憎しみよ グッバイ


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                                           先ず小さな一歩から (下)
                                           マタイ7章24-29節


(前回から続く)
                              (3)
  ナパーム弾で重度のやけどを負わされ、1年半も死線をさまよった9歳の彼女は、大人になってなぜ赦しに至ったのか。怒りと恨みと憎しみから自由になり、過去から解放されるには、赦すことが必要だったというのです。また罪を犯した者たちの方も、相手から赦されなければ、悔いが残ったまま自分を責め続け、誰も平和な生活を営めないからだと言うのです。愛と希望をもって生きて貰うために、赦され、平和を与えられることが不可欠だというのです。彼女は憎しみをやめ、愛を選択したのです。彼女は、「愛はいかなる武器にもまさる最良の武器です」とも語っています。

  以上、カナダのものから紹介しましたが、先週の朝日新聞は彼女の言葉を紹介して、「本当に、とても難しいけれど、自分から自由になるために、赦すことを学んだ。皆さん、赦しは選べます」と書いていました。赦さなければ、自分からも、敵からもいつまで経っても自由になれません。赦しは選べるのであって、赦すことによって過去から解放され、自由になると言うのは、永遠に真理です。

  イエスは、「私の言葉に留まるならば、あなたたちは本当に私の弟子である。あなたたちは真理を知り、真理はあなたたちを自由にする」と言われました。憎悪を抱いて赦さずにいれば、いつまでもそこから解放されません。赦しは真理です。赦す時に囚われから解放され、自由になります。相手からも自分からも自由になります。イエスにおいて真理を知る時、「真理はあなたたちを自由にする」のです。この真理が、赦しの冒険へと私たちを押し出すのです。

  長くご紹介しましたが、キム・フックさんはイエスの言葉を聞いて行なったのです。彼女は、イエスの教えだけでなく、イエスご自身に出会ってより深く学ぶことになりました。そして、かつては自分自身に怒り、人にも怒り、人生に怒って硬く心を閉ざしていたにも拘らず、信仰に入れられ、今や「心に平和が訪れて来ました」と語っておられるのです。また「知恵と共に憐れみの心が与えられて、それらが賜物となって心に満ち始めました」ともインタビューに答えておられます。一枚の写真に写ったベトナムの泣き叫ぶ少女が、やがて、岩の上に家を建てた人のように平和と喜びの生活を営むようになったのです。

  「岩の上に家を建てる」とは、キリストの恵みの上に人生を築くことです。それは、新しい人間の主体が、神の前にキリストによって打ち立てられることであり、そのようになることが神の喜びであり、神が栄光とされることなのです。神はその事を「よし」とされるのです。これまでのその人の歴史、存在が丸ごと用いられて、新しく神様の前にキリストを仲立ちとして、私たちの主体が打ち立てられる。そのようにして、世界に向って用いられて行くのです。大きい、小さいの違いなどは問題ではありません。地の塩、世の光とされて行く。神様が用いて下さるのです。

  今の時代は、あちこちでやられたらやり返せと言わんばかりの、報復に次ぐ報復の思想がまかり通る時代ですが、それにも一理ありますが、たとえそれが99%正しくても、それだけでいいのかと思います。赦しこそ、もっともっと深い所から人生と社会の問題を根本的に解決する道でないかと思います。

  彼女は新しい次の時代を先取りして、未来に向かって、喜びをもって生きておられます。世界中に招かれて、「赦しのシンボル」になって、歴史の新しい1ページを切り拓いておられます。呼ばれたらどこへでも行きますと語っておられます。私たちの教会にも……たいですね。

  「悲しむ人たちは幸いである。心の清い人たちは幸いである。憐れみ深い人たちは幸いである。平和を作り出す人たちは幸いである」というイエスの言葉も、彼女において現実になっているのではないでしょうか。

  イエスは山上の説教の中で、敵への愛と赦しを語られました。私たちは、相手を変えるために赦すのではありません。ましてや変えてやろうとして赦すのではありません。そんな浅はかな企みはいつかはバレます。そうでは全くなく、赦しはただ単純にイエスに従うためです。相手が変わるかどうかは、神にお任せするしかありません。ただ単純にイエスに従って、人知を尽くして天命を待つ、その先は人間にはできないことです。

         (完)

                                        2012年7月15日



                                        板橋大山教会   上垣 勝



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