今、ここに、生きよ


                               ・


                                           ヨナのしるし (下)
                                            ルカ11章29-32節


                              (3)
  イエスは、今の時代の者たちは「しるしを欲しがるが、ヨナのしるしの他には、しるしは与えられない。つまり、ヨナがニネベの人々に対してしるしとなったように、人の子も今の時代の者たちに対してしるしとなる」と言われました。「ヨナのしるしの他には、しるしは与えられない」とは、端的に言えば、真のしるしはただ一つのみだということです。

  イエスは多くのしるしや奇跡を行われました。それらは、地上に来た神の国のしるしとして行われましたが、私たちが癒しや奇跡を求めることに留まり、ご利益主義や物質主義的なものでよしとする態度なら、真の救いに達しないでしょう。

  ヨナというと日本ではキム・ヨナが有名ですが、無論そうじゃありません。旧約に出てくる預言者ヨナです。

  人の子イエスは、現代における「ヨナのしるし」だと言うことです。ヨナは神から使命を授かったが、それが辛くて、預言者なのに神から逃亡したのです。東方にあるアッシリアの大都市ニネベに行って裁きを語れと命じられたが、西の果てのタルシシュに向かう船底に潜り込んだのです。だが海が大荒れに荒れて難破寸前になります。調べてみると、海の男たちの迷信とはいえ、ヨナが神の前から逃亡したのが原因で大嵐になり、海が荒立っているのだと考え、海神の怒りを静めるために船員らがヨナを担いで海に放り込みます。

  放り込まれたヨナは大魚の腹に飲まれるのです。本当なら死ぬところですが、3日3晩の後、大魚の口から陸地に吐き出された。その後、彼は神の命に従ってニネベの人たちに神の裁きを告げます。するとニネベの人たちは灰をかぶって悔い改めたのです。

  他方、人の子イエスは大魚の腹の中でなく、十字架上で殺されて墓の中に葬られます。だが3日目に甦って弟子たちに現れ、「あなたがたに平和があるように」と平和を告げられたのです。イエスの復活は死に対する勝利であり、彼を十字架につけた者たちへの神の審判でもありました。復活のイエスは弟子たちに平和の福音を告げると、彼らは聖霊に満たされ、エルサレムの民衆の前に姿を現し、公然と復活のキリストを喜びをもって宣べ伝えます。すると次々と民衆は悔い改めてイエスを信じるようになります。

  このようにヨナに起こった出来事は、やがてイエスにおいて起こる出来事の前ぶれになったのです。ヨナのしるしは、人の子のしるしを指し示し、真のしるしはこのしるし、ただ一つのみなのです。

  イエスは、南の国の女王すなわちシバの女王のことも語られました。彼女は「裁きの時、今の時代の者たちと立ち上がり、彼らを罪に定めるであろう。この女王はソロモンの知恵を聞くために、地の果てから来たからである」と言われて、同じ言葉がニネベの人たちについても語られています。

  シバの女王やニネベの人々が、「裁きの時、今の時代の者たちと立ち上がり、彼らを罪に定めるであろう」という言葉は誤解しやすい翻訳ですが、その意味は、最後の裁きの時に、シバの女王やニネベの人たちが、今の時代の者たちと神の前に立ち上がり、一緒に立った今の時代の者たちを訴え、罪に定めるという意味です。英語訳聖書の中には、彼らは、「裁きの時、今の時代の者たちに反対して立ち上がり、罪に定める」と訳しているものがあります。それがここの意味です。

                              (4)
  今日の箇所全体の結論を言えば、ヨナのしるしに象徴される「人の子のしるし」、即ちイエスの宣教によって既に神の国が来ているという、イエスのしるしに単純に、素直に目を留めて生きなさいということです。

  その時に、予断なく、単純素朴な思いでイエスに接した民衆たちに与えられたような驚きと感謝、真の主を頂いたことの喜びと感謝が私たちを訪れるのです。

  「ここに、ソロモンに勝るものがある。…ここに、ヨナに勝るものがある」という言葉は、原文はいずれも、「見よ、ここに…」となっています。先入観なく、予断を持たずに、ここにいる者に目を向けて生きよ。ここにソロモンやヨナに勝るものがいる。ここに神の国のしるしが来ている。この者にこそ目を向けよ、今、ここに来ている神の子を信じ、今、ここに、あなたが立っているところで主を信じて生きよ。

  そうすれば、今、あなたの所から汲めど尽きない生命の泉が湧き上がるだろう。神の恵みが、もう既にあなたの所に来ていると告げているのです。

       (完)

                                    2012年11月4日


                                    板橋大山教会   上垣 勝


       ・ホームページはこちらです;http://www.geocities.jp/itabashioyama_ch/ 

       ・板橋大山教会への道順は、下のホームページをごらん下さい。
                   http://www.geocities.jp/itabashioyama_ch/