イナゴに襲われたヨエルの農園


                           リヨンの旧市街を歩く
                               ・



                                         今こそ神に立ち帰る時 (上)
                                         ヨエル1章1-20節


                              (1)
  先ず、2節以下に、「老人たちよ、これを聞け。この地に住む者よ、皆耳を傾けよ。あなたたちの時代に、また、先祖の時代にも、このようなことがあっただろうか」とあります。

  ペトエルの子、預言者ヨエルは、老人やこの地に住む者たちに、今起こっている災害について語ります。それは「先祖の時代にも、このようなことがあっただろうか」と、何百年、何千年にもわたって耳にしたことのない前代未聞の大災害だと言います。

  どういう災害か。4節、「かみ食らういなごの残したものを、移住するいなごが食らい、移住するいなごの残したものを、若いいなごが食らい、若いいなごの残したものを、食い荒らすいなごが食らった。」

  幾種類ものイナゴが、次々波状攻撃をかけるように襲った。

  日本では報道されませんが、今年に入ってからもエジプトやマダガスカル島で異常発生しました。イナゴの大群は、ひどい時は何週間にもわたって押し寄せます。1870年にアメリカのネブラスカ州を襲った大群は、幅160Km、長さ500Kmに及んだそうです。彼らの飛行は高さ800m、中には1600mの高さまで昇ります。群れは時に500億匹に達します。イナゴは体重と同じ草を、1日で食べ尽くすので、通過後は、草木が悉く食べ尽くされています。

  マダガスカル島の面積は日本の約2倍。今年、マダガスカル全土の2/3をイナゴが覆った。

  7節、「私のぶどうの木を荒らし、私のいちじくの木を引き裂き、皮を引きはがし、枝を白くして投げ捨てた。」葉っぱや実だけでなく、樹皮を噛み切り、軸まで囓(かじ)り、木自体を枯らしていく。

  その襲来は恐怖そのものである。それは6節で、大規模な軍隊の来襲に譬えられています。「一つの民がわたしの国に攻め上って来た。強大で数知れない民が。その歯は雄獅子の歯、牙は雌獅子の牙。」

  イナゴは馬面です。軍馬のように土煙を上げ、押し寄せて来た。実際のイナゴの大群は、煙のように棚引き、もうもうと土煙が上がっているように見えます。その歯、その牙は雄獅子、雌獅子のように鋭く、あらゆるものを噛み砕き、貪っていく。

  10節以下は、「畑は略奪され、地は嘆く。穀物は略奪され、ぶどうの実は枯れ尽くし、オリーブの木は衰えてしまった。農夫は恥じ、ぶどう作りは泣き叫ぶ。小麦と大麦、畑の実りは失われた。ぶどうの木は枯れ尽くし、いちじくの木は衰え、ざくろも、なつめやしも、りんごも、野の木はすべて実をつけることなく、人々の楽しみは枯れ尽くした。」

  食料調達のため畑や穀物を略奪しつつ進軍する軍隊のように、彼らの通った地はあらゆる農作物が貪欲に略奪され、ざくろ、なつめやし、りんご、種々の果樹や野の木も、実をつけることなく食い尽くされ、人々の楽しみは枯れ尽くした。

  地震津波も竜巻も恐ろしく、直接命を奪います。だが、一時的です。しかしイナゴは何日か、何週間か、長期にわたって何度も来襲し、甚大な被害をもたらします。

  「私のぶどうの木を荒らし、私のいちじくの木を引き裂き、皮を引きはがし」とあります。「私の」とありますから、これはヨエル自身の農園で体験し、経験したものでしょう。だからこそ、ヨエルの叫びは悲痛で、ほぼ絶叫に達しています。11節に、「農夫は恥じ」とあります。長年大地と関わって来た者さえ、打つ手のなさに、恥じるばかりである。農夫である彼の悔しさが、色濃くにじみ出ています。

  12節の「人々の楽しみは枯れ尽くした」は、単に楽しみがなくなっただけでなく、続いて、飢えと死の恐怖が待っていることを示唆します。

        (つづく)

                                         2013年5月26日



                                         板橋大山教会 上垣 勝



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