帰って来た悪の霊
ヨーロッパ内でもっとも完全に保存されているローマ古代劇場 (写真クリックで拡大)
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帰って来た悪の霊 (下)
ルカ11章24-26節
(前回から続く)
(3)
一体今日の話は、私たちに何を語っているのでしょうか。これは私たちの生き方、私たちの存在の仕方、あり方を譬えておられるのではないでしょうか。
私たちから汚れた霊が出て行っても、私たちの中に清い霊、キリストの霊、神の霊に住んで頂いて、私たちを堅固に治めて頂かなければ、元の木阿弥になる。いや、一層悪くなる可能性がある。
いくら掃除して整えても、家の中を飾っても、そんなことでは私たちの存在自体は根本的に良くならない。真理の霊によって魂が治められ、キリストに私たちがご支配して頂かなければ、外面的な環境を変えても根本的な解決にならず、また汚れた霊がやすやすと戻って来る。
霊は出て行っただけでした。追い出されたのではありませんでした。駆逐されたのでなく、気分転換で出かけたと申しましたのはそこです。汚れた霊は一旦出て行けば、私たちの状態は改善されるかも知れません。落ち着きを取り戻し、健全な生活が戻って来た。日々、清々しい毎日を過ごした。窓に新しいカーテンが掛けられ、テーブルクロスも新しくされ、壁紙も張り変えられたかも知れません。
ところが霊が戻ってみると以前より住み易くなっている。霊にとっても環境が改善されている。しかも家は空(から)である。大喜びで自分より悪い連中を7つも連れ込んで住みつく。すると、「その人の後の状態は、前よりも悪くなる。」
汚れた霊が戻って来ないため、戻って来れないために、空にしちゃあならない。世界の主キリストにお住み頂かなければならないのです。私は主に属する者ですとの自己認識を持つことが必要なのです。この自覚があってこそ、汚れた霊は戻って来れないのです。自分の主、自分の主人が誰か、はっきりさせる時、自由に入って来れないのです。
神とかキリストなどと硬いことを言わず、趣味や仕事でもいいのではないでしょうか。それが心を満たしていれば悪の霊と言われるようなもので占領されることはないのでないか。果たしてそうでしょうか。悪の霊は究極的なものの一歩手前の存在に増長するだけでなく、趣味や仕事でさえ虚無化する力を持ちます。ですから天地万物の主なる神、命の根源である方につながること、そのお方が私たちの心の心棒になりお治めくださる事によってしか、この問題は解決できないのです。
お化粧直しのような、表面だけヴェールをかぶせるような信仰でなく、私はイエスを主とし、神に生きます。私はキリストと共に十字架に付けられ、滅ぼされてしまった。生きているのはもはや私ではない。キリストが私の内に生きておられるのだ。ローマ6章は、「私は洗礼によってキリストと共に葬られ、その死に与る者となりました。それは、キリストが御父の栄光によって死者の中から復活させられたように、私たちも新しい命に生きるためです」と語っています。キリストが、私の主となって下さったのです。私がキリストに属する者となり、神がご支配下さる時、汚れた霊はシャッタウトされます。
信仰を少し齧(かじ)ったぐらいじゃあ、汚れた霊に対して到底歯が立たない。断然強力でしぶといのです。だが、神の御子、ただ一人の尊いみ子キリストの十字架の死によって、私の中に住む悪の霊は殺戮されるのです。
今日のイエスの話しは、そういう本質的な問題にまで光を照らしています。
もう一度、別の方面から申しましょう。キリスト教徒の最も古い告白は何であったか。それは「イエスは主なり」というものででした。イエスは贖い主であるとか、救い主とか、子なる神とか、他にもインマヌエルとか色々な告白がその後になされます。だがイエスの死後、最も早く人々の心に生まれたのは、「イエスは主なり」という信仰告白であったのです。
イエスは主なり。イエスは私の主である。教会の主であり、世界の主である。私を究極的に治めて下さるのは主、キリストである。私の主人はキリストである。これが根本的な信仰の告白だということです。
イエスが私の主になって頂かなければならない。イエスをお迎えしなければならない。そうでなければ、いくら汚れた霊が出て行っても、また一時追い出しても、私の心に私をお治め下さる喜ばしいお方がおらず、私の家が空っぽであれば無防備この上もない。しかしこの力強い方が王の王として、主の主として絶大な力をもって私の中にお住み下さるなら、汚れた霊が入ってくる余地はないでしょう。
イエスはそのように、人生の根本的なことを、木陰に座りながら、弟子たちにお話しになったのではないかと私は思っています。
(完)
2012年9月2日
板橋大山教会 上垣 勝
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