死者の上にも光が当っています


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                                         大きな希望と小さな希望 (下)
                                         Ⅰテサロニケ4章13-14節

       
                              (3)
  次に、私たちはイエスの復活が大きな希望であり、イエスは最後に世の審判者として来られることを知っているゆえに、日々の生活の中で小さな希望しかし確かな希望を持つのです。

  復活されたキリストの光、希望の光が万物に当たっているからです。それは目に見えるものにもあたり、目に見えないものにも当たっています。

  パウロが、「見よ、今は恵みの時、今こそ、恵みの日」と喝破したのはこれです。今、私たちが立っているこの時、このところに、神の恵みの御手が届いている。私たちが居る所は、神によって聖別された聖なる地です。そこに必ず神がおられるし、神が働いておられるし、神の光がそこに射しているし、そこから決して光は奪われません。

  すべての命に、復活のキリストの憐れみの光が当たっています。また、すべての死にも死者たちにも復活の憐れみの光が当たっています。生命にだけ憐れみの光が当たって、死には闇黒や裁きや虚無の光が当たっているのではありません。死の上にも、生の上にも救いの光が当たっている。それがキリストの復活において啓示されていることです。

  生きている者、生の上にだけ光が当たっているなんて浅い考えで生きてはなりません。それは浅はかです。私たちはもっと貴く作られているのです。

  ですから、私たちの命にキリストの憐れみの光が照らされる時、命は神様から授かったものだということが明らかにされます。神から授かったものとは、一時的に貸与されたものですから、命は限定された束の間の現実だということでもあるでしょう。いつまでも生きるのではありません。だが、キリストの憐れみの光に照らされてその事実を引き受ける時、その限定が恵みなのです。また限定されていますから、それに執着するのは幻想です。限定されているから、謙虚になるべきだし、謙虚になれるのです。

  ある人が語っていますが、私たちは「歴史の中の一通行人」(J.バニエ)に過ぎません。しかし歴史の中を歩くのであって、人生は「あぶく」でも「うたかた」でもなく、歴史の中を行く歩みです。自分に授けられた命を大切に生き、他に対する愛と責任を持って通行するのです。

  ユダヤ人作家のポトクという人が、6歳の少年時代の事を綴っています。

  ある日、父が家の近くの歩道で何かを見つけ、じっと見つめていたのです。「どうしたの?パパ。」
「小鳥が死んでいるんだよ。」父は悲しそうな表情をしながら、足を上に向け固くなって死んでいる小鳥を見ていたのです。蟻が何匹か、冷たくなった体にたかっています。

  「なぜ死んだの?」「生きているものは、みんな死ななければならないのだよ。」「みんな?」「うん、そうだよ。」「じゃあ、パパも?ママも?」「そう。」「じゃあ、僕も?」「そう。でも、お前は長生きして、美しい一生を送って、みんなに有難うと言って死を迎えるように願っているよ。」僕は、父が言っていることがどういうことか、まだよく分かりませんでした。

  「どうしてみんな死ぬの?」「それは、神様がすべての生き物をそのようにお造りになったからだよ。」「そんなの、残酷じゃあない?」

  すると父は、「残酷じゃあなく、命を貴くするためにだよ。いつまでも自分のものにしておけるようなものは、決して貴くないのだ」と言ったというのです。

  キリストの復活の光は、やがて死すべき限りある命にも注がれている。この光に照らされているから貴いのです。この光に照らされているものは、すべて貴いのです。

  また、命に限りがあるから、神様から預かったやがてお返ししなければならない命だから貴いのです。命に限りがあるから、私たちの命を他と分かち合うのです。時間や会話や、共に働くことや手助けという色々な仕方で分かち合います。分ち合うことによって更に貴くなります。

  神の憐れみの光は、命の上にも死の上にも照らされています。その光に照らされる時、命の厳粛さ貴さ、死が持っている特別な意味と命が持っている深い意味を垣間見ることができるのです。

         (完)

                                        2012年5月13日


                                        板橋大山教会   上垣 勝



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