希望のしるしがあります


                          チューリッヒの旧市街         (右端クリックで拡大)
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                                               神を賛美したサマリア人 (下)
                                                 
                                               ルカ17章11-19節



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  先ほど申しましたが、ハンセン病を病む人々へのイエスの愛が、歴史の中で救ライ運動を始める原動力になったのです。この出来事がなければ、もしかすればハンセン病の研究も治療薬の発見も、また撲滅ももっと遅れていたかも知れません。

  また特に心を留めたいのは、この出来事によって、イエスサマリア人、イエスと外国人との間に、民族や国境を越え宗教も超える関係が作られたのです。キリスト教が様々な国境を越え、民族も国も突破して広まっていく最初の一歩となったのです。それは世界平和への貢献の第一歩でもありました。

  夏になると、テゼのことをご紹介するのが多くなりますが、今日も失礼して少しご紹介します。

  6月から8月にかけて、夏には、フランスのブルゴーニュ地方にあるテゼのなだらかな丘に、世界中の青年たちが集まって来ますが、先週は、世界の67カ国に及ぶ国々から35才以下の青年たちがやって来ていました。30才を超えてもご安心ください。テゼでは35才以下は青年と呼ばれています。

  もちろん、欧米諸国や南米、オセアニアやアジア、アフリカなどに広がる数10カ国から、改革派、長老派、ルター派、バプテスト、イギリス国教会、メソジスト、私たちのような合同教会、その他、色々な教派のプロテスタントの青年たちとカトリックの青年たちが来ますが、他にもロシアやウクライナベラルーシセルビアポーランドバルト三国やその他の旧東欧諸国から、またギリシャ東方正教会の青年たちが来ました。ギリシャからはギリシャカトリックの青年たちも来ていました。(Br.アロイス)

  東方教会にはその他の教派もあって、中近東にはエジプトのコプト教会アルメニア教会、ヤコブ派教会、インドのマランカル教会と呼ぶのでしょうか、それにイラククルド人のチャルド派教会など、世界中の実に多様な諸教派の青年キリスト者が、今年もやって来たのです。東京ドームの5、6倍しかない、それほど広くない丘は、まさに青年の人種の坩堝と化しました。

  彼らはここで何をするのでしょうか。他国の青年たち、また他教派の青年たちとの出会いです。国を超え、民族を超え、異質な人たちとの出会いです。出会うことで、互いに変えられる喜びを知るのです。対立したり、批判したりするのでなく、考えの違う人たちがもっている宝物を、自分たちも発見するのです。

  私たちが教会に集まっていますが、ここにも色んな方がいます。自分の信仰の形が一番いいというのでなくて、それぞれに特別な仕方でキリストに出会ったわけで、それぞれの方は真理の断片を持っています。それに聞くのです。すると自分が知らなかったイエスとの出会い方があるのです。それを知って、自分は相対化されます。自分の信仰は絶対だという価値観から自由にされる。教会共同体というのはそういう素晴らしいところです。

  テゼでは、歴史や文化や伝統は違うが、主イエスによって1つにされていることを喜び、イエスによって地の塩、平和のパン種とされた青年たちが、今の時代を地の塩、平和のパン種としてどう生きるかを考え合うのです。何に人類は希望を置けばいいのかを考えるのです。これは始まりに過ぎません。祖国に帰ると、地元でそれを証し、インターネットで国境を越えて連帯を深めるのです。テゼのテーマは、「和解と信頼を創り出すこと」です。

  今日、世界には東西問題があり、南北問題があり、世界には様々な誤解が支配し、深い分裂をもたらしています。危機感を煽り、報道がそれを掻き立てたりもしますが、これほど多くの青年が、地の塩として、平和のパン種として世界中から集まって考え合っていること自体が、絶望に対する強い抵抗となり、希望の徴を生み出すものとなっているのです。

  そしてこの希望の源は、国境も民族も2千年前に超えていかれたイエス・キリストです。分裂や対立や込み入った誤解を超えて、イエスは愛において異邦人、外国人を癒し、肉体の癒しだけでなく、その魂に喜びと平和を授けられた。ここから和解と信頼を創る業が、平和を作り出す業が始まったのです。

  2千年前にハンセン病者に起こった出来事が、今日の世界の67カ国の青年たちの、異質な者との出会いとなるまでに発展しているのです。私たちは、神のみを賛美したいと思います。


          (完)

                                       2014年8月31日


                                       板橋大山教会 上垣 勝



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