神から特別目をつけられているのかも

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　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　あなたの隣人とは　（上）
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ルカ１０章２５－３７節


　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　（序）
　　今日の個所は、「善きサマリア人」の譬えで有名な所です。ここを取り上げることになって、昨年の記憶がまざまざ甦って来ました。それはフランスのアヴィニヨンの郊外であったことです。

　　何車線もある広い道路の舗道を歩いていた時、妻が転倒して顔面を強打しました。中々起き上がれなかったので骨折したかと思ったのですが、中央分離帯がある反対車線を走っていた車から大丈夫かという大声がして、暫くすると先の方でＵターンして助けに来てくれたのです。本当に現代の善きサマリア人だと思いました。

　　直ぐ救急車を手配してくれた上に、消毒とか応急処置をしてくれて、やがて救急車に乗せられてアヴィニヨン中央病院に搬送されました。

　　牧師になって以来、善きサマリア人の話を何度もして来ましたが、善きサマリア人から親身に世話されたのは初めてでした。

　　皆さんはこれを当然のこととお思いでしょうか。ある方がスエーデンでのことを書いていました。だいぶ前のことですが、ある新聞記者が、現代に善きサマリア人がいるのかどうかを確かめようと、血まみれの姿になって、絵具で塗ったのでしょうが、道端に倒れて、通り過ぎる車の数を数えた。すると２１１台目にやっと止まってくれたというのです。

　　私はこれを読んで、もしかすると去年の出来事は奇跡的なことだったのでないかと思って感謝したのです。丁度妻が倒れる瞬間を車から見たからかも知れませんが、直ちに来てくれたのですから、普通フランス人は不親切というのですが、私たちはフランス人は凄いと見直しました。

　　先週は町屋新生伝道所で創立２０周年の集会がありましたね。会が終って、Ｏ先生のご長男、Ｍ牧師の奥様が来られていたので歯のことをお話ししました。３週間たっても傷口が開放されたまま治療が始まらず心配になっていましたし、他にも心配があったからです。

　　それでセカンド・オピニオンを頂こうと翌日、奥様がしている歯科をお訪ねしました。ご主人は牧師ですが、奥さんはお父さんから継いでご実家で歯科医を開業しておられます。それは、もしそんな歯医者さんがあるって知るなら、誰もが行きたくなるような素敵な歯科クリニックでした。小さな待合室は寛げてにすばらしい書が飾られ、診察室には感じのいい彫刻が置かれ、まるで気持ちいリビングに通されたような錯覚を覚えました。歯科の診察室独特のあのいやな金属音や消毒臭がどこかに消えていました。

　　それでセカンド・オピニオンを頂いたのですが、思わぬ所に急展開して、奥様の知っておられるある大学病院の口腔外科の医長さんを紹介されて、その方にも同時にかかることになりました。これが良かったか悪かったかむろん結果が出ていませんから分かりませんが、奥様は一昨日の金曜日も、なんと時間外で１時間半も治療に専念して下さって、私自身も善きサマリア人から懇切な治療を受けるハメになりました。奥様には大変なご負担を掛けることになりました。しかし私の方は不安が除かれて、神様に心から感謝を捧げています。

　　最近、説教で何かの問題を取り上げようとすると、それと関連したことが実生活で起こるんですね。本当に不思議です。神様から特別目をつけられているのでないかと、嬉しいような怖いような胸騒ぎがしています。

　　しかし、信仰生活には恵みがないのも恵みなんですね。その時には、イエスの十字架が良く分かりますから、恵みになります。祈りが聞かれず、望んだことが実現しない時。むしろ試練が訪れる時に、イエスが一層身近になり、詩編の信仰者たちの祈りや訴えがびんびん響いて来たりします。

　　ある人が、「現代の殉教は針先でチクチク刺される痛みに耐える性質のものです」と書いておられました。かつてのような深刻な殉教でなく、要らぬ腹を探られたり、ありもしないことを言われたり、暴言を吐かれたり、そういう殉教の中で生きていると言えるでしょう。そう言う時も、キリストが身近になります。

　　信仰者にとっては、順境の時にも逆境の時にも、いついかなる時にも、キリストが身近になって慰められるのです。

　　　　　　　（つづく）


　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　２０１２年６月１７日




　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　板橋大山教会　　　上垣　勝



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