子どもたちへの願い


                           リオンの旧市街で
                              ・



                                         あなたは誇るべき冠 (下)
                                         Ⅰテサロニケ2章17‐19節


                              (3)
  もう一度19節、20節を読みます。「私たちの主イエスが来られる時、その御前で一体あなた方以外の誰が、私たちの希望、喜び、そして誇るべき冠でしょうか。実にあなたがたこそ、私たちの誉れであり、喜びなのです。」

  「私たちの主イエスが来られる時」とは、終末の日です。キリストが再び来られる世の終わりの日です。世の終わりですが、それは恐ろしい日でなく、主と再会する救いの日です。その日、あなた方こそ、「私たちの希望、喜び、誇るべき冠」です。私たちは、あなた方を冠としてかぶり、キリストのみ前に出たい。…何と変わったほめ言葉でしょう。

  初代教会は、主が再び来られる日を待望していました。その日は近いと信じていたのです。当時の合言葉は、「マラナ・タ(主よ、来りませ)」というコリント前書に書き留められている言葉です。迫害の嵐が吹き荒れる中で彼らは、「マラナ・タ」、「主よ、来て下さい」と祈ったのです。

  主イエスが再臨なさって、サタンを征服し、勝利して下さる日を信じたのです。その日には、信仰者たちは盛装して主を迎えようとしたようです。パウロの盛装は変わっています。テサロニケ教会の人たちを希望、喜びとして身を飾り、彼らを誇るべき勝利の冠として頭にかぶり、胸にテサロニケ教会の名を付けて、再臨のキリストを迎えるのでしょう。

  実に変わった誉め方です。どんなに変に見られてもよい、パウロは力を尽くして何とか彼らを励ましたいのです。神の箱をエルサレムに喜び迎えて、その箱の前で踊って入場したダビデの姿に似ています。パウロも彼らを冠にかぶって、再臨のキリストを踊り迎えようとしているのかも知れません。

  皆さんもよくご存知のオー・ヘンリーの「最後の一葉」は、余りにも有名な短編です。

  古いアパートに暮らす2人の女流画家ジョアンナとスー。ある日、ジョアンナが重い肺炎に罹って床に伏し、窓の外の煉瓦の壁に這う枯れかけた蔦の葉を毎日数えています。そして「あの葉がすべて落ちたら、自分も死ぬ」と思い込んで落ち込み、呟(つぶや)くようになります。こうして日々弱っていきます。

  階下にはベアマンという老画家が住んでいます。口ではいつか傑作を描いてみせると言いながら、何年も絵筆を持ったこともなく、酒を飲んで他人を嘲笑って生きています。

  彼はジョアンナの言葉を伝え聞く訳です。ある晩、一晩中激しい嵐が吹き荒れ、朝には蔦の葉は最後の一枚になっていました。次の夜も激しい雨風が吹きつけます。ジョアンナも最後の日を迎えようとしています。翌朝、カーテンを開けると「最後の一葉」となった葉が壁にまだついている。それを見たジョアンナは生きる気力を取り戻すのです。日一日、回復していきます。

  実は、最後に残った一葉は老画家ベアマンが、冷たい雨風にあたりながら煉瓦の壁に絵筆で描いたものでした。ジョアンナは奇跡的に全快します。しかし、ベアマンは一晩中雨風にうち叩かれながら一心に壁に向って絵を描き、遂に肺炎になって2日後に亡くなります。ジョアンナを助けた最後の一葉は、ベアマンが、いつか描いて見せると酒を煽って啖呵を切っていた、その傑作になったのです。

  パウロとベアマンは違います。しかし、パウロも何とか彼らを励まし、励ますだけでなく連帯していくのです。まさにここに友情と信仰があります。

  ヨハネの手紙には第1、第2、第3があります。その第3の手紙は余り読まれません。しかしその4節をご覧ください。「自分の子どもたちが、真理に歩んでいると聞くほど、嬉しいことはありません。」

  イギリスの教育者で、キリスト教思想家であったマクレガーという人がいました。彼は教え子のことを語る時には、いつもヨハネ第3の手紙のこの言葉を引用したそうです。「自分の子どもたちが、真理に歩んでいると聞くほど、嬉しいことはありません。」

  これは、テサロニケ教会の人たちへのパウロの心でもあったのではないでしょうか。

            (完)

                                          2012年2月19日



                                      板橋大山教会   上垣 勝



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