教えることを生きようとしていなくっちゃあ


 写真のようなひさしの長いベランダが3面あります。そこからの安らぎのあるブルゴーニュの眺めは絶景です。
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                                                   自己を鍛えよ (上)
                                                   Ⅰテモテ4章6-10節



                                (1)
  昔、「カニ歩き」という子ども向けの本がありました。有名な本ではありませんが、お母さんガニが子どもに歩き方を教えます。まっすぐ歩きなさい、まっすぐだよと言って、子ガニたちに教えるのです。ところがどんなに頑張っても子ガニはまっすぐ歩けません。それで、とうとう子ガニたちが、「お母さん、まっすぐ歩いてみせて」と頼みます。するとお母さんガニは、「さあよく見ていて頂戴」と、姿勢を正し得意そうにまっすぐに歩きました。ところが子ガニたちが目にしたのは、お母さんの横歩きしている姿だったと言うのです。どうしてこれが子ども向けの本なのかよく分かりません。大人向けと思いますが。

  ただ、今日の箇所はこの話とどこかで関係しています。教育に携わる人たちも興味ある箇所です。6節に、「これらのことを兄弟たちに教えるならば、あなたは、信仰の言葉とあなたが守ってきた善い教えの言葉とに養われて、キリスト・イエスの立派な奉仕者になります」と書かれているからです。

  ただ、ここはむしろ、あなたがこの教えによって養われているなら、この教えを教え奉仕することができるというべきです。本来はそうだと思います。ところがパウロは逆転させて、あなたが教えるならそれによって養われると語るのです。鶏が先か、卵が先かのような論です。

  パウロは、教える時には、自分も教えたものによって養われたいという態度で教えなければならないと考えているのでしょう。教えるものによって、自らが作り変えられたいと謙遜になって教えよということです。謙遜なしに上から教え込み、叩き込むだけなら、教えるスキルがどんなに上手くても真の教育者ではない。ましてや真の信仰の指導者ではないということでしょう。

  テモテは青年伝道者ですから、人々に教える場面の多い伝道者は、どういう態度で生きるべきかを教えているわけです。教える者も教えられる者も、共に真理の下にあって教えられ、砕かれ、作り替えられたいと思う者である時、福音宣教は健全であります。だがそうでなければ、その教えは空しい。一般の知識教育でない信仰教育は特にそうです。

  「巧言令色少なし仁」です。言葉巧みに話す者には愛は少ない。稀だということです。人の本質が変わらない限り、21世紀の国際社会になっても古今東西において真理です。

  最初から難しそうな話になりましたが、今申し上げているのは、自ら教え導かれている者にして、初めて人を真に導くことができるということを言いたいのです。別の言い方をしますと、自分の心や存在を貫いた、自分の腹に落ちた言葉こそ人の心と存在、その腹にまで届くことができるということです。自分を貫いていない言葉はいかに飾り立てても虚しい。飾り立てれば飾り立てるほど空しくなります。

  信仰が知識のレベルや解釈のレベルで留まるのでなく、自分の血となり肉となり、それによって養われ、導かれ、それに励まされて日々を生きる。その時あなた自身が、主キリストのよい奉仕者、立派な奉仕者になると言うのです。

  パウロがこういうのは、イエスご自身がそう生きられたからでしょう。イエスは、自分の教えは自分自身の教えでなく、私をお遣わしになった方の教えであると言われました。イエスは、父なる神を見て、その御心を行なわれたのです。人生は誰を相手にし、何を仰いで生きるかが最も大事です。ですから私たちもその方から目を離さないのが大事です。

  日常、色んな人の姿や生き方が目に付きますから、それを見て溜息をついたり、怒ったり、ホッと安心したり、優越感を抱いたりします。だが一旦は他の人が目に入っても、また原点に戻り、イエスを仰ぎ見ながら生きる。パウロ彼自身、イエスの善い教えと言葉に養われて生きたのです。


          (つづく)

                                             2014年11月23日



                                             板橋大山教会 上垣 勝



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