祈るイエス


                    フランス第2の都市リヨンのパール・デイユ駅。
              ここからパリにも、マルセイユにも、国境を越えてスイスやイタリア方面にも、
                    また内陸部を縦断してボルドー地方にも行けます。
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                                             祈るイエス (上)
                                             ルカ11章1-4節

                              (1)
  今日は、イエスが教えられた祈りから、ご一緒にみ言葉をお聞きしましょう。これは礼拝で唱える「主の祈り」とやや文面が違いますが、核心部分はほぼ同じです。マタイ6章の「主の祈り」とも多少異なりますが、やはりほぼ同じと見ていいでしょう。

  この祈りを教えられたのは、マタイでは「山上の説教」においてですが、ルカでは、「イエスはある所で祈っておられた」時で、「祈りが終ると、弟子の一人がイエスに、『主よ、ヨハネが弟子たちに教えたように、私たちにも祈りを教えて下さい』と言った。そこで、イエスは言われた」となっています。

  イエスの祈りの余韻がまだ辺りに感じられる時に、弟子の一人が待ちわびた様に、「主よ、ヨハネのように、私たちにも祈りを教えて下さい」と求めたのです。そこで教えられたと言うのですから、この祈りは、イエスご自身が日々祈っておられた祈りの一部か、それに近いものであったと考えられます。イエスの祈りそのものでなくても、全く別個のものでなく、イエスの祈りの核心部分が反映されていると考えていいでしょう。

  最初の、「父よ、」という呼びかけに、既にそれが反映されています。神を「父よ」と呼ぶ習慣は殆どユダヤ教にありません。しかも、この言葉は子どもが父に呼びかける「アッバ」というアラム語です。「お父様」でなく、「お父さん、お父ちゃん、パパ」という感じの言葉です。この呼びかけにおいて既に、信頼に満ちて神を身近なお父さんとして祈っておられた、イエスの祈りが色濃く反映しています。

  もしイエスがいなかったら、私たちは神を「父」と呼ぶことはなかったでしょうし、人類は神を、そこまでの親しさと信頼を持って祈らなかったでしょう。

  「父よ、」という呼びかけは、神は、私たちと人格的な交わりをして下さる方であるからです。キリスト教は人格宗教だと言われるのは、神が私たちを一個の人格として取り扱って下さることに根差します。この神に源を発する時に、私たち道を求める者同士、また信仰者同士が、人格的に愛をもって交わることが生まれます。

  ですから、神を「父よ、」と呼びかけることはキリスト教信仰の不可欠な第一歩と言ってよいでしょう。頭で理解していても、「父よ、」と呼びかける実際の祈りがなければ、兄弟姉妹としての人格的交わりの根拠も失われると言っていいでしょう。

                              (2)
  さて冒頭に、「イエスはある所で祈っておられた」とありました。イエスは、私たちの救いのために父なる神の前に静かに留まり、長く沈思黙考し、また言葉に出して、執り成しておられたのです。私たちはこの冒頭の言葉から、色々なことを考えさせられます。

 世では人間の間で色々な取引がなされます。良い取引もありますが、悪質な闇取引もあります。福島原発の復旧作業で、東電の下請けが線量計に鉛板をかぶせて被曝量を少なく見せかけて仕事をさせていたと言うのですから、何とも邪悪この上ない仕方です。世には駆け引きもあります。その下請けの役員は、作業員たちと駆け引きして付けさせたようです。だが数人が拒んだ。それを誰かが携帯電話で録音したので生々しい会話が録音で残っている。それで発覚した。

  むろん、世にはそういう悪質なものだけでなく、誰にもある現在と将来への悩み、明日への思い煩いがあります。いずれにしろ、私たちがそういう色々な取引をしたり頭を悩ましたりしている時に、イエスは一人静かに地上を代表して神の前に出られたのです。天地万物、宇宙の根源なる方、父なる神に、私たちのために立ち向かって執り成して下さっていたのです。

  「イエスはある所で祈っておられた」という短い言葉からさえ、キリストの動かぬ、愛と祈りが私たちの背後でなされているという、恵みの姿を知らされます。神の独り子が地上に来てまでして、父に祈って下さったのです。私たちは、その前で真摯にならざるを得ません。


         (つづく)

                                        2012年7月22日


                                        板橋大山教会   上垣 勝



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