喜びと感謝の生活


           クリューニー修道院のファブリの塔は14世紀の修道院長の名を冠する古いものです。
                                                   (右端クリックで拡大)
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                                                     食生活と信仰 (下)
                                                     Ⅰテモテ4章1-5節


                              (3)
  さて今日の聖書は、最後に、「彼らは自分の良心に焼き印を押されており、結婚を禁じたり、ある種の食物を断つことを命じたりします。しかし、この食物は、信仰を持ち、真理を認識した人たちが感謝して食べるようにと、神がお造りになったものです。というのは、神がお造りになったものはすべて良いものであり、感謝して受けるならば、何一つ捨てるものはないからです。 神の言葉と祈りとによって聖なるものとされるのです。」と語っています。

  惑わす者たちは、終わりの時が近いから、結婚は不要、禁止だと説いたのです。食べ物も、汚れた不浄の食物で体を汚してはならない。救われるために体を清く保て。終わりの時が近い。その時に備えて、清き、純粋な体を準備せよと説いた。

  彼らは終わりの日に備えて、食べ物や結婚、また性に対する禁欲を説いたのです。純粋になろうと禁欲を説いたのです。

  「彼らは自分の良心に焼き印を押されており」とは、良心に焼印が押したかのような宗教的確信を持って、純粋な、清い体を説いているからです。焼印を押したかのような宗教的確信犯です。そして宗教的確信を持って人を惑わし、悪霊的な霊力を持って人に迫るのです。だが、それは、「偽善である」、人に対する欺瞞だと語るのです。

  それに対しこの箇所が一番語りたいことは、「食物は、信仰を持ち、真理を認識した人たちが感謝して食べるようにと、神がお造りになったものです。というのは、神がお造りになったものはすべて良いものであり、感謝して受けるならば、何一つ捨てるものはない」ということです。

  これは創世記1章に7度出てくる、「神はこれを見て、良しとされた」という言葉を根拠にした発言です。

  キリスト教は物質界を軽視しません。ギリシャには霊肉2元論がありました。物質界を悪とし、精神界を善としました。しかし聖書は、物質など被造物は神がお造りになり、神が私たちに与えられた喜ばしい恵みであって、「感謝して受けるなら、何一つ捨てるものはない」と断言するのです。

  異教の教えは食物や性に対する禁欲を多く含みます。人は本能を持っています。この本能の故に人はしばしば逸脱して悪さをします。食欲、性欲、睡眠欲。権力欲もそうでしょうか。それが醜さとなって現れ、新聞の3面記事を賑わすのです。犯罪の裏に…スキャンダルです。

  そのために、この本能を断つことが崇高な宗教行為と見えることがあるので、禁欲は宗教につきものになります。キリスト教にも、仏教にも、神道にも、イスラムヒンズー教にも、その他、色んな宗教で禁欲主義が現れます。これは先程申しましたアウグスティヌスが生涯戦った相手、ドナティストの思想の中にありました。

  しかしテモテ書は禁欲主義を否定するのです。それによって、キリスト教信仰が別の所に行ってしまうのを避けるのです。信仰の目的は禁欲ではない。むろん貪欲でも、本能の追求でもありません。

  信仰は神への感謝である。生かされていることの感謝です。神に向けて生きることの心の平和であり、喜びです。「真理を認識した人たち」、すなわちキリストの真理に導かれた人たちは、神への感謝を持って食事を頂く。そして「感謝して受けるならば、何一つ捨てるものはない。」「 神の言葉と祈りとによって聖なるものとされる。」

  禁欲でなく明るい感謝です。暗さでなく、神を知った者たちの自由であり、解放であり、喜びの生活こそ大切であります。


           (完)

                                             2014年10月26日

                                             板橋大山教会 上垣 勝



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