平和の道具とならせてください


            アヴィニヨン演劇祭にはあちこちで路上の演技が群衆を圧倒します。  (クリックすれば拡大)
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                                           互いに平和であれ (下)
                                           Ⅰテサロニケ5章12-13節



      (前回から続く)
                              (2)
  次に、「互いに平和に過しなさい」と述べています。別の日本語訳(永井訳)では、「平和な人間関係を維持するように努めなさい」となっています。

  「神は無秩序の神でなく、平和の神である」とコリント前書14章にありますし、この5章でも「平和の神ご自身が…」と語られています。私たちの神は平和の神であり、平和が作り出されることは神の御心です。また、「平和の源である神」という言葉がローマ書16章に見えます。平和の源は神にあり、平和は神との交わりの中で生まれます。更に、イエスは世を去られる前、「私は平和をあなた方に残し、私の平和を与える。私はこれを世が与えるように与えるのではない。心を騒がせるな。怯えるな」と、ヨハネ福音書14章で語られました。

  リーダーと一般の人たち。このように2分することがいいかどうか疑問ですが、それが対立でなく、連帯し、信頼し、一つとなって生きるように。パウロの趣旨はそこにあります。どんな組織も信頼なしにはうまく働きません。信頼があるとは、そこに平和と一致があることです。しかも多様なものが、多様でありつつ一致している。そのような平和と一致がある時に、最も良い働きが喜びと感謝をもって行なわれるでしょう。

  内面の平和と社会的平和は深い所で繋がっています。内面の平和を欠いた社会的制度的平和は、骨だけで肉のない身体のようなものです。社会的平和は、内面の平和を持つ人たちによって血肉を持つ温かい身体に作られます。

  ミャンマーでは軍事政権が市民に銃口を向けたことがありましたが、アウンサンスーチーさんは昔、一触即発の緊迫した状況の中で、勇敢にも戦車の前に何も持たず独りで迫って行きました。その内面の平和は、軍政に恐怖を与えました。彼女の内なる平和が当時すでに軍政を超える力を持っていたのは、世界の人が認めるところでした。8月15日を迎えますが、日本においても、このような権力にひるまぬ人が一人でも多く生まれることが望まれます。

  イエスは、「私は平和をあなた方に残し、私の平和を与える。私はこれを世が与えるように与えるのではない。心を騒がせるな。怯えるな」とおっしゃったのです。内面の平和は恐れを取り除き、怯えを静めるのです。

  当時はローマ帝国支配下にあります。ローマ帝国は、「パックス・ロマ―ナ、ローマの平和」と称して、武力で帝国の平和を維持しました。すべての道はローマに通じると申しますが、帝国内に張り巡らされた道路網は、ローマのどんな辺境で反乱が起っても、直ちにローマ軍が到着し鎮圧するためでした。

  しかし、イエスの残された平和は、世が与える平和、ローマの平和とは異なると言われるのです。それは内面から溢れる平和です。「私の平和を与える」と言われた平和は、神との交わりから生まれる命の力です。

  今日の個所から、やや逸れましたが、「互いに平和に過しなさい」、「平和な人間関係を維持するように努めなさい」とパウロは勧めました。

  パウロが願うのは、互いに平和に過し、平和を創ることに賭ける人々が生まれることです。身を賭して平和を創る人です。言葉を代えて言えば、キリストの平和を証しする人です。お客さんや見物人でなく、神は平和の源であることを身をもって指し示す人です。

  テサロニケ教会の人たちが互いに平和に過し、そのため自分が平和の核になろうとする。不和を引き起こさないように心を配り、自分が一致の道具になって行く。そういう人が教会の中に登場してくれることです。その時、人々は平和の尊さを知り、自分も平和を創る人になろうと思うでしょう。教会は平和の核になろうとする人たちによって、具体的にその地に深く根ざすことができるのです。

  教会は平和の福音を宣べ伝えます。その教会に、平和と和解がなければ誰も教会を信用する者はないでしょう。ですから、「互いに平和に過しなさい」という勧めは、パウロの願いの中心的なものだといって過言ではないのです。

     (完)

                                        2012年8月12日


                                        板橋大山教会   上垣 勝



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