朝毎に自分を乗り越えるために


              テゼの友人夫婦―ポルトガル人とドイツ人―彼らはテゼで出会ったカップル。
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                                                   赦してやりなさい (下)
                                                   ルカ17章1-4節



                              (3)
  イエスの話は更に展開して、弟子たちに、「あなたがたも気をつけなさい。もし兄弟が罪を犯したら、戒めなさい。そして、悔い改めれば、赦してやりなさい。1日に7回あなたに対して罪を犯しても、7回、『悔い改めます』と言ってあなたのところに来るなら、赦してやりなさい」 と言われました。

  「気をつけなさい。もし、兄弟が罪を犯したら…」とは、たとえ弟子たち、使徒達であっても、罪を犯すような事が起こるのを知っておられたからでしょう。それ程、罪は私たちの中に深く根を張っていてしつこい。抜いても、抜いても、罪の根は深く伸びていて、また次の日に芽を出してくるのが罪の力です。

  「もし兄弟が罪を犯したら…。」ここから争いが始まります。だから、その元の所で、どう手当するかが大事です。そこを丁寧に手当しないと、争いの火の手が大きくなります。「泥棒にも3分の理」と言います。理屈をこねます。昔、砂川事件というのがありました。その時、有名になったのが伊達判決でした。その伊達裁判長は後に弁護士になりましたが、多くのことを経験して、「人間は、必死に罪から逃げようとする」存在だと語っています。触れられたくない事を死に物狂いで隠し、本当の事を吐こうとしないのです。罪を犯す背後には必ず理屈があるのです。恐ろしいことですが、それは個人の犯罪から、国家が犯す犯罪に至るまで妥当するのです。

  イエスは、「もし兄弟が罪を犯したら、戒めなさい。そして、悔い改めれば、赦してやりなさい。1日に7回あなたに対して罪を犯しても、7回、『悔い改めます』と言ってあなたのところに来るなら、赦してやりなさい」と言われるのです。

  これが、争いが複雑にコングラがり、解決の糸口が見出せなくなる争いの火を鎮めるのに必要なことだというのです。いや、火は鎮火しないかも知れない。だがあなたはそうしなさいと言われるのです。「あなたの天の父が完全であられるように、あなたも完全な者となりなさい」とありますが、相手と同じ次元に立たず、相手の次元を超えて生きるためです。「1日に7回あなたに対して罪を犯しても、7回、『悔い改めます』と言ってあなたの所に来るなら、赦してやりなさい。」これが、弟子たちに語られた紛争を超えていく「赦し」の手立てです。

  ただ1つ、気になることがあります。これは、「『悔い改めます』と言ってあなたの所に来る」場合ですが、現実はもっと複雑で、悪かった、悔い改めますと言って来ない人が多いのですね。いや、謝らないばかりか、こちらの責任だと言ってはばからぬ厚かましい気の強い人さえいます。

  そういう人に、こちらは謝るべきか。また、責任を取らぬ人にどうすればいいのかです。

  答えは簡単ではありませんが、そういう腹の立つ、難しい状況があるからこそ、私たちはキリストにその苦労や重荷を委ねる必要があるのです。「戒めなさい」と言うのですから、戒めるのです。戒めることを避けちゃあならない。しかしその後は神に委ねるのです。そうでないとストレスや重荷が酷くなり、それが嵩(こう)じれば、カッとなって、とんだ反撃に出てしまう場合があります。

  旧約聖書は人間の罪の姿を明らかにしています。そこで書かれているのはイスラエル人の罪だけでなく、人類の罪の姿です。詩篇137篇は、自ら気づかずにその罪の残酷な姿を書き留めています。「娘バビロンよ、破壊者よ。いかに幸いなことか、お前がわたしたちにした仕打ちを、お前に仕返す者 、お前の幼子を捕えて岩にたたきつける者は。」敵の幼子を捕えて岩の上に叩きつける。何と残虐な仕返しでしょう。重荷をキリストの前に下ろさなければ、恐ろしい、とんでもない報復もしかねないのが私たち人間なのです。

  私たちがこの世界で目にしているのは、常にではないが、往々にして憎しみと暴力の込み入ってしまった状態です。そのような状態の中で、私たちはどうするのかです。

  キリストは平和の人でした。復活したキリストは、弟子たちに、「あなた方に平和があるように」と語って平和を与えられました。私たちの信じるのは平和の神です。「1日に7回あなたに対して罪を犯しても、7回、『悔い改めます』と言ってあなたの所に来るなら、赦してやりなさい」と勧められたのは、キリストに堅く信頼し、その信頼をもって、赦す人に、平和の人になる勇気を、引き出すように願っておられるからです。

  私たちは、朝毎に繰り返してキリストに信頼していくことなしに、「自分は絶対正しい、あなたが間違っている」と主張して傷つけて来る人たち。そのような主張によってなされる激しい攻撃を、乗り越えることは難しいと思います。いや、不可能です。

  朝毎に新しくキリストに信頼していく祈り。朝毎に新しくキリストに自分を委ねる祈り。そこに、私たちが赦しという新しい一歩を踏み出す秘密の力、秘密兵器が隠されてあります。

        (完)


                                       2014年8月10日


                                       板橋大山教会 上垣 勝



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