自分への鋭いパンチ


                  素敵な方だったのに、先生をいじめて済みませんでした
                               ・


                                           愛は造り上げる (B)
                                           Ⅰコリント8章1-13節


                              (3)
  さて、「偶像に供えた肉を食べていいのかどうか。食べると汚されはすまいか」ということです。

  先ずパウロは、「世の中に偶像の神などはない」と明言します。「唯一の神以外に、いかなる神もいないことを、私たちは知っています」とも断言しています。偶像というのは、実在しないものの影であると、信仰の本筋をズバッと書きます。

  それから彼は、「万物は、唯一の神、私たちの父なる神から出て、この方によって存在し、この方に帰っていく。私たちの神は万物の根源であり、基礎にある方であり、私たちはこの神を仰いで礼拝している」と語ります。

  所が、全ての人がこの真理を知っている分けでなく、この知識を十分に理解していないキリスト者たちもいると言うのです。というのは、コリント人は幼い頃から偶像に馴染んで来たからです。生活に偶像が染み付いています。その上まだ信仰歴も短いのです。

  ですから、「肉を食べる時に、それが偶像に供えた肉だということが念頭から去らず、良心が弱いために汚されるのです」と語るのです。まだ信仰が確立していない人たちは、偶像に供えた肉を食べると、自分が汚れたように感じてしまう。偶像の念力が入って、その霊に乗りうつられ、自分はもう偶像のものだと錯覚し、悲観してしまう。主体的な強靭な信仰、良心の強靭さに欠けているので、偶像の餌食になったかのように思ってしまい、良心の呵責に悩まされて、遂に偶像に戻ってしまい、信仰を捨ててしまうかも知れないということでしょう。

  私は、まだ信仰生活が短かった頃は、お寺にも神社にも足を踏み入れませんでした。どうしてか毛嫌いしました。今思うと、汚されると思ったからでしょうか。牧師になり、教会員のご家族が亡くなってお寺さんで葬儀がありますと悩みました。しかし、もし私がそんな考えを持っていれば、私より、その信徒の方はもっともっと悩まざるを得ません。やがて私自身信仰歴も長くなり、お寺でも神社でもどこにでも行けるようになりましたし、むろん仏像を拝んだり、神社にお参りするわけではありませんから、そんなことはどうでもよくなったわけです。ともかく、最初は狭かったと思います。

  しかし、私の若い頃のような、まだ強靭でない信仰しか持たない人も、教会はできるだけ躓かさないよう、教会の枝として愛をもって造り上げなければならない。弾き飛ばすことがあってはならないというのです。

  それで7節以降で、まだ信仰が弱い人があなた方強い人と一緒にいる時、あなた方に倣って、一時は偶像に供えた肉を食べるだろう。だがその後、良心の呵責に悩まされて信仰を捨ててしまうかもしれない。そういうことになれば、「弱い人が滅びてしまいます」と言うのです。

  即ち、神について正しい知識を持つあなた方には考え難いほど幼稚かも知れないが、あなた方の自由な態度が、幼児的にも病的にも見える信仰の弱い人を罪に誘うかも知れない。

  信仰が弱い、その兄弟姉妹のためにもキリストは死なれたことを忘れてはならない。だから、兄弟姉妹を罪に誘い、弱い良心を傷つけ、罪を犯させるとすれば、キリストに対してあなた自身が罪を犯すことになりかねない。だからパウロは、私自身、「兄弟を躓かせないために、二度と偶像に供えられた肉を口にすまい。」彼はこう決意していると語るのです。

  ここにあるのは、自分の信仰だけでなく、他者の信仰、更にキリスト教会全体、全体教会を建てようとする愛と言っていいものです。

  パウロは自分を相対化するのです。次の10章で彼は、「私は誰に対しても自由な者ですが、全ての人の奴隷になりました」と語り、また、「福音のために何とかして何人かでも救うためです」と述べます。そして更に「私は闇雲に走ったり、空を撃つ拳闘をしない。むしろ自分の体を打ち叩き、服従させます」と言います。ボクシングでは鋭いパンチを相手に喰らわせ、あわよくばノックアウトしたい。だが彼は、自分自身に鋭いパンチを浴びせるのです。愛が造り上げるものになるために、教会を建設するものになるために、自分を打ち叩いて服従させ、進んで行くのです。何と健全で剛毅な在り方でしょう。

  彼はキリストの体である教会を責任的に、大きく全体的にとらえています。そういう中で彼の愛は建設するもの、造り上げるものになっています。

        (つづく)


                                        2011年7月3日


                                     板橋大山教会   上垣 勝


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