ヨエルはどう苦難に立ち向かうか


                          リヨン市庁舎前の噴水
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                                         今こそ神に立ち帰る時 (中)
                                         ヨエル1章1-20節


                              (2)
  この事態に際して、ヨエルは、13節以下で、「祭司よ、粗布を腰にまとって嘆き悲しめ。祭壇に仕える者よ、泣き叫べ。神に仕える者よ、粗布をまとって夜を明かせ。献げ物の穀物とぶどう酒は、もはや、あなたたちの神の宮にもたらされることはない。断食を布告し、聖会を召集し、長老をはじめこの国の民をすべて、あなたたちの神、主の神殿に集め、主に向かって嘆きの叫びをあげよ」と語ります。

  祭司や神の神殿に仕える者。即ち、指導者たちはこの苦難に直面し、これをどう捉え、どう国を再建するのかです。事態をどこから解いていくかです。

  もう一度、経済、経済と連呼し、できるだけ早く原発を稼働しようとするのか。国内で稼働できなければ取り敢えずは原発を輸出するのか。憲法を変えて戦争ができる国家を造り、軍需産業で儲けて、再びJapan as NO.1の強い日本を作ろうとするのか。それとも別の角度からこの国の危機に迫っていくのか、です。

  預言者ヨエルは、「祭司よ、粗布(あらぬの)を腰にまとって嘆き悲しめ。祭壇に仕える者よ、泣き叫べ。神に仕える者よ、粗布をまとって夜を明かせ」と、先ず宗教的・社会的指導者たちに懺悔と徹夜の祈りを求めます。更に、「断食を布告し、聖会を召集し、長老をはじめこの国の民をすべて、あなたたちの神、主の神殿に集め、主に向かって嘆きの叫びをあげよ」と、民の長老、政治的・経済的指導者たちから一般民衆に至るまでの、断食と礼拝と神に対する祈りを求めます。

  断食も聖会も神への叫びも、全て神に心を向けることです。即ち、イナゴの大群の来襲の中に、神のみ心が隠されているのを見て、「神に立ち帰れ」と語ったのです。主に立ち帰るとは、生活のあり方、生き方の根本的な転換であり、再考です。

  それは5節の、「酔いしれる者よ、目を覚ませ、泣け。酒におぼれる者よ、皆泣き叫べ。泡立つ酒はお前たちの口から断たれた」とのこれまでの社会の洞察であり、新しい自覚です。

  これまで、豊かさの中で酔いしれ、富と悦楽の中で溺れ、泡立つ酒すなわちシャンパンや発酵酒に似た、極上の美味なお酒に酔いつぶれて来た生活の再考です。むろん、美味な極上のお酒には、うまい食べ物があるわけですが、それだけでなく、そこに侍る美女たち、妖艶な姿をしたコンパニオン達がつきものです。

  2400年前と現代と、人類はどれだけ進化したのでしょう。

  預言者ヨエルは15節で、「ああ、恐るべき日よ、主の日が近づく。全能者による破滅の日が来る」と語ります。このままでは、破滅があるのみだと語ります。

  16節以下は、イナゴによる大被害の有様です。読みませんが、実に重々しい報告です。気が滅入る程です。木や草が食べ尽くされ、林も森も食いちぎられ丸裸になれば、土壌が露出して大地が乾燥し、砂漠化します。それは民衆に更なる打撃を与えるでしょう。家畜も呻き、さ迷います。人の罪によって野の獣たちも苦しみ、喘ぎ求め、神に向かって助けを求めるのです。

  「火が荒れ野の草地を焼き尽くし、炎が野の木をなめ尽くした」という言葉は暗喩でしょう。野に火が放たれたように、イナゴによって悉く食い尽くされ、植物が全滅したことです。植物への打撃、動物への打撃、人間への打撃。生態系は全て連鎖します。

        (つづく)

                                         2013年5月26日



                                         板橋大山教会 上垣 勝



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