初めて光が差した精神的な言葉


                            仲のいい姉と弟
                               ・


                                         あなたの道に光がさす (中)
                                         詩編119篇89-112節
                                         ヨハネ福音書8章12節



                              (2)
  そして105節、今日の中心聖句に入ります。「あなたの御言葉は、わたしの道の光、わたしの歩みを照らす灯。」もう意味は明らかでしょう。

  神のみ言葉、聖書とキリストの御言葉は私の道の光、私の歩みを照らす光だと言うのです。

  神のみ言葉は暗夜の灯火(ともしび)のようです。夜の真っ暗闇はたとえ慣れた道でも寂しく、心もとなく、恐怖感に襲われます。今では夜の真っ暗闇を歩くことは殆どなくなりました。山村や過疎の村では暗闇の中を歩く時があるかも知れませんが、地方でも町に行けば殆ど暗闇はありません。

  今は懐中電灯がありますが、戦後まもなくは真っ暗闇の夜道を行く時も明かりはありません。ですから、小さい明かりでもあれば非常に心強くありました。

  「あなたの御言葉は、わたしの道の光、わたしの歩みを照らす灯。」人生の暗夜を行かねばならぬ時は、御言葉が道の光になるのです。歩みを照らす灯(ともしび)になります。御言葉に励まされて一歩一歩進んでいく。すると恐れが薄れるのです。御言葉を噛み締めると勇気が湧きます。御言葉との交わり、キリストとの交わりが希望を与えるのです。

  イスラエルの民は40年にわたって熱暑で乾燥した、苛酷な砂漠を旅しました。荒野の40年。それは厳しい試練の時代でした。だが、それがあったからイスラエルの民は世界で意味を持つ存在になったのです。試練の中でモーセ十戒に励まされると共に、鍛えられ、昼は雲の柱、夜は火の柱によって導かれる経験をしたからです。十戒といい、雲の柱、火の柱といい、それらは神のみ言葉であったと言ってもいいでしょう。

  キリスト者とは、「人はパンのみで生きるにあらず。神の口から出る一つ一つの言葉で生きるものである」という人間だと言っていいでしょう。神の言葉をわが命として、日毎の糧として生きる者。そのようにして人生の荒野も神の言葉に養われて旅する人間です。

  私は青年時代、希望も自信も失ってしまいました。色々な意味でそうでした。そうした中、去年お招きした関田先生の言葉に希望を見出したのです。ある日の午後、会堂に座りながら、キリストによって必ず光があること、明日に希望が与えられることを諄々と説いて下さり、慰められ、力を与えられました。行き詰まりの中で、眩しい光が私の道に差し込み、パッと未来が開けた気がしました。

  「だれでもキリストにあるならば、その人は新しく造られた者である。古いものは過ぎ去った、見よ、すべてが新しくなったのである」とコリント後書にありますが、「見よ、すべてが新しくなった」という思いでした。あの時、先生はもしかすると105節を思い描いておられたかも知れません。人生で私の心に光が差した、初めての精神的な言葉でした。

  今から思うと、私は卑しめられていたのでなく、私自身を卑しめていました。「主よ、御言葉のとおり、命を得させてください」とありますが、先生を通し、神が私のような者を正しく取り扱い、命を得させて下さることを知ったのです。それが私に喜びと自信を回復させてくれました。

  人生は険しい道を通ったり、道なき道を行ったり、いい気になっていると落とし穴に嵌ったり、行き詰まりのような所に行ったりします。「神曲」で有名なダンテは、反逆罪に問はれ、投獄され、35才で失明しました。神曲の地獄編の出だしで、「人生の旅路半ばに、私は暗い森の中にさまよいこみ、まっすぐな道を失った。あの野蛮な、苛酷な、密林のことを語るのは何とむつかしいことだろう。そのことを考えるだけでも私の恐れはよみがえる。死の方がましと思えるほどひどいものだった」と当時のことを告白しています。血ヘドを吐くような日々だったのでしょう。

  彼は失明し、死の方がましと思える逆境の中で、永遠の名著を書くのです。それは、「あなたの御言葉は、わたしの道の光、わたしの歩みを照らす灯」となったからです。


       (つづく)

                                      2014年4月13日


                                      板橋大山教会 上垣 勝



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