最優先課題は対話です


               ビュールレ作「ルビック伯爵と娘たち」。チューリッヒ市立美術館で。
                               ・



                                             雄々しく戦う (下)
                                             Ⅰテモテ1章18-20節


                              (4)
  先週の夕刊に、米谷(こめたに)ふみ子さんというアメリカに50年以上在住する日本人作家で画家である方が寄稿していました。「目覚めよ!75歳以上の年寄り」という題で、お読みになった方もあったでしょう。長く在米でありながらだいぶ前に芥川賞を取り、話題になりました。今、85才ほどの方です。

  この方は、アメリカの知識人は今、日本の首相は、憲法を変え、強い軍隊を作りたいと考えて警戒していると言うのです。これは私の知る限りイギリスでも同じです。ショックかも知れませんが、安倍首相は好戦的な、右翼思想の持ち主と見られています。日本の新聞は右翼とは決して書きません。だが海外の知識人はそう見ている。世界の色々な国のリーダーを見ながら、日本の首相はどう言う部類に属するかを客観的に見ているのです。日本は今、歴史のどの辺にいるか、(特に新聞記者などは自己保身的にならず)よく考えなければならないと思います。

  去年、麻生外務大臣は、第2次世界大戦前にナチスが国民に気づかれぬように、密かに憲法を変えていった手法を学ぶべきだと発言しました。外務大臣がこんな発言をして辞めさせられないのが今の日本です。

  尖閣列島問題、竹島問題、従軍慰安婦問題、A級戦犯を祀る靖国神社への参拝、大変な偏見を持つ人物たちをNHKに送り込み、教科書を右傾化させ、特別秘密保護法を制定し、平和憲法さえ変えようとしている訳で、澄んだ目で見れば誰が見ても右翼です。ここにあるのはアガトス・曇りなき良心でなく、意図的・作為的な心です。

  巨大地震が首都圏を襲ったら何万人の死者が出て、大混乱になるなどと言っていますが、本当に恐れるべきは地震ではありません。もし中国と全面戦争をすれば地震どころの騒ぎでなく、日本人も中国人も数百万人が死ぬでしょう。長引けば数千万人が死ぬかも知れません。だが、戦争というのは地震よりももっと対策を立てうるものです。中国や韓国の出方を待つのでなく、こちらから出かけて行って、積極的に対話し、友情と信頼に満ちた関係を作ろうとし、戦争を回避しなければならない。それが今、日本の政治家がなすべき最優先課題です。我が家もこれが最優先課題ですね。皆さんもですって?

  ところが憲法を変えたいために、作為的に敵を作っている。そこに諸悪の根源があります。

  アメリカもイギリスも欧米諸国もアジアの国々も、日本にそれを一番期待しているのですから、対話を後回しして良い筈がありません。だが、聞いても聞かぬふりです。歪んでいます。

  大多数の人は今の日本の状況はおかしいと思っています。だが、なぜか止めることができない。一方的な考えで歴史を修正する。異常な発言をする人たちが次々出てきているのに、辞めさせられない状況。実にもどかしさを多くの人が感じていますが、どうにもできない。これは、昭和の戦争前の状況に益々似てきているから怖いと思います。こんなことを思っていたら、数日前、山田洋次監督が、「危険な方向に進んでいるのは、皆分かっているのに、誰も止めることができない」と憂慮していました。同感です。

  米谷さんも、もし日本が軍隊を持って戦争になれば、内地でも戦場でも人が何百万と死ぬと警告していました。地震どころではないのです。ところで、この方は、戦争を覚えているのは75才以上の人だから、75才以上の年寄りは目覚めなければならない。マスコミで働く若い人たちでさえ戦争の実態を全く知らないのだから、75歳以上の者は戦争の残酷さを語らなければならない。あれほど酷い体験をしたのだから、戦争の残酷さを語っておかなきゃあならない。いわば置き土産ですよ。それが自分たち老人の責任であるとハッパをかけておられました。遠くアメリカから実によく見ておられると思います。

  今日は都知事の投票日ですが、まだ行っていない方は、誰に投票するかをよく考えて行っていただきたい。子や孫のために、ああしまった、痛恨に耐えないと思うことにならないように、日本の将来に向け、アガトス、「正しい良心」の一票を投じましょう。

  下心を持たず、秘密を持たず、透明であり、内面の良さを備え、良心的に生きること。積極的平和主義というような言い回しで、人を騙すようなあり方は、その心がアガトスではない。

  秘密を持たず、できるだけ透明であり、内面の善さを備え、良心的に生きる。聖書に基づけばいいのです。そうすれば日本の将来は明るいのです。

  反対に正しい良心を捨て、下心を持ち、秘密を多くつくり、国民を作為的に騙すような人たちが日本を導くようになると、今日の聖書が警告するように、やがていつか必ず「挫折」します。都民だけでなく、日本全体を挫折させることになるでしょう。

  ある音楽家の言葉を思い出します。キリスト者で阪井和夫さんという全盲のピアニスト、作曲家です。佐村何とかいう全聾とか自称している人ではありませんよ。高校時代に目の手術をし、心臓を悪くした。大好きだった野球選手として出場できなくなり、ベンチに座ってスコアをつけたり、補助をしたりしかできなくなった。その時、人の気持ちが分かるようになった。これまで、ベンチにいる人のことなど何も考えずにプレーし、選手として自分のことばかり考え、前ばかり見て、それ行け、それ行けと競っていた。だが、ベンチにいるようになって、自分の醜さが見え始めた。人間が見え始め、その醜さを知った。

  リーダーになる人は、自分の行っている醜さ、偽りが見える人でなければなりません。また、見えているのにそれに目をつむって、正しい良心を捨てて行く人であってはならない。最初に申しましたように、今日の聖書は、単に信仰のことだけでなく、私たちの人間としての生き方や社会のあり方、更に国のあり方にも光を照らしています。

  イザヤ書24章は、「私は災いだ。欺く者が欺き、欺く者の欺きが欺く」と語っています。日本は盧溝橋で嘘の事件を起こして諸国を欺いて戦争を始めたのです。平和交渉で相手の目を逸らさせながら、見つからぬように、波静かな真珠湾を人間魚雷で突如攻撃して太平洋戦争に突入しました。全くの欺きです。欺きで欺き、欺く者の欺きが欺くというような国に、再びなって欲しくないのです。

  パウロが若き伝道者に語る今日の言葉は、ヨハネ8章のイエスの言葉ともダブります。「私の言葉の内に留まるなら、あなた方は本当に私の弟子である。あなたたちは真理を知り、真理はあなたたちを自由にする。」

  真理こそ最後的に勝利します。人間がいかに画策しても、いかなる者も神の真理に立ち向かうことはできません。真理こそ最後的に繁栄をももたらします。

  イザヤ書40章も語っています。「肉なる者は皆、草に等しい。永らえても、全ては野の花のようなもの。草は枯れ、花はしぼむ。主の風が吹き付けたのだ。草は枯れ、花はしぼむが、私たちの神の言葉はとこしえに立つ。」

  忍耐がいるでしょうが、キリストの言葉を心に深く刻み、御言葉に堅く留まって生きていきましょう。信仰と正しい良心です。どんな魂をも赦し救って下さるキリストの真実。偽りや欺きでない良心を持って、雄々しく戦いましょう。

           (完)

                                      2014年2月9日



                                      板橋大山教会 上垣 勝



  ホームページは、 http://www.geocities.jp/itabashioyama_ch/

  教会への道順は http://www.geocities.jp/itabashioyama_ch/img/ItabashiOyamaChurchMap.gif


                               ・