神の前で一人静まる


                        アヴィニヨン駅に降り立ちました。
                              ・


                                         どんなことにも感謝 (中)
                                         Ⅰテサロニケ5章16-22節


                              (2)
  次に、「絶えず祈りなさい」とありました。

  「絶えず祈りなさい」とあるのは、キリストが私たちを見捨てず、絶えず祈って下さっているからです。私たちが全く感じなくても、キリストは私たちの内に来て祈って下さっている。そこから私たちの祈りは生まれます。何もない所から、「祈れ」と言うのではありません。

  キリストが私たちの内に来て祈って下さっているなら、私たちは幼な子のように祈っていいでしょう。願いと求めと叫び、それに感謝できるなら更にいいでしょう。即ち、祈りは、キリストが共にいて下さることへの信頼です。

  私たちの祈りがなくても、神は神です(Br.ロジェ)。それにも拘らず、神は私たちの祈りを大切にされ、それを喜ばれるのです。そこに神の恵み深さ、神の、汲めども尽きない神的な愛の深さがあります。

  ロジェはまた、神は人間のどんな言葉も理解されると語っていますが、沈黙の内に、神の近くに留まること。神に心を向けて静かに留まる事も祈りです。口は閉じていても沈黙の内に神に祈る。そういう祈りがあります。その時、聖霊が私たちの内にいて執り成して下さるのです。

  私たちのプロテスタント教会の祈りは普通、言葉を出して祈ります。しかし、言葉を用いた祈りは言葉が尽きれば終わります。だが、言葉が尽きた時、その向こうに真に祈りたいものが残っていると感じることが多いのではないでしょうか。だが、神の前に静かに黙って留まる事も祈りであることに気づくなら、言葉が尽きた後でも沈黙と休息の内に神の前に黙って留まることができます。その時、私たちの祈りはもっと心ゆくまで深められていき、もっと安らかに神の前に憩うことができるでしょう。祈りが信頼であり、神との交わりであるのは、神に憩うことだからです。

  祈りの中で気が散ってしまうこともあります。電話が鳴り、止んではまた執拗に鳴って、遂に受話器を取り上げることもあります。だがまた戻って神に向かえば、神は続きをお聞き下さるでしょう。

  祈りの本質は神との交わりです。今、神の前にあって自分と交わって下さっている方との神秘な関係です。それは言葉を通しての交わりでもありますが、言葉を通さず、ただ神の前で口を閉じて静まり、神に孤独に留まることも真実な交わりです。

  ですから私は石神井川の畔の林の中を長くウオーキングするのです。エマオに降る弟子たちのように、暗い顔をしたり、気落ちしたりして歩いていると、後ろから復活のイエスが来られて黙って一緒に歩いて下さるからです。黙って歩いて、やがて心が燃えるような言葉を沈黙の中で語って下さるからです。

  キリスト者は、神と共にいることが必要です。去年の3月以来、私たちは「核暴走」と言う一般の人には耳慣れない言葉をしばしば聞かされて来ました。原発の原子炉内の核分裂がコントロールできなくなって、爆発に向って暴走してしまうことです。そのために、原子炉に水を大量に注いで、懸命に冷やし続けなければならなかった訳です。冷やし続けてやっとどうにかこうにか安心な状態になってはいますが、ほぼ永久に冷やし続けなければ、再び核爆発して大変なことにならないとも限りません。

  現代社会は、非常に忙しく、一刻もゆったり休むことがありません。社会自体が核暴走に向かって突き進んでいるかのような有様です。人間はまるで機械のように動いています。動かされているというのが正しい表現だと言う人もあるでしょう。しかし人間は機械ではありません。創世記は、「神は土の塵で人を形づくり、命の息を鼻から吹きいれられた。すると生きたものになった」と物語的に語ります。休息と沈黙の中で、時々神の前で休むことが必要なのです。怠けではありません。絶対者である神の前に、一人になって静かに留まり、沈黙の一時を持つことが必要です。人間は、神との交わりの中で命の息を吹き入れられて、回復されるように造られているからです。

  いずれにせよ、キリストが私たちを見捨てず、絶えず祈って下さっているので、私たちにも「たえず祈りなさい」とパウロは語るのです。

       (つづく)

                                        2012年9月16日


                                        板橋大山教会   上垣 勝


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