人々が列をなして歩いていく光景が描かれて、女も男も、老人も子どももいます。彼らの頭上には、光源は見えないものの彼方から眩しい大きな光が1人1人に照っています。

  イラストは新しい将来を予告しています。イスラエルの民とも世界の民とも考えられる彼らは、急ぎ足で光の下を歩いて、新しい時代に向かっているという象徴的なイラストです。

  「闇の中を歩む民は」とか、「死の陰の地に住む者の上に」とありますが、イザヤ書8章までを見ると、民はいかに暗闇の中にいたかが分かります。1箇所だけ引用するにとどめますが、2章7節以下はこうあります。「この国は銀と金とに満たされ、財宝には限りがない。この国は軍馬に満たされ、戦車には限りがない。この国は偶像に満たされ、手の業、指の造った物にひれ伏す。人間が卑しめられ、人はだれも低くされる。彼らをお赦しにならぬように。」イザヤの預言です。

  当時のイスラエルは銀も金も財宝も溢れていました。溢れているから明るいかというと暗いのです。日銀が円をだぶつくほど発行して世界市場に円が溢れるほど出回りました。円は溢れて世は明るくなりましたか。暗いんじゃあないですか。軍馬やちゃちな戦車でなく、景気さえ良くなれば、最新鋭の戦車もミサイルも戦闘機も増やし、駆逐艦もということです。だが「人間が卑しめられ、人はだれも低くされる」とイザヤは語るのです。

  先週、非正規労働者の問題を多くの人が残って考え合いましたが、色んな人の発言から、一人では考えないことを色々と学ばせられました。政府は企業が元気になるように、企業が儲かるようにという考えで、次々政策を連発して来ました。だがその蔭で、多くの若者が非正規労働のため望んでも結婚できず、懸命に働いても当たり前の生活ができない状態に置かれています。当たり前とは、朝7時か8時に家を出たのですから、家には7時か8時に帰りたいです。イギリスにいた時、下宿先にイギリスの青年がいて勤めに出る前にギターを弾いているんです。今日はギターが聞こえないなと思うと、その日はプールに行ってから出勤です。そういうのが日本でも本来ならまっとうな生活でしょう。まっとうな賃金ももらって、結婚を望めば結婚もできる。それが当たり前というものです。だが、「人間が卑しめられ、低くされている。」悲しいじゃあありませんか。イザヤが活動した2700年前のイスラエルと今の日本の状況は無論違いますが、共通することも多くあります。

  そういう中で今日の聖書は、「闇の中を歩む民は、大いなる光を見、死の陰の地に住む者の上に、光が輝いた」と、希望の光があなた方の上に昇り、あなた方は必ず多いなる希望の光を見ると語るのです。人生に絶望するな。主はあなた方に味方し、必ずさやかに道をお示し下さると預言するのです。


         (つづく)

                                             2014年11月30日



                                             板橋大山教会 上垣 勝



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