神さま雇って下さい
わが教会のクリスマス・イヴで
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やはり軸足が大事です （中）
ルカ１２章１３－２１節
（２）
余談が長くなりましたが、イエスは男の話しを聞かれて、「誰が私を、あなたがたの裁判官や調停人に任命したのか」と言われ、一同に向かって、「どんな貪欲にも注意を払い、用心しなさい。有り余るほど物を持っていても、人の命は財産によってどうすることもできないからである」とおっしゃったのです。
遺産相続でケンカになることがよくあると聞きます。これまで仲良かった兄弟が決裂したり、交際しなくなったりのようです。
イエスは遺産においても、「貪欲であってはならない」と言われました。貪欲ですから、うまく頭を回して少しでも多く取ろうとする。その強引さ、その計算高さです。
そういう計算高さはすぐ分かりますし、兄弟同士は他の一般の人との関係以上に、貪欲は許せません。兄弟は、相手のズルさとか意地悪とか、気前良さとかが小さい時から問題になっていますから、遺産問題でそれが出ますと、子供時代からの怨念が爆発するわけです。
身内の不正は許せないので、こちらの権利を当然主張する。兄弟喧嘩です。どちらも一家を構えていますから中々後に引かない。こうして常識を持つ兄弟が喧嘩別れになったり、裁判沙汰になってしまうわけです。
その根っこに貪欲がある。相手の貪欲を責める中で、こちらも貪欲になっている。相手は貪欲だと責めて、責めて、こっちが貪欲に。人間って矛盾しています。
しかしイエスは、「人の命は財産によってどうすることもできない」と言われました。確かに、財産によって少しは命を長引かせることはできます。しかし、肉体の命を少し長引かせても何にもなりません。どう生きるか、命をどう使うかが一番重要で、これは財産によりません。
私は教会の皆さん全員、お一人お一人、色々違う面において感謝したいと思っていますが、全員のことをお話する時間がありませんが、先週近くの教会で証をして下さったＡさんのことをお話させてください。
Ａさんが１２月に、１５年続けた太極拳の教室を閉じられましたが、お話の中で、７１歳で大腿骨骨折をし、神様に「私は歩きたい。歩かせて下さい」と真剣に祈って、タオルが何本もいるほど非常にきついリハビリをして、神様がお聞きくださって再び立ち上がらせて頂いて、その年から太極拳教室を開始して１５年することができた。そして今教室をやめ、４月に米寿を迎えるが、ダランとなってのんびりする訳には行かないとおっしゃったのです。そして「もう一度立ち上がって歩もう。神さま、もう暫く働けそうです。私をもう一度雇って下さい」と祈ったと証されました。「神さま、もう一度雇ってください。」その言葉がとても心に残りました。
お話されませんでしたが、Ａさんが立ち上がられたのは、証で話しされたことだけではありません。私たちは大変感謝しているのですが、Ｂが小茂根の心身障害児センターに行くのも、加賀の向こうの家政大学に行くのもＡさんは付き添って下さっているのです。８８歳になろうとしながら、証のためだけでなくＢちゃんのために、「もう一度雇って下さい」と祈ってくださったのです。７２歳になろうとするバッチャンに加え、８８歳になろうとする曽（ひい）ばあちゃん格の人が、どっちも背中を丸めて４歳の子どもの手を引いて急いで歩く姿は、東京広しといえど他にない光景でしょう。もう物語になりそうな一幅の美しい絵です。
貪欲の醜い絵とは雲泥の差です。光り輝いています。「神さま雇って下さい。」神さま、この命をお使い下さい。命をどう使うか。命の使い方は全ての人にとって最も重要なことです。財産の問題ではありません。もっと大きな問題です。本質的な問題です。
イエスは、「一粒の麦が地に落ちて死ぬなら、多くの実を結ぶ」と仰せられました。地に落ちて死ぬには痛みがありますよ。損しますヨ。でも損しないと死ぬことになりません。でも死ぬと多くの実を結ぶ。命を、欲や貪欲でなく愛のために使うことです。逆説です。パラドックスです。それが肝心であって、財産を幾ら持っているかではない。
むしろ財産を持つと、誰でもそれを必死に守り、奪われないようにしがみつきますのです。欲が起こります。
（つづく）
２０１３年２月３日
板橋大山教会 上垣 勝
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