喜びは手元にあります


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                                                   喜びは手元にあり (下)
                                                   ルカ6章20-23節



                              (3)
  それは、先ほど触れましたが、20節で言っておられるように、「神の国はあなた方のものである。」ここにその根拠があります。あるいは、23節にあるように、「天には大きな報いがある。」そこに幸いだと言われる理由と根源があるという事です。

  神のご支配の下にあること。この信頼や信仰のあるなしで、全く逆のことを思わせ、全く違う行動を取らせるのです。

  先程も申しましたように、イエスは貧しさや飢えを勧められません。そんなことは決してされない。だが、イエスにあっては、いかなる不幸も不幸ではないのです。いかなる貧しさも飢えも、人を押し潰すことは出来ないのです。そういう断固たる主体性を作っていかれるのです。「神の国はあなた方のものである。」そこから、非常に強い主体が生まれるのです。

  普通なら不幸だ、逆境だと考える状況の中で、イエスの言葉は、喜びを持って生きる主体を私たちの中に生み出していきます。貧しさにも、飢えにも、抗っていく、力強くしたたかに生きる力を生み出して下さるのです。

  「人々に憎まれるとき、また、人の子のために追い出され、ののしられ、汚名を着せられるとき、あなたがたは幸いである。 その日には、喜び踊りなさい。天には大きな報いがある。」何と逞しい、喜びに満ちた主体でしょうか。選んだ弟子たちに、その直後に語られるにふさわしい言葉です。涙を笑いに変え、飢えを吹き飛ばし、力強く満腹にするような主体を作る言葉です。

  ここにも、先ほど言いました、「明珠(みょうじゅ)在掌」、宝物は既に手のひらにあり、「喜びは手元にあり」というものがあります。既に、神の御国は来ていると言って良いでしょう。神の国の実体というか、最後的な神の国の支配はまだですが、必ず来ますし、既に神の国の影響の下にその予兆である喜びが訪れています。

  なぜ喜びがあるか。それは、神の国の方から貧しい者や飢えている者に光が当たっているからです。こちらからでなく、向こうから光が差している。その光に照らされて見ているのです。

  神の国は前方で私たちを待っているのです。それは地上の国や政治や思想を越えて、やがて神が来らせてくださる国であり、神の最後的決定的なご支配です。既にイエスによって、神の国は近づいていると語られました。ただ、イエスにおいて既に来ましたが、まだ完全には来ていません。だがそちらから、終末的な希望の光が差している。それを信じる者は、望みによって既に救われているのです。

  イザヤ書40章にこうあります。「イスラエルよ、なぜ断言するのか。わたしの道は主に隠されている、と。わたしの裁きは神に忘れられた、と。」イスラエルよとは、信仰者よと言い換えてもいいでしょう。なぜ、神は私のことをご覧になっていない、私の苦しみを、私の叫びをお聞きくださらないと言うのか、と語るのです。

  そう語って次に、「あなたは知らないのか、聞いたことはないのか。主は、とこしえにいます神、地の果てに及ぶすべてのものの造り主。…疲れた者に力を与え、勢いを失っている者に大きな力を与えられる。若者も倦み、疲れ、勇士もつまずき倒れようが、主に望みをおく人は新たな力を得、鷲のように翼を張って上る。走っても弱ることなく、歩いても疲れない。」

  貧しい者も、弱っている者も、飢えている者も、今泣いている者も、「神の国はあなた方のものである」ということが、信仰者や人々の主体的な事実になる時、自分の存在の根底からの事実になる時、新たなる力を得、比喩的ですが鷲のように翼を張って上がるのです。走っても弱ることなく、歩いても疲れないのです。

           (完)

                                       2014年7月6日


                                       板橋大山教会 上垣 勝



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