人生の方向性


                            住まいの窓から(2)
                               ・

                                           塩味のきいた言葉で (下)
                                           コロサイ4章5-6節


                              (3)
  さて、「快い言葉で語りなさい」と言った後、「そうすれば、一人ひとりにどう答えるべきかが分かるだろう」と語っています。

  気負って難しいこと、深淵なことを語る必要はありません。知識の多さをひけらかすのでもない。生活の中から、キリストの前での反省と挫折と、しかし喜びもある生活の中から、生まれて来る生きた言葉を語ればいい。

  暫らく前にこんなことを読みました。インドの僻地、アウトカーストの人たちの間で保健医療の分野で良い働きをしているキリスト教のNGOがあります。そこの伝統的な産婆さんが、読み書きができないのですが。お隣のバングラデシュで開かれた国際的な民衆保健会議で自分の経験を話したのです。90カ国から来た1500人ほどの専門家の前で、通訳つきです。どうなることかと心配していたら、聴衆を圧倒して皆、耳をそばだてて聞いたのです。その後、イギリスのBBC放送の取材を受けた時には、彼女は堂々と自信をもって話していたというのです。

  いずれの国の人もほぼ同じことを考え、悩み、工夫して生きています。先進国の人も、インドの僻地の産婆さんもです。解決は身近な生活の中にあります。気負う必要も、恥じる必要も、たじろぐ必要もないのです。しっかり地に足付けて歩んでいればいいのです。

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  「時をよく用い」とあります。

  時を有効に活用せよということも含むでしょう。時の無駄遣い、それは私の一番嫌いな事です。しかし、能率主義の意味でパウロは言っているのではありません。能率主義になると、能率の上がらないものには、イライラし、プリプリし、腹を立てたりします。まだその人は、能率という曲者を人間として乗り越えていない。そう、能率という考えは曲者です。能率だけだと、本当に間抜けになってしまいます。

  「時をよく用い」とは、人生の方向性、生き方の方向性のことです。人は神に向かって造られているのであって、神を見出すまでは真の安らぎを得ることはありません。ですから、時の源、根源であり、命の源であるお方と関係を持った生き方に自分を置く時、それは賢い振る舞いになるし、賢い生き方にもなるし、何をどう語るかが分かって来る。

  最後に、「沈黙は光への入り口である」ということを紹介したいと思います。何よりも、神の前で静まること。それは光への入り口であります。日々、光の中を歩もうとするなら、神の前での沈黙は不可欠と言ってよいでしょう。神の前で静まり、神から命の言葉を与えられて歩む。恵みにおいて語るためには、自分が恵の中に置かれていなければ語れません。それが、光のある間に、光の中を歩めということに通じて行きます。

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  以上、これは2千年前の、現在のトルコのリュコス渓谷にある小さな町コロサイの人たち、キリスト者たちに語られた言葉です。そして、これは彼らに妥当するし、またエフェソあるいはローマの監獄にいるパウロ自身にとっても妥当し、今日の私たちにも妥当するものではないでしょう。

  パウロとペトロの違いを論じる人たちが多くありますが、だがここでは、「穏やかに、敬意をもって語りなさい」という第1ペトロの言葉に近いことが言われていました。

  暫く前から申し上げているように、ここでも、荒い言葉や荒い態度でなく、じっくり相手の語ることに耳傾け、よく理解し、共感もし、そして自分の考えを語っていく。一人ひとりに説明して行く。キリストの恵みにおいても語っていく。そういう地道な歩み方、また信仰の地道なだがとても健康な生き方をこの個所で示されます。

         (完)

                                        2011年7月10日


                                     板橋大山教会   上垣 勝


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