ホームレスのハリスさんのこと
すべての子どもはどのような人生を辿るか誰も知りません。
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愛する兄弟へのアドバイス （上）
Ⅱテサロニケ３章６－１５節
（１）
私はアメリカのカンザス州がどの辺にあるのかよく分からない人間ですが、今、そのカンザス・シティで起こっていることをまずお話します。
いつもは橋の下で寝ているビリー・ハリスというホームレスの男のために、インターネットで寄付を募ったら、７０日ほどで６２００人が応募してきて約１５００万円が集まりました。寄付は今も増え続けて、最終的に何千万円になるのか、テレビや新聞に出たので何億円にもなるかも知れません。
数ヶ月前、サラ・ダーリンという婦人が、道路際で物乞いをするハリスの缶に小銭をザラザラと入れた時、気づかず婚約指輪を一緒に入れたのだそうです。彼の方は、それから１時間ほどしてダイヤの指輪が缶に入っているのに気づいてびっくりしたのです。それで、持ち主が戻って来るまで現金に替えずに持っていようと心に決めたのです。ダイヤは大きく、もし贋物でないならとんでもない値段だと思ったようです。
２日後にダーリンさんが戻って来て、彼の前にしゃがんで、「あなた、私のこと覚えていて？」と聞いたそうです。でも、ハリスはこれまで沢山の人を見て来ましたから、「知りません」と答えたそうです。そしたら婦人は、「私はあなたに大事なものを差し上げてしまったの」って言ったのです。それで、「指輪のことですか？」と聞き返しましたら、「ええ、そうよ」と言うので、「ああ、それならここにありますよ」と言って、返したのだそうです。
ダーリンさんには命ほどに大切なものなので、指輪の値段以上に気が動転しそうになって、見つかったときは奇跡だと言って喜こんだそうです。彼女はなぜ缶に入れたかというと、これまで婚約指輪を外したことはなかったのですが、指に吹き出物ができたので、外して財布の中に大事にしまったのです。ところが、コインをハリスの缶に入れる時に知らずに入れたようです。
これを聞いた婚約者は、直ちにインターネットで、ホームレスのハリスさんのために募金を呼びかけたのです。婚約者は友人だけに募ったのですが、それが広まって９０日間限定の募金になり、７０数日で１５００万円が集まったというわけです。来週には、集まった全額を直接ハリスさんに渡す予定だそうです。そうなると日本でもニュースになるでしょう。
ところで、ホームレスのハリスさんはどうしてダイヤの指輪をすぐお金に換金しなかったのでしょうね。彼はテレビの取材にこう答えたそうです。「私は自分のものでないものを返しただけで、こんなことになっちまったんだ。当たり前のことをしたら、世界中の人が注目したんだよ。私自身はそんな値打ちのある人間ではないのにね。」
そう言って、「私のおじいさんは牧師をしていました。ある事情で、生後６ヶ月の時から祖父母が私を育ててくれました。これは神の恵みと感謝しています。その神の祝福が、今でも私のどっかに残っているんでしょうね。」
ただこうも話していました。ダイヤを見た瞬間、後ろの方で誰かが、「さあ、さっさとお金に変えよう…」と囁いたと。
久しぶりに心温まるニュースに接しました。テサロニケの手紙には何度も、「キリストに結ばれた者」という言葉が出てきますが、彼はキリスト教の影響と言えばそれまでですが、ここに、キリストに出会い、キリストに真実にしっかり結ばれる時、たとえ様々な事情でホームレスに転落したとしても、なおキリストはその人格深くに留まり続け、影響を与え続けていくことを思いました。
キリストの力は人の良心に入ります。預金通帳やガマ口に入ったものでなく、人の良心深くに入ったものは、環境が変わっても、そう安々なくなるものではありません。
詩篇に、「あなたの御言葉は、わたしの道の光、わたしの歩みを照らす灯」とあります。またイエスは、「私は道であり、真理であり、命である」と言われました。私たちはキリストの教えが持つ力を決して小さく見積もったり、侮ったりできないのです。キリストご自身が私たちの道を照らし、真理となり、私たちの中に入って命として働いてくださるからです。
（つづく）
２０１３年３月３日
板橋大山教会 上垣 勝
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