格闘して平和を勝ち取る


ローマ時代に造られたこのローマ野外劇場は、中世にはバンダル族の侵入から街を守る砦になり、やがて家なき人たちの住まいとなり、1869年以来、再びこのローマ野外劇場でギリシャ悲喜劇始め色んな演劇が演じられるようになり、ここから世界的名優が生まれることになったようです。 (写真クリックで拡大)
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                                       天国はもう君の所に来ている (中)
                                       ルカ11章14-23節


     (前回から続く)
                              (2)
  そう述べた後、今日の聖書の中心メッセージ、「しかし、私が神の指で悪霊を追い出しているのであれば、神の国はあなたたちの所に来ているのだ」を、断固として語られました。

  先ずここで教えられるのは、イエス様は、試そうとしたり、事実を歪めて酷く非難中傷したりする者たちの中にあっても、決して弱られないと言うことです。父なる神に深く根差してますます神を信頼し、彼らの非難中傷もやがて受けることになる十字架の不条理さえも、必ず神が用いて下さると、信頼して進んで行かれると言うことです。

  神のご支配の中で、この世の受け入れられぬ不条理も必ず用いられて、万事を益とされるのです。


  私は、しばしばテゼ共同体のことをお話ししています。別にテゼの営業マン(おかしい言葉ですが)でも、それを宣伝している訳でもありません。そうではなく、この活きた共同体から私たち現代の教会は実に多くの信仰を学ぶからです。

  7年前の8月16日に、90歳のブラザー・ロジェさんが、数千人が集まる夕べの祈りの冒頭で、ルーマニアの女性から刃物で首を切りつけられて即死され、殉教された訳ですが、今月16日の夕べの祈りで、ブラザー・アロイスさんは次のように述べました。示唆深いものです。

  「…ブラザー・ロジェは色々のことを案じ心配する性格を持っていたことは余り知られていません。この個性が彼を創造的にしたのです。神への信頼と喜びを宣べ伝えることができたのは、信頼と喜びが彼自身の内面の格闘から生み出されたものであったからです。」

  彼は光のような言葉を発しました。それは闇を知る故の、光の言葉であったと言うことでしょう。生来闇を知らぬ、お坊っちゃま、お嬢ちゃまがお語りになるキラキラ輝いた言葉でなく、真の闇と闘ってそこから発せられた言葉であったと言うことでしょう。

  「色々と案ずる彼の性格は、彼を不自由にせず、絶えず用心深くあらしめ、常に反省する人間へと導きました。彼は何かを直観的に感じると、いつもそれを実行に移しました。昼も夜も、いつも彼は他の人たちのことを心配していました。

  色々と心配する人間が、どうして内なる喜びと平和にいつも立ち戻ることができたのか。その理由は、その日一日を、神の日として受け入れる力を持っていたからです。彼は、自分が出会う人々や日々の出来事から刺激を受けて奮起しました。努力を前もって否定する状況に立たされても、そこから何か新しいものを創ろうとしました。

  彼は神の存在に最後まで信頼して闘いました。この姿勢が、社会の変化を非常にうまく捉えるようにさせたのでしょう。彼は、他の人がまだ気付かぬうちに起こりつつあることに気づいていました。

  神への信頼が、歴史の動きに少しでも参与していく勇気を授けたのです。彼はキリスト教徒の間の和解と人類家族の平和に関心を持ちつづけ、不可能と思える道を切り拓きました。…」

  ノーベル平和賞に輝く方と私は見ていましたが、惜しくもその前に殉教の死を遂げられました。

  賞はどうでもいいのです。ロジェさんは、希望の兆しに、神の国、神の指に、いち早く気づく人でした。彼は、色々と案じ心配する人であったというのです。敏感で、繊細な魂の持主であったということでしょう。不安に襲われる現代人の一人でありながら、今日を、神が支配される日、神の日として受け入れることによって、日々新しく、内なる喜びと平和に立ち戻ることができた。神の存在に最後まで信頼し、自分と格闘して、平和と喜びを勝ち取っていた。だから90歳になっても創造的であった。アロイスさんはそう証ししたのです。

  これは、イエスが色々な非難中傷を受けながらも弱らず、父なる神に深く根差し、信頼して進んで行かれたことを理解する手掛かりにならないでしょうか。また、私たちの信仰理解を深めてくれるのではないでしょうか。

       (つづく)

                                        2012年8月26日




                                        板橋大山教会   上垣 勝



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