弟子を大量生産しない


              Anna Voegtlin の火あぶりの刑。彼女は魔女として裁判にかけられました。
  刀で脅され、魔女だと告白して火刑に処せられました。1447年。(チューリッヒ国立博物館
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                                           自己否定の正しさ (上)
                                           ルカ14章25-27節



                              (序)
  今日の箇所は、「大勢の群衆が一緒について来たが、イエスは振り向いて言われた」とありました。これは先週の議員の家での食事の話に続いて起こったのか、別の日の事かはっきりしませんが、そこでの食事はいつ終わるか分からないわけで、大勢の群衆がずっと外で待っていたとは考えられませんから、むしろ別の日、別の場所のことでしょう。

  その日とか、別の日とか大切そうに申し上げましたが、イエスのこの場合そんなに大事でないかも知れない。しかし猪瀬知事の場合は大事になるでしょうね。5千万円で問題になっていますが、彼は1億5千万円を要求していたとも言います。もしオリンピック招致決定前に問題が発覚していたら、東京に決まらなかったかも知れません。

  それはここまでにして、イエスは今日の所で、振り向いて彼らに、「もし、だれかがわたしのもとに来るとしても、父、母、妻、子供、兄弟、姉妹を、更に自分の命であろうとも、これを憎まないなら、わたしの弟子ではありえない。…」と言われたのです。

  弟子の条件を言われたわけで、家族との訣別さえ含む極めて厳しい言葉です。弟子は中途半端であってはならないということでしょうか。

  先週学びました大宴会の譬えでは、家の主人が僕に、「町の広場や路地へ出て行き、貧しい人、体の不自由な人、目の見えない人、足の不自由な人をここに連れて来なさい」と言ったとありましたし、後には、「無理にでも人々を連れて来て、この家をいっぱいにしてくれ」と言って僕を送り出したとありましたから、先週の箇所では、誰でもイエスと出会い人格的交流を持って生きるのは易しいと思わされました。また、ヨハネ福音書15章でイエスは、「あなたがたが私を選んだのではない。私があなたがたを選んだ」と語っておられますから、信仰の確かさはイエスの一方的な選びの中にあるということでしょう。

  ところが今日の所は、それらを否定するかのように、あなたの最も大事にしている家族や自分自身も捨てなければ、弟子になれないと言われる訳で、矛盾でないか、どうしてなのかと戸惑います。

  それとも、これはイエスを信じる一般の者たちと、イエスの弟子として献身し、生涯イエスと行を共にする12弟子を区別して説かれたのかと考えたりします。キリスト教全体主義ではありませんから、全ての人に一律に厳しい弟子の覚悟を求められないと思うからです。

ただ、これが特別な弟子たちにだけ言われたとして一般の人を除外するなら、他の厳しい言葉も一般の人から除外されかねず、やがてはイエスの言葉をすっかり骨抜きにされかねません。

  それに今日の言葉は、大勢の群衆がついて来た時に、彼らの方を振り返って、彼らに語られたとありますから、一般の群衆に語られたものです。

  ごちゃごちゃ申しますが、イエスは別の所で、「あなたがおいでになる所ならどこにでも参ります」と言ってついて行こうとした人に、「狐には穴があり、空の鳥には巣がある。だが、人の子には枕する所もない」と語って、安易に従おうとする者をたしなめられたとありました。所が別の人が、「主よ、まず父を葬りに行かせて下さい」と言うと、彼には「私に従いなさい」と言って、葬りにも行かず、直ちに従うように勧められました。

  私が言おうとしているのは、イエスは人を見て法を説かれたということです。群衆はイエスの癒しを求めたり、奇跡を行われるのを期待してついて来たのでしょうが、イエス新興宗教の教祖のように弟子を大量生産されません。一人ひとり、イエスと人格的に出会って弟子になることを求められます。ですから、群衆一人ひとりが、自分を真剣に振り返り、いわば最も厳しい、狭い門から入るように求められた。それが今日の言葉だと思います。

       (つづく)

                                       2013年11月24日


                                       板橋大山教会 上垣 勝



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