見えない神との出会い


                        ―今年、東京にやってくるとか― 
               パリの中世博物館にある、もとはクリュー修道院にあったタペストリ
                      これは、「私の唯一ののぞみに」を表現。
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                                          お墓での出来事 (下)
                                          ルカ23章56節-24章12節


                              (4)
  第2コリント5章に、「私たちは、今後誰をも肉に従って知ろうとはしません。肉に従ってキリストを知っていたとしても、今はもうそのように知ろうとはしません」とあります。これまでは肉のキリストを知っていたが、もはやそういう方法で知ろうとはしないと言うのです。そう述べた後、復活のキリストとの交わりを述べて、「だから、キリストに結ばれる人は誰でも、新しく創造された者なのです」と告げています。墓のキリストでなく、復活のキリストに出会う。そこに新しい世界が拓けるのです。

  キリストは十字架につけられた体を、私たちに拝ませられません。聖遺物のように、そういうものを崇拝させられないのです。「私たちは見えるものではなく、見えないものに目を注ぎます」ともあります。サン・ティグジュベリも「星の王子さま」の中で「もの事はね、心で見なくてはよく見えない。一番大切なことは、目に見えない」と書きました。パウロの信仰と同じ発想です。心で見なければ神は見えない。見えない神との出会いの中にこそ、信仰の豊かな喜びが湛(たた)えられているからです。偶像崇拝では本当の喜びは生まれません。

  教会は悲しみの共同体でなく、喜びの共同体です。死に打ち勝たれた復活のキリストとの出会いがあるからです。実社会で生活していますと、顔を曇らせることが多くありまが、その中でも復活のキリストが出会って下さり、喜びを与え、希望を送って下さるのです。

  第1コリント13章に、「愛は寛容であり、愛は情け深い、愛は妬まず、無作法をしない、苛立たない…」などとあります。パウロはああしなさい、こうしなさいと律法を語っているのではありません。「愛は寛容であらねばならない。あなたは寛容であらねばならない。愛は情け深い。あなたは情け深くあらねばならない。愛は妬んではならない。あなたは妬んではならない。あなたは苛立ってはならない。…」こんなふうに読むと、きつく、気が重くなります。

  ここにあるのは、私たちを解放するキリストの福音です。実際、ここにある愛は、神の愛を表すアガペーという言葉です。ですから、愛という言葉を神に置き換えて読めばここで言われている真意が分かります。

  「神は寛容である。神は情け深い。神は妬まず、無作法をしない。神は苛立たない。…神はすべてを忍び、すべてを信じ、すべてを希望し、全てに耐える。神の愛は決して滅びることはない。」神の愛がシャワーのように、全身に充分浴びるように語られています。誰もが、神の愛であふれるほど心満たされるべきです。そのような祝福の中で、喜びながら小声で、「愛は寛容である。愛は情け深い。妬まず、無作法をしない、苛立たない。…」と自分にも語りかけられているのです。それは神の子として愛されているからです。

  復活のイエスは生きておられるのですから、もはや自分の罪に過度に悩まされる必要はないのです。私の罪にキリストは打ち勝ってくださった。死は勝利に飲み込まれてしまったからです。

  ですから、「どんなに信じ難いように思えても、自分のすべてを神に委ねるのです。その神をすぐに愛せないからといって心配する必要はありません。」(Br.ロジェ)思い煩うことからは何も始まりません。私たちが自分の限界と弱さとを受け入れるように、イエスから招かれているのです。自分を傷つけるものに留まっていてはなりません。

  教会は命の共同体です。復活のキリストがおられ、甦りの命を受けているからです。死の力、冷たさの力が世にはびこる中で、復活の命に与って生きる命の共同体。それが教会です。

  墓や死者の中に目を向けるな。悲観に目を向けるな。神のみ業に目を向け、神を思いを巡らす。それが教会という共同体です。

  キリストの甦りは、弟子たちと全ての人間の将来に起こる甦りの保証です。だから最初に甦られたお方を、希望を抱いて常に思うのです。キリスト教信仰とは、キリストを死者の中から甦らされたお方に対する信頼であるからです。

        (完)

                                          2013年3月31日


                                          板橋大山教会 上垣 勝


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