希望の芽が含まれています


                     高原の原野で咲き乱れる花たちに魅了されました
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                                                種まきの譬えから考える (上)
         マルコ4章1-20節
         

                              (序)
  ガリラヤ湖は波静かで、今もパレスチナ地方の何百万人かのほぼ唯一の水源です。岸辺に立つと、小魚が群れて時々腹をキラッと銀色に輝かせて泳ぐのが見えます。遥か彼方に見える対岸はゲラサの町の辺りです。

  「イエスは、再び湖のほとりで教え始められた」とあります。湖面を渡る風は柔らかく頬をなぜ、砂浜の静かな風景を気に入っておられたのか、この岸辺でよく話されたようです。

  この日も、「おびただしい群衆がそばに集まって来た」のです。6章に、5つのパンと2匹の魚で5千人の人たちを養った話があります。「おびただしい群衆」とは、数千人の群衆であったでしょう。大人も若者も、男も女も、一人で来た者も、仲間や家族連れで来た者もいたでしょう。

  すると、「イエスは舟に乗って」岸を離れ、群衆は湖畔に集まり、イエスは舟の中で立ち上がって、岸辺の彼らに色々と教えられたのです。

  スピーカがない時代に、よく声が届いたと思います。ただ、そよ風が陸に向かって吹く時間帯なら、かなり遠くまで声は届くでしょう。群衆の背後に丘があり、ローマの野外劇場に似た地形なら、尚さら声は届いたでしょう。実際この辺りは、ゆるやかな丘が湖に沿って傾斜しており、声がよく響くかもしれません。季節には丘は麦畑で一面覆われます。

  イエス様が語り出すや、ガヤガヤしていた群衆は水を打ったように静まり、大人が聞き耳を立てて静まるや、子どもらもシーンとなって、誰一人話す者がいなくなったのです。

  イエスは神と神の国について、また重荷を負う者や悲しみを抱えた者らがどう生きればいいか、苦しみを抱える家族をどう担えばいいかなど、色々と教えられたのです。むろん今の聖書に書き留められなかった話もあったでしょうが、その幾つかが4章に記されたのです。

                              (1)
  イエス様は種まきの譬えをされました。ある種は道端に、ある種は石地に、ある種は茨の中に落ちたが、いずれもうまく育たなかった。だが、大半の種は良い地に落ち、30倍、60倍、100倍になったという譬えです。そう語って、「聞く耳のある者は聞きなさい」と言われたのです。

  農夫は種をカゴに入れ、手で畝(あぜ)に蒔きます。その様子はイザヤ書28章に記されていますが、ミレーの種まきの仕方とは違います。農夫は道端や石地や茨の地に蒔く筈がありません。彼は多くの実りを願って良い地に蒔くために出かけたのですが、蒔いているうちに幾らかが別の地に落ちたのです。道端などに落ちたのは、農夫の思いではありません。また、4粒の種が、1つは道端に、2つ目は石地に、3つ目は茨の地に、4つ目は良い地に蒔かれたというのではありません。彼は良い地に蒔きに出かけたのです。

  譬えの中心は、種が育つのは難しいということでなく、多少の種は無駄になるが、まかれる種の殆どは必ず良い地に蒔かれ、多くの実を結ぶという事でしょう。種まきはイエス様です。イエスが蒔かれる御言葉の種は、必ず最後的に、終末には豊かな実を結ぶというのです。ここにあるのは、神のなされることへの絶対的な信頼であり確信です。

  次のように考えてもいいかも知れません。歴史の進み具合は紆余曲折して進むので、私たちの意に沿わないことが起こり、悲観的に見える時期もあります。だが悲観的になる必要はないのです。アジアの一角や、中東の一角で、局地的に野蛮なことや時代遅れのことが起こっても、局所的なことを、全体と取り違えてはならないのであって、時代を全体の流れで、巨視的な目で大きく捉えなければならないのです。そうすれば神が導かれる歴史の中に必ず希望の芽が含まれていることが見えてきます。

      (つづく)

                                        2014年6月29日


                                        板橋大山教会 上垣 勝



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