大教会も小教会も値打ちは同じ


          チューリッヒ駅。駅前に鉄道の先駆者アルフレート・エッシャーの像が建っていました。
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                                         狭い戸口から入りなさい (下)
                                         ルカ13章22-30節



                              (3)
  イエスがこう言われたのは、ご自身が狭い門から入られたからです。他の人に語っても自分はしないというような不埒(ふらち)な方ではありません。今日の出来事は、イエスエルサレムに向かっておられる時であったと書かれているのは示唆的です。イエスはこれまでも安息日に病人を癒し、ハンセン病の人をも避けず友になり、隣人愛において狭き門を通って来られましたが、今は、十字架という最も狭い門に向かって進んでおられるのです。

  イエスは、ご自分が先ず狭い門から身を屈めて入り、門の中から、「さあ、あなたも私の足跡をたどってこの門から入って来なさい。私が歩いた道をたどれば易しいでしょう」と言って招かれるのです。真実というのは、こういう生き方で示されるものです。

  私たちがイエスが示される狭い門から入るのは、イエスの弟子になりたいからです。ただ神だけを神とし、自分を愛するように隣人を愛したいからです。安易な口先の愛なら易しいですが、真実に隣人を愛することは誰しも容易ではありません。隣人をしっかり愛し受け止めるには、苦しみも悩みも不都合も伴います。だからこそ狭い門から入っていることが必要なのです。

  しかし狭い門から入れば、そこは思ったより広い世界です。信仰の世界は大変逆説的です。それで、これまでよりずっと広く大きい世界がそこに現れます。

  エルサレムに向かうイエスに、男は、「救われる者は少ないのでしょうか」と尋ねました。イエスはこれに直接答えられませんでしたが、むろん多くの人が救われてもらいたいと考えておられたでしょう。しかし、救われるには、一人ひとりが自分の十字架をとって従って来なければならない。それが真実であり、そうでなければ嘘になります。「狭き門から入りなさい。」それはキリスト教信仰が嘘でも偽善でもないために必要です。また、救われて、魂に喜びと平和が授けられるためには、狭き門より入るというこの一歩が、この決断が不可欠なのです。

  私たちには今この時、信仰への門が開かれています。すべてのことに時があります。生まれる時、死ぬ時、植える時、抜く時、黙る時、語る時、何事にも時があります。25節以下の譬えが語るように、戸が閉められてからでは、いくら開けて下さいと叫んでも万事休すです。今、開いている間に入れて頂く、この絶好の機会を誰しも逸してはならないのです。

  最後に申し上げたいのは、「狭い戸口から入るように努めなさい」と語られたのは、キリストの救いが数え切れぬほど貴く高価だからです。キリストの救いは安物ではない。都心の大教会でも板橋近辺の下町の小教会でも、説かれる福音の値打ちは全く同じです。誤解している人が多いですが、大教会も小教会も値打ちは変わりません。救いにはイエスの貴い血が流されていますから、安価な救いも、安価な教会というのも本来ありません。

  イギリスの宇宙物理学者のホーキングさんが、先週自伝を出しました。21歳で発病し数年の命と診断された命でしたが、最初の奥さんの懸命な介護で長生きして今年71才を迎えられました。自伝では、ホーキング博士の宇宙に対する思いと破綻した2度の結婚に注目が集まっています。論理的に宇宙の謎を解明した人ですが、「女性たちは、全く神秘そのものだ」と語っていて、彼にとって女性は永遠の謎だったようです。天才科学者といえ女性を制することは難しいのでしょう。

  それはそれとして、彼は不自由な障碍(しょうがい)がひどくなって、今では1分間に1語か2語というスピードでしか文章を書けないそうです。ですから自伝は、気の遠くなるほど忍耐を要する困難な作業でした。だがホーキングさんはそれを成し遂げたのです。

  ここにも狭き門から入ることの大切さが示唆されています。皆が多くの人がするので行うのではありません。神が私にせよと命じられることをなす。それだけをなす。そこに、私たちの喜びが生まれる源泉があります。イエスはこの素晴らしい人生の哲理を、その奥義を今日の箇所で教えて下さいました。感謝しましょう。

           (完)

                                        2013年9月15日



                                        板橋大山教会 上垣 勝



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