小石ひとつ地に落ちない
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小石ひとつ地に落ちない （下）
アモス９章１－１５節
（３）
次に８節以下で、「見よ、主なる神は罪に染まった王国に目を向け、これを地の面から絶たれる。ただし、わたしはヤコブの家を全滅させはしないと、主は言われる」とあり、更に「見よ、わたしは命令を下し、イスラエルの家を諸国民の間でふるいにかける。ふるいにかけても、小石ひとつ地に落ちないように」とあります。
「罪に染まった王国」とはイスラエルの王国です。具体的には南のユダ王国ですが、これを地上からぬぐい去るという事です。そう語りながら、「ヤコブの家を全滅させはしない」と、主なる神ヤーウェが宣言されると言うのです。
国は滅ぼすが、民を全滅させない。国家はなくなるが、個々人は全てを滅ぼし尽くさないということです。
じゃあ、どうするのか。それが９節の言葉です。「見よ、わたしは命令を下し、イスラエルの家を諸国民の間でふるいにかける。ふるいにかけても、小石ひとつ地に落ちないように。」
アモス書９章の中心はここにあると思います。神は必ず地上に介入し審判される。逃れうる者はない。だが、全滅させることはないのであって、篩（ふる）いにかけ、小石一つ地に落ちないようにする。即ち厳しい審判にも関わらず、残りの民を必ず残す。残りの民です。イスラエルで最も小さい者とされる人たちも、神は地に落ちないように守り支える。
主は篩（ふる）いにかけられるのです。だが、篩いにかけて選びの民を残すのです。たとえ小石のように見られ扱われている人も、最後に残されるのです。
人々がクズと見なす者にも主は御目を留めて残される。人の思いと神の思いは異なります。「天が地よりも高いように、わが道は、あなたがたの道よりも高く、わが思いは、あなたがたの思いよりも高い」（イザヤ５５章）とある通りです。それが万軍の主の、この世への介入ということでもあります。
「わが民の中で罪ある者は皆、剣で死ぬ。彼らは、災いは我々に及ばず、近づくこともない、と言っている」とあります。だがイエスは、「私は見えると言い張る所に罪あり」とヨハネ福音書９章で言われました。私たちは謙り、神の前に真に謙虚にならなければならない。救いは、人の思いとは異なります。ローマ法王が決めることではない。無論、プロテスタントの教会も日本キリスト教団常議員会も決して決めうるものではない。
ただ主なる神様のみがお決め下さる。そこに主の栄光があり、私たちの喜びがあります。更に、人間は誰も、「災いは我々に及ばず、近づくこともない」と言うことはできない。神を恐れなければならない。「汝ら静まりて、我の神たるを知れ」なのであり、「神の求めるいけにえは、打ち砕かれた霊。打ち砕かれ、悔いる心を、神よ、あなたは侮られません」（詩編５１）とある通りです。
神の目に適わぬ者は全て地上から取り除くと言われるのです。だが同時に、小石一つ地に落ちることはないとも言われます。「天網恢恢、疎にして漏らさず」（老子）はこの聖書の意味においては、然りです。神のみ心は粗くして、実にキメ細やかです。
まるで一粒のからし種ようです。地上でどんなに小さく目に止まらず、馬鹿にされても、神の前では用いられ、やがて野菜の中で一番大きく育ち、空の小鳥が来て巣を作るほどになる。神は不思議なみ手をお持ちで、神様の手の中で私たちは作り変えられ、用いられていくのです。
最後に１１節以下で、イエスラエルの回復が述べられます。やがてキリストが来られることによって起こる終末的な回復です。しかし回復は回復ですが、かつてと同じイスラエルではありません。篩（ふる）いにかけられたイスラエル、悔い改めたイスラエル、新しく生まれ変わったイスラエルです。前と全く同じイスラエルになるのなら、どうして回復するに値するでしょうか。
（完）
２０１４年５月２５日
板橋大山教会 上垣 勝
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