弱さを担う力


                          テゼ共同体で出会った人たち
                               ・


                                          平和こそわが喜び (上)
                                          Ⅱテサロニケ3章16-18節
      

                              (序)
  神の恵みの光はあらゆる世界に届いています。その光が届かない世界はありません。ですから、私たちは教会において個人的な問題、社会的な問題、生活のすべてを包む問題を考えるのです。

  恵みの光の届かない場所はないゆえに、あらゆる問題の焦点であるキリストに集中するのです。キリストに集中します。この焦点であるお方において、私たちが持つ問題が核心から解決されていくからです。

  ですから今日も、この方が何をなさり、私たちとどう関係があるのかを考えたいと思います。

                              (1)
  ここにあるのはパウロの祈りです。テサロニケ後書を閉じるにあたって、彼は、「どうか、平和の主御自身が、いついかなる場合にも、あなたがたに平和をお与えくださるように。主があなたがた一同と共におられるように」と祈りました。

  「平和こそわが喜び」。平和、これが今日のテーマです。旧約聖書では平和はシャロームと言い、新約ではエイレーネです。その中で一番重要な意味は、真の平和は神から来るということです。人間の間の平和はどうでもいいというのでなく、人間の間の平和は神に基づくとき真実になっていくということです。

  この平和は、キリストに基づき人間の魂の平和として始まっていきます。世界の平和は私たちの心の中から始まるのです。

  しかも永遠の平和は、地上ではその全てを味わい尽くすことはありません。終末において、喜びにあふれ、祝福に満ちた真の平和が与えられます。死が最後でなく、死の向こう側でも喜びが、復活のキリストが待っているのです。そのような終末的な真の平和が約束として与えられている。これは聖書が語る平和の意味の中心にあることです。

  パウロは、「どうか、平和の主御自身が、いついかなる場合にも、あなたがたに平和をお与えくださるように。主があなたがた一同と共におられるように」と書いたのです。

  繰り返しますが、真の平和は平和の主から来るというのです。真の平和は、雰囲気として空気のように存在するのではなく、平和の主との交わりの中で、お与え下さるのであると書いているのです。

  むろん雰囲気としての平和はあります。自然と接すると平和です。しかし雰囲気というのは実に脆いものです。すぐ潰(つい)えます。しかし、この方は、「いついかなる場合にも、あなたがたに平和をお与えくださる」のです。

  苦しみや悩み、またトラブルを持たない人はいないでしょう。そういういついかなるもので悩む人も、キリストは平和を授けて下さる。だから彼はこう祈ったのです。

  今回、フランスのテゼ共同体にまいりましたが、毎日3回の礼拝がありますが、その他に月曜から土曜まで聖書の講義が毎日あり、講義が終わると10人ほどの集まりで色んなことを話しました。初日は、自分たちは何を背後に置いてここに集まっただろうかということが話題になりました。私たち以外は、35才から50才代の現役で働く人たちばかりで、イギリス、イタリア、ハンガリア、オランダ、ポーランド、途中アメリカ人も加わりました。

  ハンガリーの方は女医さんですが2度離婚して、いま娘さんと2人暮らしです。色んなことを背後に置いてここに来たと言っていました。またオランダの方は、ご近所の危篤状態の方を残して、ここに来ていると言いました。またイタリアの40歳の男性は、母との難しい関係を置いてここに来たと言っていました。私たちも残してきた課題を話しました。

  しかし私は翌日、昨日はそう思ったが、よく考えると違う。それらすべての問題をもって、私はこのテゼに来ましたと申しました。すると皆、残してではなく、それらを持って、テゼでキリストの前に持ち出して祈るために来たということに同意してくれました。

  色々な悩みや重荷やトラブルや、そこで苦しむ私たちに、「いついかなる場合にも」、持ちながらも、平和の主が平和を授けて下さるのです。でなければ信仰は虚しいことです。信仰は逃避ではありません。私たちは問題やトラブルから逃げ出すためにキリストのもとに来たのではありません。苦しみも痛みもトラブルも、弱くとも担うために担う力を授けて下さるから信仰に入ったのです。平和の主が共におられる時、不思議ですがそれが可能になるからです。

        (つづく)


                                       2013年7月28日


                                        板橋大山教会 上垣 勝



  ホームページは、 http://www.geocities.jp/itabashioyama_ch/

  教会への道順は http://www.geocities.jp/itabashioyama_ch/img/ItabashiOyamaChurchMap.gif