わたしの証人 ― 足元での伝道 ―


        アヴィニヨン・フェスティバルは出演者自身が街に繰り出して観光客にチラシをまいています。
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                                             わたしの証人 
                                             使徒言行録1章8節


                              (1)
  今日はバザーのために、短縮した礼拝になっていますので、短くお話させていただきます。

  先ほどの箇所は、復活のイエスが弟子たちに語った世界伝道の幻、その預言です。私はこれまで、「地の果てに至るまで」という言葉を重視してお話することが多かったと思いますが、今回改めて読んで、弟子たちがイエスのこの言葉を聞いたのはエルサレムでしたが、「エルサレムだけでなく」という言葉に心が留まり、この言葉に続いて「ユダヤサマリアの全土で、また地の果てに至るまで」と言われていることが大事だと思いました。

  「エルサレムだけでなく」というのです。エルサレムはいわば足元ですが、足元でイエスの証人となり、やがて足元のみならずユダヤと異邦人の地サマリア、そして地球の最果てに至るまで、あなたがたはイエスの証人となるということです。

  イエスは、弟子たちの今いる場所での活動を抜かしておられません。足元を飛び越えて、地の果てまでと言っていらっしゃるのではありません。イエスは大法螺(おおぼら)を吹かれない。そして実際、初代教会はエルサレムユダヤで非常な迫害に遭いましたが、先ずそこでよい取り組みをしたのです。

  そうですから、皆さんの足元においてどんな困難があっても、信仰と愛を抱いて生きる。イエスに結ばれて生きる。そのことが大事です。私も、皆さんも、足元に主がおられるのです。それをここから先ず考えさせられます。

  後の時代になって、ペトロ第1の手紙は、「善を行って苦しみを受け、それを耐え忍ぶなら、これこそ神のみ心に適うことです。というのは、キリストもあなたがたのために苦しみを受け、その足跡に続くようにと、模範を示されたからです」と語りました。迫害の中でも善を行い、神のみ心に適うよう、キリストの模範に従おうと勧めたのです。

  またイエスは、「罵られても罵り返さず、苦しめられても人を脅さず、正しくお裁きになる方にお任せになりました」と述べて、困難な時代をどう生きるかをアドバイスしていますが、「あなたがたに聖霊が降ると力を受ける」とあるように、天来の力を神から授けられ、エルサレムユダヤでキリストの証人となり、主の足跡に続く道を示されて行き、罵られ、苦しめられる中でも、それをどう信仰で受け止めて乗り越えて行けばいいかを教えられていったのです。

  震災後の復興の道はなかなか難儀で困難です。不況で仕事を失う人もあります。人間関係の辛い立場に立たされる場合もあります。また何らかの岐路に立たされる場合があります。その時、イエスならこの場合どうされただろうか。イエスならどう考えられただろうか。それを祈って考えることが大事です。すると試練を乗り越える道が必ず見えてきます。彼らはエルサレムで、足元においてそれをしたのです。それをしたからこそ、エルサレムからやがて外に出ていった時に、その経験が生かされたのです。

  「聖霊が降ると、力を受ける」とあった「力」は、ギリシャ語でデュナミスといいます。それは英語のダイナミックとかダイナマイズ、ダイナマイトという言葉になっていますが、デュナミスは困難を爆破して進んでいくダイナマイトのような力のことです。エルサレムユダヤ教の本山です。その足元からキリストを宣べ伝えるというのは常識では不可能です。非常識も甚だしい。だが彼らに聖霊が降って、実際にそういう原動力を与えられたのです。ですから、イエスが処刑された後、ユダヤ人を恐れて息を潜めて潜伏生活をしていた彼らが、民衆の前に公然と姿を現し語り始めるという驚くべきことが起こったのです。それは実に不思議なことでした。まさにダイナマイトのような力が弟子たちの上に降った。それが実際に起こったから、その後延々と続いて現在の教会があるわけです。幻や幻想ではありません。それが現実に起こらなかったら今日の世界の教会はないでしょう。

