愛を目指す


            オールド・シティから見たSt.ピーター教会。時計は直径8.7mヨーロッパ最大。                                       
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                                             愛を目指す (中)
                                             Ⅰテモテ1章3-11節


                              (2)
  そこでパウロは、自分のこの命令は、「清い心と正しい良心と純真な信仰とから生じる愛を目指すものです。ある人々はこれらのものからそれて、無益な議論の中に迷い込みました」と書きました。

  彼は単なる命令や戒めをテモテに託したのでなく、キリストに基づく愛を目指し、愛の実現に向けて歩む確固とした教会がエフェソに生まれることを彼に託したのです。「愛を目指す。」これが最も大切な、一番大きな目標です。私たち大山教会もこれを目指していると言っていいでしょう。

  「清い心と正しい良心と純真な信仰とから生じる愛を目指すものです。」ここにある「清い心、正しい良心、純真な信仰」という言葉は、いずれも大変適切な言葉です。これらの形容詞はキリストの教会のリアリティを的確に表現しています。

  神への愛、キリストへの愛。み言葉への愛。そして兄弟姉妹への愛。それらは清さと、正しさと、純真さを持って進められるものです。

  パウロはコリント前書13章で、神が下さる霊的な、聖霊の賜物について書き、信仰と希望と愛はいつまでも残ると記しました。信、望、愛の3つの賜物です。信仰は、神が自分のような罪に満ちた愚かな過去の歩みをして来た者をも義として下さる事への感謝です。地獄に落ちるべき者が赦され、赦されただけでなく神に義とされた喜びです。過去がすっかり受け入れられた。次の希望は、このような者にさえ授けられる将来の約束です。地獄に落ちるべき者が救いに入れられるのです。そして最後の愛は、今のこの現在を神が共にいて下さると確信しての歩みです。愛は、今のこの時を大事にして、昨日にでなく、明日にでなく、今日に力を尽くすことです。そして、これら3つのうち最も大いなるものは愛だと書きました。

  教会は、最も大いなるものと言われているこの愛を目指すのだと彼は語るのです。すなわち、教会の信仰はキリストの愛から目を離すな、愛に基づく隣人愛に生きよというのです。過去に生きるのでなく、将来に生きるのでなく、今に生きるのです。今をしっかり生きることが将来となります。今を飛ばした将来は真の将来を産みません。今を生きず、過去と将来にだけ目を向けていてはならないのです。

  建設的な議論があります。そういう議論を日中韓でぜひして欲しいと思います。本当なら特定秘密保護法について、もっともっと議論を深めてもらいたかったと多くの国民が思っています。今朝チラっと見ましたら、75%程の国民が審議不十分だったと思っています。生まれましたが、未熟児でモンスターが生まれた。

  マンデラ元大統領が95歳で先週、天に召されました。「人類は言語で言い表せない悪を生み出す。だが、我らこの人類は、同時にその悪を贖う恵みとして、いかなる悪も征服できぬことはないということを証明する人たちを生み出す力を持っている。そのような人たちの中で、このおびただしく血に染められた20世紀を通して、マンデラ・ネルソン以上に注目すべき、またいつまでも残る人物は存在しなかった。」イギリスの新聞の社説は昨日、こう書いていました。

  「成し遂げるまではいつも不可能に思える。」マンデラさんの言葉です。含蓄があります。アパルトヘイト撤廃運動を率い30年でしたか獄中生活を強いられ、後に大統領になった。イギリスのサッチャー元首相は、「あれはテロ組織だ」と撲滅を公言していたのです。だがアパルトヘイトをなくして人種の融和を実現し、ノーベル平和賞を受賞し、今イギリス人が最も尊敬する人物の一人です。それを知ると、この言葉は実に含蓄があります。また、「勇気とは、恐れがないことでなく、恐れを越えていく勝利の確信であることを私は学びました」とも語りました。まずい訳で申し訳ございまっせんが味わい深いですね。

  また、「自由であるとは、単に自分の鎖を投げ捨てることではない。そうではなく、他者の自由を尊重しそれを増進するように生きることである。」秘密保護法を強行可決させた人々とマンデラさんの信仰から出るこの言葉を比較すると、天地の差があります。一方は死の冷たさがあり、他方は命の豊かさと暖かさです。マンデラさんの発言と行動はいずれも愛を目指すものであり、愛に満ちていました。だから400年続いたアパルトヘイトに勝利したのでしょう。

  パウロがここで語るのもそれです。愛を目指すこと。愛こそ、社会も国も世界も教会も造り上げるものです。国と教会の徳を高めるのは愛です。それと反対に、無益な、不毛な、ただ一方的な押しつけの議論。そこに迷い込んでしまうと社会も教会も建ちません。それは、十字架について血を流しておられるキリスト、その高価な恵みの犠牲を甘く見くびっているからではないでしょうか。

          (つづく)

                                       2013年12月8日




                                       板橋大山教会 上垣 勝



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