Worry(思い煩う)の元の意味


               中世の逸品「貴婦人と一角獣」が日本に来るとか。この題は「嗅覚」。
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                                          思い煩いを断つもの (中)
                                          ルカ12章22-31節

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  さて、こうした現実の中でイエスは、「烏(からす)のことを考えてみなさい」と語り、彼らは「種も蒔かず、刈り入れもせず、納屋も倉も持たない。だが、神は烏を養ってくださる。あなたがたは、鳥よりもどれほど価値があることか」と言われたのです。

  種蒔きや刈り入れ、納屋や倉のことが言われるのは、愚かな金持ちが、貪欲ゆえに倉を建て替え、仕舞い切れない作物を自分のためにしまったと、先に言われたからです。

  だが、カラスを見よ。ちっともそんなことをしないじゃあないか。だが、「神は養ってくださる。」カラスは、この根源的なことに信頼し切っている。そして何があっても動じない。それは野の草花も同様だと言われます。

  思い煩っていると肝心なことがおろそかになり、枝葉のことや些細なことに心奪われ、大勢を見失ってしまいます。「烏のことを考えてみなさい」とは、人生と生活の肝心要なことを見失うなということです。

  「思い煩う」は、英語で「Worry」といいます。Worryとは、元々の意味は、「窒息させる」、「絞め殺す」という意味です。考えさせる意味を持っています。思い煩うと、確かにそのことで胸苦しく窒息しそうになったり、絞め殺されるような思いになったりするのではないでしょうか。明日のことをくよくよ思うと、息ができなくなる。息ができないばかりか、それに縛られて自由な発想ができなくなる。それがWorry、思い煩うことです。

  確かにカラスは、決して寿命を伸ばそうなんて考えていません。無論縄張りもあるようですが、播かず、刈らず、集めもしません。多分、動物の中で人間だけが思い煩っています。カラスは神にわが身を預けているのです。偉いですね。カラスを憎んじゃあならない。学ぶべきものが一杯ある。

  そこでイエスは、「あなたがたは、小鳥よりもどれほど価値があることか」と言われたのです。神は、あなたがたをカラスより遥かに価値あるものとして造り、貴く扱って下さっている。それを信じ、神に委ねて生きよと言われたのです。

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  次の25節に、「誰が、思い悩んだからといって、寿命をわずかでも延ばすことができようか」とあります。寿命とあるギリシャ語は、寿命という意味と背丈という意味があります。時間と空間の長さを表すのがこの言葉です。それである日本人の個人訳は、「思い悩んだからといって、背丈を一尺でも伸ばしたり、寿命を一日でも伸ばしたりすることができようか」と両方とも訳しています。

  ただ、背丈や寿命のことは現代人の理解とちょっとズレていませんか。日本人は栄養状態が良くなり、ラッシュ時に電車に乗ると、若い人の背が高くて見上げるような人がかなりいます。肉食でタンパク質をしっかり摂り、畳でなく椅子の生活スタイルをする、スポーツをする。それで背丈が伸びたかと思います。寿命の方も、栄養改善や健康管理、予防、運動などで格段に伸びたのは事実です。ですから、今日では背丈も寿命も少しは伸ばせるかなと思います。

  ただ、寿命は飛躍的に延びましたし、背丈もそうですし、スタイルも良くなりましたが、そうしたことで、人間が何か本質的に進歩したかというとどうでしょうか。先程のトルコのネイロスの言葉からすれば、殆ど、あるいは全く変化していないのではないでしょうか。人間としての根本的な資質、尊厳、人格の内容が変わったと…、どうでしょう。私にはそう思えません。

  寿命のことを言えば、何才まで生きるのがいいのか。自分で長さを選べませんが、今日のところからも色々考えさせられますし、どう考えていいのか分からなくなります。平均寿命が50歳から70歳になった時は、かなり嬉しい気持ちがあったと思います。だが今後、90歳になり、100歳になったとして、それが果たして画期的な意味が生まれることになるのかということです。統計的には画期的かもしれない。だが幸福と関係あるかです。そこが分からない。

  ある程度長く生き、満足して死ねればそれで十分なのではないかと考えるのですが、皆さんはどうでしょう。人に押し付けませんが、個人的には満足して死ねればそれで良いと考えますし、人生は時間の長さでなく、どう生きたかではないかと思います。

  先ほど触れましたが、人間だけが寿命を伸ばしてきました。近年では、人間の近くにいるペットも寿命を伸ばしています。果たしてこれはいい兆候なのか、どうなのかと言うことです。

  ペットを飼っていらっしゃる方は大変だと思います。散歩だけではありません。最近は、犬にも歯磨きをさせると言いますし、おむつをさせたり…、補聴器はどうですか…。

  だがペットは可愛いわけで、暫く前、石神井川沿いを歩いていましたら、お母さんと子どもたちが犬を連れて、おしゃべりして近づいて来ました。見ると後ろ足が効かない犬が、後ろ足の部分を車の台に乗せてもらい、2本の前足で車を引っ張るような姿で歩いていました。お母さんと子どもたちが賑やかにおしゃべりしながら散歩していて、彼ら家族の一員にされて可愛がられている姿を見て、涙が出てきそうになりましたね。

         (つづく)

                                          2013年4月7日


                                          板橋大山教会 上垣 勝


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