                              (2)
  きのう、今日とバザーの真っ最中ですが、バザーも私たちの足元での信仰の証、また伝道の一つです。これを通して地域に仕えたいと思います。ですから、外はごった返して、きのうのごった返しは大変なものがありました。で、その中で心乱れることもありましたが、乱れることはありませんでした?神が与えて下さる出会いの機会と考えて、朗らかに、笑顔で、難しいですね、昨年のバザーの標語を繰り返せば、「穏やかに、敬意を持って」、今年は「心の中にキリストを住まわせ」ですが、伝道の気持ちで来られる方々と接していきたいと思います。平和を胸に宿し、穏やかさを胸に宿して、です。

  また11月からクリスマスまで、以前から企画して来ました伝道のチラシを一万枚、各家庭にお届けするというのも無論、足元での伝道です。証のチャンスです。

  足元こそ地の果てとつながっています。足元なしの地の果てというのはありません。地の果てが足元とつながっている時、その地の果ての働きも堅実で確かさがあります。そう言う意味でも、「エルサレムだけでなく、ユダヤサマリアの全土で、また地の果てに至るまで、私の証人になる」ということを、まともに捉えて、このバザーやチラシ伝道を行って、足元からキリストの復活の証人になって行きたいと思います。

  私は自分が書いた伝道文書を教会の周りの方々に読まれるのは気恥ずかしかった。ですから、教会からやや離れたマンション群にお届けしましょうと申し上げて企画しました。しかし、時間が経つにつれ、だんだん足元から始めようと思うようになりました。ご近所からお配りして、大山教会ではどういうことが説かれ、何が考えられているのか知っていただこうと思うようになったのです。私には一大決心でした。

  復活の証人です。キリストの復活は大いなる希望の徴、勇気を与える徴です。行き詰まりも打開する徴です。

  私たちのごく近く、教会のすぐそばにも地の果てがあるのでないでしょうか。まだイエスの福音に触れていらっしゃらない方々は、距離は近くても接点は薄く、地の果てと言っていいでよう。

  伝道は議論でなく、実際に一歩でも半歩でも踏み出すことですが、自分がイエス様へ導かれたように、自分の生涯に、お一人でもお二人でもイエス様に、教会に、救いにお導きする神様のお手伝いができないか。それは、私たち誰もが心に秘めている強い願いだと思います。「あなたがたは私の証人となる」ということが私たちの身にも起こってもらいたいのです。

  イエスのお手伝いです。弟子たちが行ない、遣わされていった伝道のお手伝いです。それは素晴らしいことです。ですからバザーと伝道チラシ配布の機会が与えられたことは、イエスのお手伝いのチャンスだと捉えて下さるなら嬉しいことです。

  植物の種は、風によって思わぬ所に吹き飛ばされてそこで芽を出したりします。小鳥に食べられたり、動物の毛についたりして、遠く全く見知らぬ地に運ばれて、そこで大きな木に育つこともあります。

  伝道の道も、どこからどこへ導かれどう発展するか、予想を超えるものがあります。神がなさるわざだからです。男女の道、蛇の道はくねっていてどこからどう続いているか分からないと箴言にありますが、神のなされるわざも似ています。伝道は神がなされるわざを間近で見させて頂く楽しみでもあります。

  伝道は急(せ)いても、慌(あわ)てても、うまくいくとは限りません。「時速4キロの神」と言った人があります。出エジプトをしたイスラエル民族は、神に導かれてシナイ砂漠を40年かかって旅します。その旅の速さは時速4キロ、人の歩行の速さです。神は一瞬にして宇宙の端から端まで治められますが、人の歩行の速さに合わせて彼らを導かれたのです。

  神のなさることは息長いものです。それは愛の息長さです。

  いずれにせよ、地の果てばかりに目を注いではならない。足元から始めましょう。足元で始まる時、それは植物の種のように紆余曲折しながら、神様の導きのまま思いがけなく遠くまで、地の果てまで散らされて行くかも知れません。

  秋は伝道のシーズンです。一心発起(ほっき)してイエス様のみ業に参加させていただきましょう。

  「あなたがたは私の証人となる。」神は証人を必要としておられます。「お言葉通りこの身になりますように。」マリアのように、応えていく人を待っておられます。

  最後に、みなさんの中には、チラシを配ったり、バザーのお手伝いをしたりということが出来ない方々もいらっしゃいます。その方々に神様から与えられている特別な使命があります。祈ることです。人々の働きを背後から祈ってくださること。神様に向けた具体的なその祈りが、私たちを励ますのです。

        (完)

                                        2012年10月21日


                                        板橋大山教会   上垣 勝


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